因みにだが、俺や遊矢達は沢渡と親交がある。というのも遊矢が中学に上がった時に遊勝関連で突っかかってきたのが始まりだった。
チャンピオンだった榊遊勝の失踪は原作の描写以上に遊矢一家だけでなく柊家にも悪影響を及ぼした。遊勝塾の経営は一気に不振となり、柚子も制服を買う金に四苦八苦する始末。
故にLDSが襲撃してくるのは柊家が路頭に迷う事になりかねない上、こちらにとって何の生産性もない。だから先手を打った。それが赤馬零児に呼ばれた時に渡したペンデュラムカードだ。理事長であり彼の母親である赤馬日美香の狙いは遊矢のペンデュラムカード。しかしカードそのものがあればLDSも遊矢を狙う理由は残り一つ『LDSが他塾に負けた』を払拭するだけになる。そして、それの解決方法も今
「沢渡ー!デッキ調整するから付き合いなさーい!」
「なんだよ柊柚子。そういうのはお前の彼氏か、そこの師匠でいいだろうが」
「遊矢に勝つためにデッキを組むのに、遊矢としてどうするのよ。それに敦人さんにアドバイスもらうと幻奏デッキの原型がなくなっちゃうもの。デッキコンセプトは固めたから、後はデュエルして調整したいけど、丁度いいのがあんたしかいなかったのよ。てか遊矢は彼氏じゃない!!」
最後に遊矢彼氏説を否定すると、沢渡が俺を苦い表情で見つめてくる。遊矢自身は柚子の気持ちに気づいてるけど、あいつここぞって時にヘタレるから許してやって。いずれ否が応にも覚悟決める時が来るから。
「まあいいだろう。いずれ俺は、榊遊矢を倒し、本郷敦人を負かし、赤馬零児をも勝利し沢渡最強伝説を打ち立てる男!お前はその前哨戦とさせてもらうぜ!」
随分壮大にいってるが、柚子のデッキ調整には付き合ってくれるようだ。ここで時間を「待て!!」いや早いな。
入口をふさぐように立っていたのは黒装束にゴーグルを着けた男だった。背丈は中学生程で、腕にはデュエルディスクを付けている。うん、ユートくんです。ユートくんが柚子をかばうように沢渡の前に出る。
「下がっていろ」
「な、何よあんた急に出てきて!これは私のデュエルなんだから!」
「もう……君を傷つけたくない」
どこぞのワンキル御用達デッキで自由に飛び立ちたい系女子を重ねているんだろうけど、お門違いも甚だしいし、ここで面倒事ぶつけられると後々辛いんだよなあ。
「ケッナイト様のつもりかよ」
「沢渡、ここは俺に変われ」
「はあ?何言ってんだよお師匠。強くなったこの沢渡様の実力を見せるチャンスじゃねえか!」
「最近聞いてるだろ?LDSの制服組が闇討ち喰らってる事件」
「「「「「!!」」」」」
沢渡や柚子、沢渡の取り巻き達も驚いた表情を浮かべる。ここでそれっぽい事も言っておかねば。
「あいつのデュエルディスクは見たこともないフォルムだ。恐らく違法改造を施してリアルソリッドビジョンを内蔵させているんだろう。裏デュエルで似たような事件を見た事がある」
「ならなおさら俺が出なきゃいけねえ!これはLDSの問題だぜ!」
「制服組が負けまくってるのにお前でどうこうなるかよ。あいつらも弱いが、お前もまだ発展途上。ここは俺によこせ」
ただでさえ俺はLDSに目を付けられてはいるが、これ以上トラブルの素を抱える必要はない。俺は沢渡を下げ、代わりに黒コートの男(ユートくん)の前に出る。
「!貴様、彼女の仲間じゃないのか?」
「沢渡は俺の弟子的なところあるから。そんな奴に不審者を絡ませるような師匠じゃないって」
「ならば貴様は……LDSか!」
「いや違うけど」
黒コートくんが「は?」というような表情を見せる(見えない)。有無を言わさず俺もデュエルディスクを構える。黒コートくんもようやく構えた。
「「デュエル!!」」
黒コートくん
VS
本郷敦人
LP4000
「先攻はもらう。俺はカードを全て、セット!」
「「「「「!!」」」」」
「ターンエンドだ」
黒コートくんのアクションに取り巻きーズは笑い声をあげるが、沢渡と柚子は苦い顔をする。
「ガン伏せか」
「単純に5妨害って、一番厄介まであるわよね」
二人とも目の付け所はいい。攻撃反応型も召喚反応型もカウンター罠もあらゆる可能性があるガン伏せ。速攻魔法はどうしようもないが、それ以外をどうにかする方法はある。
「俺のターン。メインフェイズまで行きたいが、スタンバイフェイズに何かあるか?」
「特にない。進めて構わん」
よしよし、ここまではオーケー。これは一歩間違えると死ぬゲームだ。カウンターくんなカウンターくんな……
「俺は永続魔法『王家の神殿』を発動し、カードを1枚セット。王家の神殿が存在する限り、1ターンに1度セットしたターンにその罠カードを発動できる」
「何!?」
「発動するのは『トラップ・スタン』!このターン、このカード以外のフィールドの罠カードの効果は無効となる!」
「ならば、リバースカードオープン!『
「他にチェーンは無いか?」
「無い。次のターンがあれば十分だ」
「そっかそっか。あればいいな」
「何?」
これだけならば問題なく躱せる。いやー罠メタは考えが速くて助かりますね。
「俺は『不意打ち又佐』を召喚!!」
不意打ち又佐 ☆3
ATK1300/DEF800
現れたのはさんざんソリティアをかましている俺には似つかわしくないと後ろと前の5人に訝し気な目を向けられる小型モンスター。こいつはなぁ……最強カードなんだぞう!
「装備魔法『聖剣クラレント』を発動。又佐に装備。『サイコ・ブレイド』も又佐に装備。こいつはライフを2000まで払って、その払ったライフ分攻撃力と守備力をあげる。勿論
LP4000→2000
不意打ち又佐
ATK1300→3300
「攻撃力が一気に3300!?」
「それだけじゃねえ。不意打ち又佐は1ターンに2回の攻撃を可能にするモンスターだ。このままダイレクトアタックを決めれば」
「一気にワンターンキル!!」
「又佐オニつえええええええええ!!」
「このまま逆らうヤツら皆殺しにしようぜ!!」
「バトルの前に!」
「何かあるというの?」
「ライフ500をコストにクラレントの効果発動。装備モンスターはダイレクトアタックできる!」
LP2000→1500
「?今あいつのフィールドにモンスターはいねえぜ?」
「不意打ち又佐でダイレクトアタック!当然リバースカードを発動してもそれが罠カードなら表になった瞬間効果は無効になる。速攻魔法でも使うか!」
「……いや」
恐らくスタンダード次元のデュエリストと戦ってレベルの低さから舐め切っていた黒コートくん。しかし
「ライフなんてコスト分以外は1ありゃ十分なんだよお!!不意打ち又佐の2回攻撃!!『迫れ!燕返し!!』」
LP4000→700→0
「それでよお、お師匠なんでさっきクラレントの効果使ってたんだ?」
「墓地のシャドーベイルは相手のダイレクトアタックに反応して墓地からモンスター化して出てくるんだよ。落としたカードは確認可能だからしっかり効果見なきゃな」
「ん?罠はトラップ・スタンで無効なんじゃ」
「トラップ・スタンはフィールドの罠だけだ。墓地のカードには反応しないし、シャドーベイルはモンスター扱いで罠として扱わないから、トラップ・スタンは効かず壁になるのさ」
先攻制圧でしっかり蓋をするのが大事なのと同じように、ワンキルは確実に成功させないといけないからね。妨害が見えきってるならそれを躱す手段を用意しないとねえ。
「そんじゃ、俺はこいつどっかに捨ててくるから」
「おいおい、そいつはLDSの制服組を倒してるんだ。社長の所へ引っ立てるに決まってるだろ!」
「そこんところも上手くやるって。それよか柚子の事見ててくれ。デッキ調整するんだろ?遊矢も探してるだろうし程々にな」
「そ、そうよ!さあ沢渡、デュエルしなさい!」
「もう遅いし別に次でよくね?舞網チャンピオンシップまでにできりゃいいんだろ?お前確か条件もう満たしてるし遊矢には俺が言っといてやるよ。じゃーなお師匠。こいつ送って帰るわ」
沢渡が取り巻きーズと柚子を連れて倉庫を後にする。向こうからいなくなってくれるのはありがたい。こちらが移動する必要もないしな。気を取り直して黒コートくんのゴーグルを外す。すると当然ながら、遊矢と同じ顔が出て来た。
「……カードにしたければ好きにしろ。俺は仲間を売るつもりはない」
「それはどうでもいい。俺のデュエルディスクにそんな機能ないしな」
「……お前は何を知っている?この次元の人間なのか?」
「お前に質問する資格はなーい。その資格は勝者である俺にだけある。LDSの制服組はどうした?カードにしたならそれをよこせ。それとお前の声明を録音する事を了承するなら赤馬零児に上手い事言ってやる」
「!!赤馬零児と知り合いなのか!?」
「知り合いって程じゃないけどな。どっちかって言うと嫌いだし。敵でもないけど」
「……LDSのデュエリストはカードにした。そうすれば赤馬零児を引きずりだせると考えて」
まあ予想の範疇だけどよくポンポンできるよな。選択の余地は限りなく少ないけど、この次元はまだ融合次元の手が伸びていない。リサーチが先決のはずなのにそれすらせずにしたんだろうさ。
「救いようがない……」
「な、なあ……LDSはアカデミアとは関係ないのか?赤馬零児の父親がアカデミアのトップだという情報は手に入ったんだ。俺達は仲間を助けないといけない。そのために犯した罪が消える訳ではないというのは分かるが、全部終わった後にいくらでも「舐めてんじゃねえぞクソガキ」っ!」
「お前ら人をカードにした後元に戻す技術はあんの?カード化のシステムだってそのアカデミアから盗ったんだろ?全情報盗れる訳でもなし、カード化と次元移動の技術だけ抜き取れたって感じか」
「そ、そうだ……」
「仲間のため、いい言葉だよな。その言葉だけで全てが免罪符になる。人を殺しても正しいと宣える。さぞ気持ちのいい事だろうさ」
「違う!俺達はそんな事……」
「その言葉を誰が信じる?少なくとも……相方はそうじゃねえみたいだぜ?」
「?……っ!」
俺が振り返ると、そこには同い年に見えて実は中学生のクロワッサン……
『黒咲隼』が鬼の形相で入口に立っていた。
「最初のお前みたいな構図してんな」
「ふざけている場合か!!」
最初はLDS襲撃にしようとしたんですが不意打ち又佐を使いたくなったので1日遅れました。