喪失のその先に   作:黒糖煎餅

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注意。
今回のお話は、僕なりに推しの子本編に登場する『厄病神』の正体はこうなんじゃ無いか、と言う推察(ほぼ妄想)が登場します。
あと、本来なら常世に存在しえない人が登場します。まぁ、ここも僕の独自解釈というか、なんと言うか。
一応伏線(伏線にしてはあっさりと書き流した気もする)を貼ってはいたのですが、まぁ。一応次回までには今回の内容の補完を行うつもりですので、それをお待ち頂ければ幸いです。


キミの会うべき人

世界が白く染まった。

景色も、風も、匂いも。俺が見ていたものはたちどころに霞と消えた。白く染まった世界に、ふわふわと浮かんでいる。

現世に戻ると思って少し身構えていたが、特に今のところはそんな様子が無い。

「…なぜだ?」

生きる意味を求めて、心と体が乖離した。アイの言葉通りに受け止めるなら、生きる意味を見つけた俺は、ここにいる意味なんてないはずで。この問答の間に、肉体の方が果てたのか。なんて考えを巡らせていると、視界に黒い影が映る。

「カラス…?」

黒々とした体毛に、3本の足。一羽、二羽とカラスは集い、身を寄せ合って人のカタチを成していく。

「や、久しぶり。」

白い髪が靡く。鈴の音のような声が鼓膜を打つ。こちらを見る視線は鋭い。少し怒ったような、呆れたような。ため息を吐きながらやれやれと言うように肩を竦める、ひとりの少女の姿。

「厄病神が…」

何故ここに、と言うと、彼女はむっとした表情を見せた。しかしいつもの薄気味悪い顔に戻り、ニヤニヤと薄く笑いを浮かべている。

「随分、酷い言い草だね?」

「お前には随分と酷い目に遭わされたからな。厄病神どころか、厄そのものだろ。」

「厄そのもの…そんな風に言われると、流石の私も悲しいなぁ。」

儚げな表情を浮かべながら、厄病神はその長い白髪をくるくるといじる。

「折角の感動の再会をお膳立てしてあげたのにさ、そんな言い方はないんじゃない?」

感動の再会。お膳立て。二つの言葉を反芻する。意味がわからない、とばかりに首を傾げると、厄病神はやれやれとでも言いたげな表情をして、こちらをちらりと一瞥した。

「頭は良いと思っていたけど、察しは悪いんだね?彼女たちも、この唐変木に悩まされているわけだ。いや、彼女たちにはわからないフリをしているだけで…」

私の言わんとしていること、わからないわけじゃ無いんでしょ?

「知るか。」

厄病神の言葉にそう返すと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべられた。

「お前は俺にとって悪そのものだ。お前の言葉を信じる理由も、その裏を理解してやる必要もないだろう。」

そう言うと、彼女は一瞬表情を曇らせる。

「まぁ、そうか。キミにとっては、そんな認識でも仕方ないよね。」

改めまして…

荘厳な面持ち。白髪を靡かせながら、彼女は名乗りを挙げる。

「私の名は八咫烏。日の本を統べる天照大御神の遣い。太陽の化身にして、導きの神。さぁ、星の子よ。今一度、キミに導きの加護を与えよう。」

そしたら、キミは私のこと、少しは理解してくれるよね?

視界が黒に染まる。上下が反転するような、ふわふわと浮かんでいた四肢が縛り付けられるような、不思議な感覚に思わず目を閉じた。

『ほら、目を開けてごらん。キミの会いたい人が、待ってるよ。』

重い瞼を開く。目の前に映るのは、かつての見慣れた情景。窓から覗く山々に、夕暮れ時に羽ばたく烏の群れ。山陰に沈み行く夕陽。そして、ブラウン管テレビに映る、旧B小町の初期のライブ映像。そして、いつもその映像にかじりついていた、一人の少女。

「…さりな、ちゃん…?」

天童子さりなが、そこにいた。

 

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