ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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日刊ランキング二位まで行ってました。
ハメ開いて過去一驚きました。いつも読んでくださってる方、誤字報告してくれている方、本当にありがとうございます。これからも頑張ります。

で、ペルソナ6はまだですかねぇ!!(クソデカボイス




プロローグ⑤

「取引?」

 

モルガナと名乗った黒猫は背負った小さなバックパックのふたを器用に開け、青く光る液体の入った小瓶を俺に見せてくる。

 

「こいつをお前にくれてやる。これで回復すればあの管を魔法で斬り落とせるだろう?」

「これは、ソーマか」

 

ソーマは、異界で偶に手に入る万能の秘薬だ。

本物を裏社会のオークションに流せば、数百万はくだらない値が付く程の価値がある代物だ。

人間が摂取すれば10年単位で肉体の若さを保ち続けられるし、異能者には副次効果で肉体の傷を癒し、精神エネルギーの総量を一時的に増やしてくれるというゲームでは存在しなかった効能まで備わっているという代物だ。

 

「正直、ソーマを貰えればかなり助かるが、取引の内容次第では断るぞ」

 

甘い話には裏がある。

ほんの少しでも悪魔に関わった事がある人間なら誰でも骨身に染みるくらいに熟知していることだ。

 

「にゃーに、とある異界の探索に付き合ってほしいだけさ。さっき見たが、下位魔法であれだけの威力が出せるんだ。お前、相当腕のある異能者だろう?」

 

どうやら『ザン』で管を斬り飛ばした姿を見られていたらしいが、魔法や異能者の事も理解しているとは驚きだ。

このモルガナと名乗った猫が、どこぞのダークサマナーや悪魔の回し者である可能性も否定しきれないが、背に腹は代えられない。

 

この異常事態を放置して逃げるのは、ヤタガラスのサマナーとしては有り得ない選択だし、モルガナの取引内容である異界探索も、タルタロスクラスの異界でなければそう問題にはならないだろう。

それに、モルガナからは悪意を感じないのだ。

利用してやろう、とかそういう雰囲気はあるが、騙して罠に嵌めようだとか殺してやろうだとか、そういう意思は感じ取れない。

 

「わかった。取引成立だ」

「にゃふふ。コンゴトモヨロシク、だぜ」

 

取引成立の証としてモルガナから渡された小瓶を受け取り、中身の青く輝くソーマを一気に飲み干す。

 

「ん?これ、認知異界産か」

 

飲んだソーマの効果で、枯渇していた精神エネルギーは完全に回復したが、効果はそれだけだ。

本物の、インド神話系の異界で手に入れたソーマならさっき言ったような凄まじい効果が得られるが、モルガナがくれたのは認知による産物の物だったため、精神エネルギー回復の効果しかなかったようだ。

まあ、他の効果を望んでいたわけではないし問題ないか。

 

さて、この異常事態は認知異界が絡む案件なのが目に見えている。

 

だから、今回は悪魔ではなくペルソナを召喚しておくべきだろう。

 

座り込んでいた道端から立ち上がり、人目につかないような裏路地にモルガナを引き連れて移動した後、懐から取り出したペルソナ召喚器の銃口をこめかみに当てる。

いきなり拳銃自殺をし始めたようにも見える俺の姿に、驚いた様な顔をするモルガナを放置して、引き金を引く。

 

「来い、『ブギーマン』」

 

ガシャン、と何千回も聞いた音と召喚の余波で漏れ出た精神エネルギーが青い粒子を撒き散らす。

そうして召喚されたのは、真っ黒な仮面を顔に着け、空中に浮遊するマネキンの様な両腕で刀と拳銃を保持し、不定形な黒い靄で身体を構成された俺のペルソナだ。

 

12歳でペルソナに覚醒してから早5年。

共に色々な荒事を乗り越えて、当初に比べれば強くなった俺のブギーマンだが、その戦闘力は正直そんなに高くはない。

 

ゲームではハム子とあだ名がついていた琴音さんや、鋼のシスコン番長の反応を見る限り、俺自身ともコミュニティが発生していたようだが、彼等との交流による心の成長によって、新しいスキルに目覚めることはあっても、俺のペルソナが別形態に進化することはなかった。

他の面子がコミュニティを進め、絆を深める度にペルソナが新しい形態に目覚めていくのには思うところもあったが、悪魔召喚や退魔術が使えるのは俺だけで、総合的な戦闘力としては彼らに劣ってはいなかったので、戦いの足手纏いにはならなかったから良しとした当時の事まで思い出してしまう。

 

そんなブギーマンだが、他にはない明確な利点として、能力は半減するが()()()()()()()()()()()()()()()()()ペルソナであるという点がある。

基本的に他のペルソナ使いには現実世界でのペルソナ召喚は不可能といってもいいくらいに著しく制限が掛かる。

 

特異な能力者であるワイルドの二人もそれは例外ではなく、現実世界でペルソナを呼ぼうとするとあっという間に精神エネルギーを使い切り、昏倒する。

実際に試してもらって琴音さんと悠さんを昏倒させてしまい、他の仲間から凄まじく怒られたのでよく覚えている。

 

では、何故俺だけその制限に引っ掛からないのか。

俺が転生者だからなのか、デビルサマナーも兼任しているからなのか、そういう能力のペルソナだからなのか、それとも別の要因なのか。

ヤタガラスや桐条財閥の研究所でも散々検査や実験に付き合ったが、ついぞその理由は分からないままだ。

 

ともあれ、この能力のお陰で俺の魔法も現実世界に現れた認知上の存在を破壊することが出来るのだから文句を言うのは筋違いというものだろう。

 

「現実でペルソナを召喚できてるし、召喚のやり方は絵面ヤバいし、妙な奴だなお前」

「しゃべる猫には言われたくないんだよなぁ」

「猫じゃねーよ! 今は猫だけど」

 

騒ぎ立てるモルガナをなだめながら、ブギーマンに赤黒い管の発生源を探してくるように指示を出す。

ブギーマンに発生源を探させている間に、ウィキで確認してみたが、渋谷駅の1日平均乗降人員は約230万人もいるらしい。これだけの人間の精神エネルギーを枯渇寸前まで吸い上げているのだ。

いままでどれだけの期間、精神エネルギーを吸っていたのかは分からないが、相当な力を蓄えているとみて間違いないだろう。

 

「引っ越して早々に大当たりを引いたか?」

 

これだけの力を持つ認知側の存在。

十中八九今回の大規模認知異界絡みだと考えて間違いなさそうだ。

 

「おい、戻ってきたぞ」

 

アレコレ考えている内に、探索から戻ってきたブギーマンを、自身の精神の中に戻してブギーマンが見聞きしたものを自分の知識として読み込む。

どうやらこの赤い管は地下鉄、それも東京メトロの地下ホームから伸びてきているようだ。

 

「厄介だな」

「どうだ?発生源は見つかったのか?」

「ああ。どうやら地下鉄に元凶がいるらしい」

 

この現象の元凶は地下鉄にいるようだが、現実の地底空間にいるわけではないだろう。

大多数の悪魔は自分の領域である異界に引き籠って有利な場を作り上げるし、認知異界の主は特にその傾向が顕著だ。

であれば、現実側の異常を潰し、エネルギー供給を断った上で異界に乗り込むのが一番確実な手だろう。

 

「ブギーマン、『マハザンマ』」

 

ブギーマンの右手から放たれた中級の全体衝撃魔法が渋谷駅全体に張り巡らされた赤い管をまとめて叩き斬り、その姿を消し去っていく。

マハザン、マハザン、マハザンマ、マハザンダイン、マハザン。

魔法が放たれる度に、駅に張り巡らされた管が断ち切られ、その数を減らしていく。

それに呼応するように地下に流れていく精神エネルギーの総量がみるみる減っていき、駅周辺を歩いている人たちの顔色も心なしか回復していく。

 

ソーマのお陰で精神エネルギーに余裕があるので、駅前の公園に備えられたベンチに座りながらバシバシ全体魔法を放ち続けていると、その光景を見ていたモルガナが俺の肩に乗る。

 

「本当にこれで地下にいる奴の力を削げるのか?」

「分からない。もう十分に力を付けていて、これがただの食事に等しい行為の可能性もある」

 

実際、これだけの事が出来るからには相当な力を身に付けているのは確定している。

大事なのは、これ以上の力を付けられてしまうのを阻止するのと、一般人からの継続的なエネルギー徴収を辞めさせることだ。

 

「少なくとも、無駄ではないさ」

「まあ、何でもいいが、状況の打開策としてソーマを渡したんだ。吾輩との取引だけは忘れるなよ」

「ああ、異界探索だろ?具体的には何処の異界を探索するんだ?」

 

俺の問いかけにニヤリと笑ったモルガナは、地面を指すように前足で叩く。

 

()()()()()さ。あの赤い管が大量に出ている地下鉄のホームにお目当ての異界があるのさ」

 

吾輩もあの地下異界に用事があるのさ、とモルガナがそう言った瞬間、地下鉄に続く階段から赤錆の浮いた鎖が空中を泳ぐように飛んできて、俺の左腕とモルガナの胴体に纏わりついて雁字搦めにしてしまう。

 

「なん、」

「まずっ、」

 

俺達が事態を認識し、対処する前に鎖が尋常ではない力で引っ張られる。

どうやらこの鎖は俺達を地下鉄に引き摺り込みたいらしい。

 

「くそ、逃げられねぇ!」

「く、固いな」

 

どうにか鎖を壊そうとペルソナを召喚して何度も魔法や物理技を放つが、鎖は破壊されるどころか、傷一つつかず、その力をますます増大させる。

いくら力が半減しているとは言え、ブギーマンの攻撃はあのニュクス(ペルソナ3のラスボス)にすらダメージを入れられる力があるんだぞ。

そして、とうとう俺とモルガナの踏ん張りが効かなくなってしまい、俺達の体が宙に浮いてしまう。

 

「クソッ」

「にゅああああぁぁぁ」

 

身体がバラバラになるんじゃないかと思える程の速度で引っ張られた俺とモルガナはそのままの速度で地下鉄の入り口に突撃し、()()()()()()()()()()()現実と異界の境界を超える感覚を感じた後、先の見えない無間の闇に飲み込まれてしまうのだった。

 




他に書くタイミングないと思うので、ここに置いていきます

ハム子や番長が主人公と発生させたコミュは『混沌』です。
このアルカナはP5Rで追加された『顧問官』を内包する、エテイヤタロットにおける混沌(カオス)に相当し、正位置では理想や大いなる意思、逆位置では『顧問官』の意味である
知恵や啓蒙を表します。

『この世界の外』からやって来て、知恵(前世の知識)を使って理想(ハッピーエンド)を叶え、不安定なペルソナ使いの良き相談役になる。
本来ならバッドエンド一直線だったこの世界線に希望をもたらし、決められた路線を破壊し、全滅しか無かった世界の未来を不確定にしたからこそのこのコミュです。

コミュが混沌だとしても主人公は別に這いよる混沌ではありません。


プロローグそろそろ終わるので『他のキャラクター視点から見た主人公』はみたいですか?

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