「これはどういう事だ?」
「どうも何も、事実は書面上に書いてある通りだ」
赤馬零児に呼ばれた俺は、社長室に来て早々書類を突き出されて理由を求められた。というのも、先のデュエルから俺は真面目に講義を繰り返し、その給金で遊勝塾の面々とスイーツバイキングで舌をデロデロに甘くしていた。講義内容も俺が出来る限り最大限のコンボや戦略、更には生徒の使用カードをチェックしてそれに合うカードを見繕って実際に回してみせるといった集団対応から個別対応と手広くやったのだ。大変だったが、その分給料も増えたからそこは経営者として赤馬零児からも信用されたと思っていいのかもしれない。しかし、生徒はそうでもなかったようで
「エクストラデッキを使うのにそれを6枚も除外するなんて何を考えているんだ!?」
「儀式召喚なんて消費が激しすぎて使う気になれないし……」
「あんたのデュエルは早くてついていけないんだよ!!」
……という感じに早ければその日のうちに、長くても一週間でリタイアした生徒が七割を超えたのだ。除外にしても『金満で謙虚な壺』は除外対象を選択できるし、儀式は最近ではモンスターだけでも完結するような構築にできるし、何よりソリティア理論はこの世代でも回せるようになる。ソースは俺含めた遊勝塾ジュニアユース以上。ジュニアもルート解説してあげればできるようにはなるから言い訳でしかない。これがゆとり教育の末路か……
「そんなこんなで、残ってるのは沢渡シンゴとあの時デュエルした三人に何人か。それとユースの一部って感じ。ここの生徒意志薄弱じゃないの?」
「……これでも我々が育て上げた精鋭だったのだがな」
「これで精鋭は舐めすぎだわ。エクシーズ次元がどうなったのか聞いたろ?」
「ならばこれでいいと?数を削れば不利になるのは分かりきっているだろう」
「話を聞くに相手は3VS1を強いる戦法とも言えないリンチ。ならこちらもまともに相手の戦い方に合わせる必要はないだろうに」
「……ならばどうすると?」
「こちらの戦い方に引きずり込むに決まってんじゃん」
三人でじゃなければ戦えないなら無理矢理タイマンで行く。三人で回して倒すのなら、雑に言えば削り切るのに3ターンかかる。ならこちらは1ターンで、長くても2ターンで倒せばクリアとなる。しかし、手札事故を起こした時の事を考えればそんな状況を許していいはずがない。
「ならこちらも三人一組で行動。しかし3VS3ではなく各自で一人ずつ相手するのがベスト。あとは横槍入れられないようにガードプログラムがあると嬉しいって感じかな」
「成程、しかし多人数戦をしなければならない状況もあるだろう。今のデュエルディスクには周囲でデュエルが行われていれば、自動的にタッグないしはバトルロイヤルに接続される。オンオフを切り替えられるようにするべきだ」
「それはアリ。でもそれはこちらで出来る対処で、能力は底上げして犠牲者は限りなくゼロにするべきだ」
「……出来ると思うか?」
「出来るか否かじゃなくやるんだよ。そのために選別したんだから」
強くなる気の無い者は勿論、弱気な奴も戦争に巻き込むわけにはいかない。原作のメンバーは事情説明したらやる気になるだろうが、アカデミアへの対抗策は多く持っておきたい。投げた奴は無理。
「あと、アカデミア戦ではアクションカード無しな」
「なんだと!?」
赤馬零児が立ち上がって抗議しようとするのを手で制し、俺の持論を説明する。
「こちらがチョロチョロ動いて敵が気にしない訳ないだろ。それで回避とか奇跡連発されるくらいならアクションデュエルを切って防御札入れた方が良い。それにアクションデュエルはエンターテイメント。それを戦争の道具には出来ないだろ?」
感情論を含め、時間が経つにつれて現れる問題点を持ち出す。赤馬零児もそれには苦い顔をし、エンターテイメントであると言うと、目を開いてこちらを見ていた。なんで信じられないって顔してんの?
「……君からそんな言葉を聞くとはな。榊遊勝を毛嫌いしている君は、アクションデュエルも嫌っていると思っていたが」
「デュエルに罪は無いからな。モンスターに乗れるのカッコイイし、リアルソリッドビジョンが悪い訳じゃない。結局楽しめたら一番良いのよ」
そのために戦うと言っても過言ではない。プロになりたいかと聞かれれば微妙だが、デュエルはいくらやっても楽しい。デュエルが好きなら殺しの道具なんて認められないからな。
「まあ今のところLDS生と遊勝塾、権現坂道場とお前さんの息のかかったやつが勝ち残りって見ていいかな。……くれぐれもLDS生を残すためにマッチング操作なんてするなよ?」
「分かっている。榊遊矢と彼に近しい者は是が非でも欲しい。柊柚子はどちらにせよ保護しなければいけないのは明白だからな」
「修造さんにどうやって説明するかな……まあそれは追々だな」
そう言って俺は社長室を後にしようと出て行く。その前に赤馬零児が呼び止めた。
「待て、君はユースクラスだが、出場登録がされていない。何故だ?」
「まあ勝つの確定だし、俺は裏方に回ってアカデミアの兵士を潰して回るよ」
「……前年度優勝者のデュエルが見られないのは、惜しいな」
「そんな事してる暇あるかよ。やる事多すぎんだわ」
手をひらひらと振り、今度こそ社長室を後にする。帰る途中に沢渡と出くわし、軽く話して調整したデッキを確認する事になった。
「最初に比べれば大分様変わりしたな。飾りとはいえエクストラデッキもようやく使うようになったか」
「使える物はなんだって使う。あの榊遊矢に苦渋を飲まされた日々を思えば、今の俺はそう!ネオ・ニュー・沢渡!!」
いつもの三人が後ろでパラパラと紙吹雪をばらまいてる。よっぽどの自信なんだろうな。実際完成度も高い。ピーキーさはあるが、こいつの引きなら上手く回るだろう。
「悪くない。ドローソースに心許なさを感じるが、お前の引きなら上手く回せるだろう」
「そうだろうそうだろう!!この俺が本気を出せば、榊遊矢なんて赤子の手をひねるようなもの!舞網チャンピオンシップでも俺がぶっちぎりで優勝してやるぜ!!」
沢渡は言いたい事を言うだけ言って取り巻きを連れて行ってしまった。
できることなら、戦争なんて考えずに、デュエルを楽しんでほしかったな。
久しぶりに投稿したのにデュエル描写ないやつがいるんですって。