手首から零れる砂 作:関東チャラ男
対戦よろしくお願いします
私はどうも昔からストレスを感じると無意識に自分の肉体を掻き出す癖がある。
今日は手首だ。痛い、だがやめられない。
ズキ、と痛みが強く出ると流石に気付く。
気付いたところでやめられるわけではないのだが。
嫌だなぁ、と思いつつ傷口を確認すると
空いた穴から砂が零れ出て来る。
…労働による疲労でついに頭までやられたかと思ったが
仕事机の上にパラパラと散らばるものは確かに砂だった。
砂?どうして?
私の身体に巡るものは血液ではなく砂だったのだろうか?
「すみません、斎藤さん…手首から砂が出てきたんですけど…」
「何言ってんすか…仕事に集中してくださいよ」
「いやだって…ほら!」
「ああ…はいはい出てますねぇ…じゃ、続きお願いしますよ」
うん?いや砂だよ?人間から砂が出てるのにそのリアクションおかしくない?
やっぱり私の頭がおかしくなってしまったのかしらとしばらく唸っていたが、
体内から砂が出るという異常事態に思考停止した私はまあいいかという結論に至るのだった。
手首から流れ出る砂を放置し仕事を続けていたところ、
今度はキーボードの入力も怪しくなってきた。
机の上に広がる砂に若干のストレスを感じていた私は今度は何だよと思い、
自分の指先を確認すると
無くなっている
指先から砂が崩れ落ちるように
流石の私も自分の肉体を失うという異常事態に若干焦り始めた。
このまま指が崩れ続けたらハイラルの平和を守護ることも出来なくなる。それは困るぞ。
斎藤さんに早退を申し出て急ぎ外に出る。
どうやら傷口を抑えている間は砂の流出も止まるようなので放置して肉体消滅なんてこともなさそうだ。
さて砂だ…砂を…補充したらよいのだろうか?
砂…公園の砂場?猫がフンをしているイメージがあるのでそれは却下。
海の砂…ここは東京のど真ん中だぞ。
じゃあ神社だ。ちょうど通勤ルート上に神社があるし有難い。
して私は神社に辿り着き、地面の砂を一握りしたところでふと正気に戻る。
何でこれを身体に入れようなんて発想に至ってしまったんだろうなぁ…
でも何とかしないと…何もしないままでは指がこのままだ。
傷口を開き、握った砂を流し込む。
ああ、入っていく。人間の身体に砂が入る。
神社の砂というだけあってさぞ神聖なものだろうと思っていたが砂は砂だ。
異物感。
気持ち悪い、何故私がこんな思いをしなければいけないのだろうか。
斎藤さんも私のことを何でも屋だと勘違いしてないだろうか?
プライベートを削って仕事しているとこうやって頭がおかしくなるんだぞ。
苛つきながら砂を流し込んでいたところ、指先が復活した。
どうやらこれで正解だったらしい。
どうだ、見たか。
見ていたのは私だけだ。ははは。
はぁ、と疲れたため息を一つ吐いた私は帰路につく。
明日からはまた日常が戻ると良いなぁ。
手首に巻いた包帯を摩りながら布団の中で意識は落ちていく。
「で、朝起きたら傷が塞がってたんですよ。不思議なことに。」
「はぁ、そらようござんしたな。じゃあ次の仕事をお願いしますよ。」
ああんもう、斎藤さんはもう少し人の話を聞いてくれ。
まあでもサラリーマンは仕事をしてナンボだ。言われた通りにしますかね。
そう思い、また日常に戻っていく。
ああ、だがこの手首に感じる確かな異物感。
気持ち悪い。
感じたストレスをそのまま手首にぶつける。
掻き出す手首にズキ、と痛みが走りだす。
開かれた傷口から流れ出るものは…