まずは俺自身を振り返ってみよう。
俺の名は『本郷敦人』。前世の名前も同じくだった。昔はマスクのバイク乗りと同じ苗字とからかわれたものだが、それは今どうでもいい。問題は俺が『遊戯王アークファイブ』の世界に転生したという事だ。しかも遊勝塾とズブズブの関係。
遊戯王アークファイブとは、遊戯王オフィシャルカードゲーム第5のアニメシリーズ。ペンデュラム召喚という当時ゾンビ戦法がうざかった記憶しかない召喚法と、EM竜剣士が環境を席捲し、大会参加者のデッキ分布100%を占めるというコラなのかガチなのかよく分からない画像が出回るといった
一応フォローしておくならば、デュエル自体はそう悪い出来じゃない。環境に入ったデッキも散見されるし、アニメ効果爆盛りで「インチキ効果も大概にしろ!!」と切れ散らかすようなカードも、一部を除いてOCG化し、結果を残し、ちゃんと規制された。ただし乱入システムだけは許さん。遅延行為とも言えなくもないしもうすぐ勝てる!って状況を敵が乱入してる癖にそれ止めきれなくて負けてるの何なの?なら最初からいらねえじゃんそいつう!!ってなる。……話を戻そう。
俺はそんな世界に転生、しかも主人公の父が経営していた遊勝塾で特別講師をしている。高校生の俺がなんで講師をしているのか。それは俺が修造さんよりもルール、特にエクストラデッキに関しては修造さんはからっきしだったために、俺が講師として駆り出されることになった。給料も雀の涙程度だが、その誠意がありがたいと言うべきだろう。辛い状況でも正しい姿を見せんとするのは、彼の美徳と言える。
しかし、それを含めた良い点を塗りつぶすレベルで、この世界は理不尽と沼展開に襲われ、なんやかんやふわふわしたエンディングで終わる。あれでいったい何が好転したのか分からない。黒咲とか友も妹もいなくなって笑顔しか残らない末路が救いとか認められるか。
そんな未来を変えられるなら、俺はそうしたい。この世界にいる父さんを守りたいし、できた友人を笑顔教にしたくない。そんな決意を決めた。
さて、長々と講釈を垂れたが、そろそろ現実逃避も終わりにしよう。
「……お断りさせていただきたい」
「ほう、断るというのか」
なんで赤馬零児に呼ばれないかんのですかねえ!!俺は沢渡と親交はあるがそれ以外にLDSとのつながりはない。それに何が悲しくて自ら地獄に突っ込んでいかねばならないのか(遅かれ早かれ地獄に行く事実には目を逸らしつつ)
「君については調べが付いてる。本郷敦人、ジュニア、ジュニアユース共に優勝、連覇。その戦略はデッキに拘らず、全ての召喚法を操る。私のように」
「自分はできますよアピール?寒いからやめた方がいいね。ちょっとルールブック読めば出来る事をどうしてそう自慢げに話せるのか疑問だよ。やっぱ自分のカード好きに作れたら気分良い?」
「……LDSでの講師は遊勝塾よりも格段に給与も上だ。教員手当や福利厚生も充実している。何が不満なんだ?」
「まずあんたのファッションかな?」
「……真面目な話をしているんだが」
「じゃあ真面目に言ってやるよ。3年前から始まってる買収、世界中に手を伸ばしてる。それ以前には無かった動きが急に活発になったのには、何か裏があると踏んでいるのは俺だけですかね?」
「……」
下手なジョークがお気に召さなかった零児に直球をぶつける。こいつのやってる事はこいつの父親と変わらない。そんな片棒担ぐのはごめんすぎる。この先逃げられないとしても今くらいはのんびりさせてほしい。
「それを聞いてどうするというのだ?」
「まあLDSに不祥事があるならゴシップ誌にでも売れば小遣いになるし……てのは冗談だよ。怖い顔しなさんなって」
眼鏡が顔に皺を作りながら脅すのは怖い(確信)。それがイケメンならなお怖い(真理)。これが顔面偏差値の暴力ですか……(違う)
「貴様、何を知っている」
「それを知るのはまだ先かな。少なくとも今じゃない」
「ふざけているのか?」
「俺は慎重なんだ。それに、あんたは俺から聞くばかりで自分の事を言わない。ヘッドハンティングを演じるならもう少し腹の内側をさらさないとな?」
何を言っているのか分からないといったように零児はこちらを見る。そんなの一つしかないじゃないか。
「俺をヘッドハンティングしようとした理由だよ。こちとらあくまでも高校生。お世辞にも講師をさせるような年齢じゃないのは明白。遊勝塾は親父のアレで手伝ってるだけだし、経歴だけで図るにはそれこそ俺じゃなくていい。他に考えられるんだとしたら……なんだろうな?」
「君の事は調べが付いていると言ったはずだが?それは表は勿論、裏の顔も例外ではない」
「……なるほどね」
今度は俺が黙る番になった。というのも俺は親父に内緒で裏デュエルで荒稼ぎしている。連勝すれば大金が、負ければ終わりの賭けデュエル。確かに違法だが、俺はこいつが何か目的を持ってその場にいたのを知っている。まあ弱小()塾塾生の俺と零児とではどちらが信じられるかなんて分かりきってる事だが
「それで?入らなければそれをバラシてデュエルに関われなくすると?」
「そうはしない。しかし、君は父親に迷惑をかけたくないのでは?今は安定しているとはいえ、何が身体に障るのか分からない」
瞬間、俺は間にあるテーブルを叩く。少し罅が入ったが、LDSだし別にいいか。
「親父に何かやってみろ。LDS丸ごと破壊し尽くすぞ」
「ただ身を案じているだけだ。彼にも一度教えを受けていたからな。安心させる方法にはLDS講師はお誂え向きだと思うが?」
俺は意地でも本音を出さないこいつに溜息を吐きながら肩を落とした。
「お前が何も言わなくても否が応でも俺はお前に着く事になるだろうさ。従うかは別としてな」
変に疲れた俺は零児の制止を聞かずLDSを後にした。少し前には遊矢のペンデュラム習得を間に合わせてLDSに続報を待てとか責任丸投げしたけどペンデュラムカード渡したんだから許してほしい。今日はもう帰って寝る……
「だーかーらー!僕の師匠になってって言ってるじゃーん!!」
「だから、なんで俺がお前の師匠にならなきゃいけないんだよ!」
………………
また面倒なのが来た。
大分ダイジェスト。