喪失のその先に   作:黒糖煎餅

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あかねちゃんカワイイヤッター。
推しの子二期決定おめでとうございます。
最終回の感動と二期発表の喜びで一気に書き殴りました。多分もう一話投稿されます。楽しんでいただければ幸いです。
面白かった、などの感想、励みになるのでお待ちしております。


届けたい、届かない。

舞台の公演と言う激務が終わり、二週間ほどのオフができて、家でごろごろしていた。久しぶりの休養だった。いつもならお芝居の練習だったり、次の舞台の台本を読んだりする…のだけれど、今日はとんとやる気が出ない。

それもこれも、公演も残り三舞台と言うタイミングで、とんでもないニュースが流れてきたからだった。

『神木プロダクション社長のカミキヒカル氏、何者かによって刺殺』

スマホのポップアップ表示に、眼を疑った。

幸い、舞台の公演の方は滞りなく終わった。全てを失って道すがらで餓死する少女。儚い終わりを迎える役どころだったのが幸いだったらしい。定まらぬ思考、動かぬ体。虚な瞳。カミキヒカルの死亡が私に齎したショックは、むしろ作品の質をひとつ上げたと言っても過言では無いのだろう。

最終公演を終えた座長からの賛美の言葉も覚えていられないほどに参ってしまっていたらしい私は、気がつけば自宅のベッドで眠っていた。

 

 

 

何度か、彼に連絡を取ってみようかとも考えた。

スマホのメッセージを打ち込んで、それを消した。

もう、彼との関わりはなかった。私と彼に、もう繋がりはなかった。彼は独りで走っていってしまったから。私の想いなんて、露ほども知らない…いや、知らないふりをしたままで。

 

「まだ、未練タラタラなんだよ…」

 

 

私の彼への感情は、きっと恋だった。

離れたくない。離したくない。隣にいたい。笑ってほしい。私の前では、何も気負わずにいてほしい。

だから、できることならなんでもやるよ。

君が歩けない時は手を貸すよ。

疲れた君の、止まり木になってあげる。

君が死にたくなったなら、私が生きる理由になってあげる。

 

そんな私の想いを、あなたは汲もうとしてくれなかった。

分かってる。優しさだ。

法に、倫理に、道徳に背く行為だから。

あなたは、私を切り離した。

自分は汚れていると理解していたから、私を汚すのを躊躇った。

 

私はあなたとなら、汚れたまま生きて行くのも悪くない、なんて。そんなこと言ったら、あなたはきっと怒るんだろうなぁ。

 

 

あなたの力になりたい。けど、それはもう叶わぬ願いで。偽装カップルという名の肩書きが繋いでいた細い糸は、あっけなく引きちぎられてしまっていて。大切な人のために、何もできることがない。圧倒的なまでの無力感をひしひしと感じながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

それから数日間。他の同年代の子たちが大学生活に胸躍らせている中で、私はひたすら虚無感を感じていた。

仕事があればまた違ったのだろうと思う。少なくとも、演技をしている間ならば、この言葉にし難い胸の内の感情が何かを、考えなくて済んだのだと思う。けど、不幸にも仕事は無い。舞台を終えたばかりの私は休養期間を貰っていて、大学の生活に慣れるまでは仕事も減らす、と言うのがララライの首脳陣の判断だった。私への気遣いが、回り回って私を苦しめているのは、なんだかちょっと皮肉な話だ。

流石に、何かしようか。時計を見ると時刻は10時過ぎを指している。空腹感に苛まれた私は、食事を作るためにキッチンへと向かった。

 

サラダにトースト。ベーコンエッグ。簡単に作れるものだから、一人暮らしを始めてからの朝食はこんなものになってしまった。まぁ、美味しいからいいんだけど。

カリッと焼けたトーストを頬張りながら、テレビで流れてくるドラマの再放送を眺める。内容は頭に入ってこないけど。

「…退屈だなぁ。」

1年ほど前までは、今とは全然違う生活だった。ふとした瞬間にはアクアくんのことが頭に浮かんで、オフの日は彼にメッセージを送って。何も無い時間でも、ドキドキしながら返信を待つのが楽しかった。

「アクアくん…」

スマートフォンのメッセージアプリの、一番上。お気に入り登録したままの彼のトークは、一年前から動いていない。

 

「会いたいよ…」

私の呟きは、ひとりの部屋に虚しく響いて消えていった。

 

 

 

 

 

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