ロック、制圧が決まり、LDS生のテンションはもう駄々下がりだった。真澄も泣きそうに涙を溜めて、志島北斗はもう明後日の方向を向いてる。一方で刀堂刃はこれから自身に待ち受ける理不尽に武者震いする始末だった。
「さて、ロック制圧……最後に来るのは当然」
「先攻……ワンキル……」
俺の言葉に誰が答えたというわけでもなく、本当にそんな事ができるのかとざわついていた。全員が全員出来る訳がないと言っているのかと思っていたが、先の2回のデュエルで俺の実力を理解してくれたらしい。
「さあ刀堂刃!大人しく先攻ワンキルの餌食になってもらおう!それとも、尻尾巻いて逃げるか?」
「……そんなわけねえだろ!!」
刀堂刃は覚悟を決めたようにニヤつき、フィールドに降り立つ。自前の竹刀を俺に向けて
「勝負だ!本郷敦人!!」
「……ほう、先の戦いを見ても闘志消えず、か……いいだろう!!」
「「デュエル!!」」
本郷敦人
VS
刀堂刃
LP4000
「当然ながら先攻だ。俺は永続魔法『ギャラクシー・ウェーブ』を発動。更に速攻魔法『手札断殺』。互いに手札2枚を墓地へ送って2枚ドローだ。今引いたギャラクシー・ウェーブをもう1枚発動。『十二獣サラブレード』を召喚。サラブレード1体でオーバーレイ!」
「今度はエクシーズか!?」
「でもルールを知らないようだ!エクシーズ召喚が2体以上の素材を用いるのが大前提だということを!!」
「でもそんな事を忘れるような彼かしら?あれにも何か意味があるんじゃ……」
真澄は意図が掴みかけているが、エクシーズを学んでいる志島北斗はその常識が足枷にでもなっているようにテンプレートを吐いていた。
「『十二獣』エクシーズは、同名以外の『十二獣』1体を素材にエクシーズ召喚できる。そしてそれはエクシーズ同士でも変わらない」
「なんだと!?」
「積み重なる十二の思い 獣の魂を宿し 巨悪を砕く 龍に抗え! エクシーズ召喚!! 『十二獣ハマーコング』!!」
十二獣ハマーコング ★4
ATK?/DEF?
「攻撃力が……決まってねえ……?」
「十二獣エクシーズモンスターは、その攻撃力と守備力を自身のオーバーレイユニットにあるモンスターの攻撃力に依存する。サラブレードは攻撃力1600。これがそのまま攻撃力になる」
ハマーコング
ATK?→1600
「そんな攻撃力じゃ、たとえ攻撃出来たとしても俺のライフは削り切れねえ!先攻ワンキルと宣った割には呆気なく俺が後攻ワンキルで終わらせてやるぜ!」
刃の宣言に会場が沸く。初めて俺を打ち倒せるかもしれないと希望を抱いている。ここまでくると俺ってば完全悪役だが、もう終わった事をとやかく言うでもない。
「ギャラクシー・ウェーブの効果」
「あ?そういえば発動してたカードがあったな。それもふたつ」
「エクシーズ召喚に成功する度に、相手に500のダメージを与える」
「……は!?」
フィールドの中心にエクシーズ召喚した際の渦が、未だ消えずに留まっている。その中から二つの光弾が放たれ、刃に直撃する。
「ぐっは!」
LP4000→3500→3000
「一気に1000ポイントのダメージ!」
「エクシーズ召喚1回だけでこれとは……しかし通常召喚は使った。これ以上のエクシーズ召喚はできて1回!このターンで削り切る事はできないよ!」
「……ハマーコング1体でオーバーレイ!」
「「は!?」」
「さっき言ったはずだぜ?『十二獣』エクシーズの召喚に、エクシーズモンスターかなんて関係ないと!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!
積み重なる十二の思い 獣の魂を宿し 巨悪を砕く 龍に抗え! エクシーズ召喚!! 『十二獣ワイルドボウ』!!」
「2回目のエクシーズ召喚……!」
「当然、ギャラクシー・ウェーブの効果で1000のダメージだ」
LP3000→2500→2000
「たったこれだけで、ライフが半分なんてな……」
「まだ終わんないけどな」
「マジかよ……」
そりゃ先攻ワンキルなんだからライフ半分にした程度で終わるわけねえだろ。まあ後2手だから我慢しとけ。
「ワイルドボウ1体でオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!
積み重なる十二の思い 獣の魂を宿し 巨悪を砕く 龍に抗え! エクシーズ召喚!! 『十二獣タイグリス』!!」
これで3回目のエクシーズ召喚。つぎで最後だ。
LP2000→1500→1000
「ラストだ!タイグリス1体でオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!
積み重なる十二の思い 獣の魂を宿し 巨悪を砕く 龍に抗え! エクシーズ召喚!! 『十二獣ライカ』!!
そして!ギャラクシー・ウェーブの効果で合計1000のダメージ!俺の勝ちだ!!」
「ふ……ふざけんなあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
LP1000→500→0
決着のついたフィールドには静寂が漂っていた。一人として声を上げる者はいなかった。卑怯者とかイカサマとか罵詈雑言くらい覚悟していたんだけどな。
「諸君、彼のスキルは理解してもらえただろうか」
その沈黙を破ったのは、どこで見ていたのか赤馬零児だった。俺の心情を余所に零児は続ける。
「君たちは確かに、我がLDSの優れたデュエル教育によって今の世代では格段な力を持った。しかし、榊遊矢が生み出したペンデュラム召喚に始まり、彼のように他の追随を許さないデュエリストが現れている。中には彼のような存在さえ認めない者もいるだろう。しかし、その者はそこで成長を止めると断言する」
零児の言葉にLDS生はざわつきだす。今まで自分たちが教わってきた事が通用しないと焦っているのか、しかし不安を煽る言い方するなぁ。
「そこで、舞網チャンピオンシップまでの間、急ごしらえではあるがこの本郷敦人にデュエルのコーチを行ってもらう。厳しい教育が予想されるが、頑張って欲しい」
それを言い終えると、零児はそそくさと引っ込んでしまう。
……っえ、それだけ?
このデッキMDでやられて無駄のない動きに感動したしざけんなってなった。