ペルソナの主人公に転生したらしい   作:明人

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モルガナがメメントスの存在を主人公に話してしまったので強制イベントです。


プロローグ⑥

あの鎖によって認知異界に引きずり込まれた俺たちは、趣味の悪い赤と黒のマーブル模様に彩られた地下鉄のホームのような場所で、次から次へとこの閉ざされた異界に送り込まれてくる、見覚えのある悪魔の姿をしたシャドウを相手に連戦を強いられていた。

 

「来るぞ!」

 

俺とモルガナに向かって放たれた、10個の黄金に輝く巨大な拳(ゴッドハンド)を紙一重で回避し、大技を放ったせいで隙だらけになっている5体のメルキセデク(LV.58)のうち一体に肉薄する。

右手に持った小刀で金属質の翼を切り落とし、体を捻って隙だらけの頭部に蹴りを入れる。

 

俺の蹴りを受けたメルキセデクの頭部が、鈍い音を立てて曲がってはいけない方向に曲がり、その強靭な肉体から力が抜けて地面に倒れ伏したのを確認する。

仲間がやられたことで警戒したのか、残りの連中が突風を伴うほどの速度で地下鉄のホームを模した異界内部を凄まじい速度で飛び回りながら祝福即死魔法(ハマオン)を放ってくる。

 

本来なら対象を光の粒子に変換して殺傷する高レベルの即死魔法であるが、ブギーマンの耐性で祝福無効が備わっている俺には意味がない。

モルガナの方に飛んで行っている魔法も『挑発』で強制的にターゲットを俺に変更させ、俺に当たるように誘導する。

 

「モルガナ、遠距離!!」

「こい、『ゾロ』!」

 

カイゼル髭とゴツイ上半身が特徴のペルソナを召喚したモルガナが、風魔法『マハガル』を放ち、俺をハマオンで攻撃していたメルキセデク達の弱点を突いて、戦闘機張りの速度で飛び回っていた奴らの行動を阻害する。

 

根本的に魔法の威力が足りていないのでダメージ自体は入っていないが、高速移動中に予想外の方向から横殴りの風を受けてしまったメルキセデクが墜落し、ダウン状態になる。

 

「終わりだ」

 

ダウンしている四体に素早く接近し、小刀で手早く首を刈る。

致命的なダメージを受けたメルキセデクが断末魔の声を上げる事すらなく、マガツヒ(精神エネルギー)になって空気に溶けていく姿を確認した後、僅かに息を吐く。

 

「戦闘終了だ。お疲れ様、モルガナ」

「も、わがはい、むりぃ」

 

異界内部に入った途端に、二足歩行のマスコットキャラクター?みたいな姿になっている推定:モルガナの頭を労わるように撫でながら、始末したシャドウが何かアイテムをドロップしていないか、確認する。

 

「ドロップはなし、か」

 

既に百を超える多種多様なシャドウを始末しているが、これまで一度もアイテムをドロップした個体は存在しない。

タルタロスやマヨナカテレビに出現していたシャドウはほぼ確定と言っていいくらいに消費アイテムや何らかの素材を落としていたので、この異界のシャドウもそうだと思っていたのだが、目論見が外れてしまった。

 

(まずいな。モルガナも俺もそろそろペルソナ召喚や魔法の行使が難しくなり始めている)

 

なるべく消耗を抑えるために、物理攻撃主体でこれまで戦ってきたが、物理反射や耐性を持ったシャドウも多く出現してきたため、そいつらを片付けるのにペルソナや魔法を使わざるをえず、じり貧になってしまっている。

 

一旦撤退して補給と装備の調達をしたいところなのだが。

 

「疲れてるとこ悪いが、続きだ」

「わかってるよ。吾輩もこんなヤバ気なところからは、さっさと逃げたいしな」

 

そう言ったモルガナは、異界の出入口を塞いでいる大きな扉の前で猫のような手足を器用に動かしながら、その扉に大量に取り付けられた南京錠やシリンダー錠、果てはパスワード入力式の電子錠を開け始める。

モルガナがピッキングツールや小さなタブレットを駆使して正攻法で鍵を開けているのを眺めていると、背後にマガツヒが集まっていくのを感じ取る。

 

扉とモルガナから視線を外して振り返ると、さっきまでメルキセデクと戦っていた場所には既に別のシャドウが出現していた。

 

チェルノボグ、ヤマタノオロチ、アバドンetc。

こちらに殺意を向けてくる、20を超えるシャドウの詰め合わせセットにため息をついて、一歩前に出る。

 

「結構な数の鍵をお前が物理的に破壊してるから、もうちょっとで全部解錠できると思うぜ」

「攻撃は絶対に通さないから手早く頼む。なんか嫌な予感がしてるからな」

 

あの高レベルシャドウの集団が相手では、精神エネルギーが枯渇寸前の今のモルガナは戦力にはなり辛い。

ここは扉の解錠に専念してもらった方がいいだろう。

 

連戦の影響で刀身にガタがき始めている小刀を片手に、ブギーマンを召喚しつつシャドウの集団に肉薄する。

首の後ろに感じる、チリチリとした焦燥感を、あえて無視しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、最後」

 

物理攻撃吸収とかいうバカみたいな特性持ちだったアバドンをブギーマンの『ザンダイン』でどうにか始末したことで、追加されたシャドウ集団の殲滅は完了した。

 

どいつもこいつも、タルタロス最上階や黄泉比良坂に出てくるシャドウレベルで強かった。

流石にソロ討伐は辛い物があったか、と心の中で思っていると、遠くにいたモルガナが、大声を出す。

 

「おおーい!開いたぞ!」

 

モルガナの声に振り返ると、無数にあった鍵は全て解錠され、大きな扉もうっすらと開いている。

 

「さっさとこんな場所、おさらばしようぜ」

 

そう言って笑うモルガナに向かって、俺は全力で走り出す。

突然走り出した俺を見て驚いた表情をするモルガナを抱きかかえて、全力疾走で《攻撃を》回避する。

 

次の瞬間、ついさっきまで俺達が居た場所が爆発音と共に地下鉄ホームの一部ごと消し飛ばされる。

通常攻撃であの威力か。最低でも上級の英霊、もしくは下級神クラスの力はありそうだ。

 

「無事か、モルガナ」

「す、すまねぇ。何がおきたんだ」

 

もうもうと立ち昇る土埃が晴れると、その場所にいたのは、俺も悪夢を見るくらいにトラウマを植え付けられた、ある存在が佇んでいた。

 

「なん、だ、あれ」

 

そう呟いたモルガナの視線の先に居たのは、ズタ袋を頭に被っていて、ちょうど左目だけ見えるように空いた穴からは、赤く発光する眼が覗いている。

その身長は3メートルを超えていて、黒い鎖とボロボロな黒い衣服を身に着けている。

そして一番の特徴は、その両手に握られた1メートルを超える銃身の大型拳銃と、そいつが身じろぎする度に鎖を引き摺る様な独特な金属音がすることだろう。

 

「刈り取るもの、か」

 

この世界に転生してから、こいつとは何度か闘ったことがある。

だが、そのどの場合でも頼りになる仲間/仲魔が傍にいて、尚且つ万全の装備とコンディションの状態で挑んでも、ギリギリで倒せたくらいに強いシャドウだ。

そんな化け物がなんでここにいるのかは、恐らく、『この一つのエリアに長時間居座ったから』だろう。

 

俺たちをこの場所に引きずり込んだ奴の狙いは恐らく、最初からこいつと俺たちをぶつけることだったんだろう。

ご丁寧に時間のかかる鍵開けギミックや戦力を小出しにして時間稼ぎしていたのも、この為だろう。

 

「モルガナ、あの扉から地上まではどのくらいだ」

「じゅ、10階層、もない、みたいだ」

 

刈り取るもののプレッシャーに圧され、息も絶え絶えなモルガナがそう答える。

・・・覚悟を決めるしかないか。

 

「モルガナ、これを持って地上に逃げろ」

 

刈り取るものからは視線を外さずに、モルガナのウェストポーチにヤタガラスの紋章が入ったキーホルダーを突っ込む。

 

「地上に出たら、東京の築地にある根願寺にこいつを持っていけ」

「お前、なにを」

 

ペルソナ召喚もままならない、今の状態の俺たちでこいつを倒すのは不可能。

逃げるのが最善だが、こいつは獲物をみすみす見逃したりはしないだろう。

 

なら、どちらかがこの場に残って囮になり、片方の脱出を促すべきだ。

そして残るのは当然、実力的に上である、俺だろう。

 

「それを持って根願寺に行けば援軍を要請できる」

 

たしか、今の根願寺にはあの人がいるはず。

あの人が来れば、勝率は格段に跳ね上がる。俺は援軍到着までここで耐え忍べばいい。

 

「取引だ。俺はお前をここから生かして帰す。お前は俺の為に援軍を呼んでくる」

 

どうだ、と笑った俺に、モルガナは覚悟を決めた表情で頷く。

良かった。ここでごねる様なら、問答無用で扉の外にブン投げてでも逃がしてたところだ。

 

「名前」

「ん?」

「吾輩、まだお前の名前を聞いていない。長い付き合いになりそうな取引相手の名前は知っておきたいからな」

 

そういえばまだ名乗ってなかったか。

 

「雨宮蓮。もしくは、十五代目葛葉ライドウ。好きな方で呼んでくれ」

 

そう言ってペルソナ召喚器と小刀を構える。

ペルソナは出せて後五回、業物の小刀も、ここまでの戦闘で酷使したせいでボロボロになってしまっている。

これでは、刈り取るものの攻撃を耐え凌ぐのは難しいだろう。

 

「一撃でも食らったら終わりだ。攻撃を全部避けるしかない」

「分かってるさ。もう無様は晒さねぇ」

 

そして、俺とモルガナはどちらが言うでもなく同じタイミングで走り出す。

刈り取るものの視線がモルガナを捉えるが、ちまちまと回収していた破壊された地面の欠片を刈り取るものの頭部に直撃させ、俺に注意を向けさせる。

 

そして、奴の姿がブレたと思った次の瞬間、反射的に召喚したブギーマンの刀と奴の銃がぶつかり合い、轟音と衝撃波を撒き散らす。

 

召喚したブギーマンが刈り取るものの攻撃に耐えきれず、僅かな拮抗もなく破壊されてしまい、そのフィードバックが俺にやってくる。

ペルソナが破壊された影響で俺に襲い掛かってきた激しい吐き気と頭痛で意識がブラックアウト仕掛けるが、唇を噛み切るくらいに強く噛んで無理やり意識を保つ。

 

「行け!モルガナ!」

 

俺の言葉を受けて出口に向かって疾走するモルガナを、刈り取るものが追いかけるが、更にもう一度ブギーマンを召喚して刈り取るものに組み付かせて押し留める。

 

ブギーマンの膂力はペルソナの中でも割と低めだ。

当然、刈り取るものを止め続けるような馬鹿力はないが、ほんの一瞬動きを止めるくらいならできなくはない。

 

一瞬動きの止まった刈り取るものに、俺自身が出せる単体魔法の中でも最大威力にして相性を無視して攻撃を叩き込める『殺風激』をなけなしのSP(精神エネルギー)をかき集めて発動する。

 

殺風激が刈り取るものに当たる寸前にブギーマンを自分の精神に戻し、SP(精神エネルギー)を継続消費しながら、殺風激の発動を維持し、刈り取るものを押し留める。

 

「吾輩が戻ってくるまで、死ぬなよ!」

 

そう言って、開きっぱなしの扉から出て行ったモルガナを見送り、刈り取るものに視線を向ける。

あのニュクスやイザナミにも特大ダメージを与えた実績のある全力の『殺風激』だ。これで状況はイーブン。俺の消耗も激しいが、奴は確実に大ダメージを負っている。

俺の想定通りであることを示すように、吹き飛ばされて壁に突っ込んでいた刈り取るものの腹部には大きな風穴があき、大きなダメージを負っているのが明確に分かる。

 

だが、あの程度では倒せないのは重々承知している。

後は耐久するか、最悪回避に専念して援軍が来るまで耐え忍べばいいだろう。

 

「・・・なに?」

 

そんなことを考えながら警戒を怠ることなく周囲を見ていた俺の目の前で、辺り一帯からマガツヒが集められ、刈り取るものの体が瞬く間に修復される。

 

「馬鹿な」

 

高位の存在に成る程、その身に負った傷を癒すには大きなリソースが必要になる。能力が高まるほどに、高位の回復魔法でないと体力が全回復しないのがいい例だろう。

神に片足を突っ込んでいるあの刈り取るものの大怪我を修復するなら、それ相応の代償が必要になるはずだ。

あんな高速回復なんて、それこそ異界の主クラスでないと不可能。

 

(そうか、この異界の主が手を回してるのか)

 

その答えに辿り着き、身構えた次の瞬間、自分の身体が軋む音と背中に硬い壁の感覚を感じ、そして、凄まじい激痛が全身を襲う。

 

「、、が、ふ」

 

咄嗟に全身にマガツヒを巡らせて物理的/霊的防御能力を向上させてもこのダメージ。並みのサマナーなら全身が弾け飛んで、血煙にされてるぞ。

 

そして、この刈り取るものの瞬間移動と言っても差し支えない移動速度にこの膂力。まさか、修復と共に能力の強化までされているのか。

 

「くそ」

 

迫りくる禍々しいオーラを纏い始めた刈り取るものを視界に収めながら、後二回しか呼べないペルソナとボロボロの小刀を手に、立ち上がる。

 

援軍は、まだ来ない。




黒幕さんがメメントスに特別アリーナを作って耐久戦を仕掛けました。
一定時間同じ場所にいると刈り取るものが出現するという、認知異界の絶対法則を利用したデストラップです。
しかも主人公を事前に消耗させて、刈り取るものには回復と死ぬたびに強化して復活という手厚いバックアップまで付ける手の込みよう。

勝ったな。ガハハ。風呂入ってくる(黒幕

プロローグそろそろ終わるので『他のキャラクター視点から見た主人公』はみたいですか?

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