かまくらぐらし   作:とくめ一

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社畜、モネ様と共に任務を遂行する。

 

 

「も、もう許してくれ!!助けてくれ!!」

「……まぁ、取引でズルしようとしたお前らが悪いんだからよ……」

 

 仕方ねェよな。

 

 俺は、静かに目の前の男の脳天を撃ち抜いた。

 

 

 あの後俺は見知らぬ路地裏で目覚め、衣食住をどうしようかと路頭に迷っていたところを若様に拾われることになった。

 いや正しくは、たまたま見つけた人のいないテントを寝床にしていたのだが、そこを元々ねぐらとしていたファミリーの下っぱさんが初心を振り返ろうとやってきた時に俺を見つけたのた。

 

 ボロボロな上(残業のせいで)大きな隈をこさえた俺を見た下っぱさんは「大変だったんだな」とだけ言って、それからも何も言わず何も訊かずに世話を焼いてくれたのだが……その後何故か下っぱさんが俺をファミリーに推薦してくれて、お陰で毎日を生きていけるだけの収入を得られるようになった。

 

 しかしファミリーの仕事は忙しいだろうと思っていたのに、俺の前職よりはホワイトなのだから驚きだ。

 何か相当な問題でも起こらない限りは定時で帰れるし、人数が多いお陰でそこまでの負担がこちらにこない。給料だってきちんと貰える。

 そして戦闘等の危険を孕む任務は大抵大人数、ことによっては幹部が一緒なのだから、死の危険はほとんどないのだ。

 

 ……まぁ、休みもほとんどないのだが。

 

「あら、もうそっちは終わったの?」

 

 そう声をかけてきたのは、今回初めて共同任務を行う相手である──

 

「っ、モネ様」

 

 そう、モネ様だ。

 

「こちらは殲滅完了です。念のため生き残りがいないかを確認したのちにその最後の男を殺しました。」

「そ。おつかれさま」

「モネ様はお怪我等ございませんか?」

「……あら、私がこんな相手に手間取るように見えるの?」

「いえ、しかし万が一貴女様の美しい肌に傷があっては大変ですから」

「なっ……!」

 

 モネ様は、アニメや漫画では分からなかったが凄く肌が綺麗だ。

 きっときちんと手入れをなさっているのだろうし、そんなに大切な肌に傷が残ってはモネ様も悲しいだろう。

 

「それに、モネ様は努力家で勤勉な方でしょう?ですから無理をなさっていないか心配なのです。

 ……私ごときがこのようなことを申し上げることは差し出がましいだろうと分かってはいるのですが……申し訳ございません」

 

 原作でも真面目だと言われていたモネ様は、本当に驚くほど勤勉な幹部である。

 様々な情報を隅の隅まで集めつくし、その上で作戦の立案をしてくださる。

 今回の、モネ様が陽動や敵の弱体化をはかり俺が後方から狙撃という作戦も、作戦の参加メンバー決定後にモネ様が立てなさった作戦である。お陰で随分と楽をしてしまった。

 

 勿論楽が出来るのは嬉しいが、彼女を見ていると無理をしすぎて前世で鬱になったりした同僚たちのことを思い出してしまう。

 

 

 ──これからこの会社でお世話になります!

 皆様の力になれるよう、毎日全力で頑張ります!!──

 

 ──…………すみません、先輩。わ、たし、っひ、ぅっ、もう、無理です……っ!!──

 

 

 ……そういう記憶が残っていると、モネ様ばかりにあのような重労働をさせていいのかとも思うわけで。

 しかし俺は立場上触れられない情報も多いし、諜報能力なんてものもあるわけがない。気軽に手伝うとかも言えねェし……まぁ、仕方ないか……。

 

「……あなた、見かけによらず遊び人なのね」

 

 と、死体の処理をしながら色々と考えている途中でモネ様から言われた言葉に、一瞬思考が止まった。

 こちとら前世も今世も彼女いない歴=年齢だぞ。

 

「…………申し訳ございません。心当たりがないのですが……」

「『美しい肌』とか色々と褒め言葉を並べ立てていたでしょう。私に取り入って、何かしてほしいことでもあるの?」

 

 なるほど、『下手なおべっか使いやがって、女だからってナメてんじゃねーぞ』みたいな意味か。

 このままでは勘違いによって俺が街ごと吹き飛んでしまう。

 

「取り入るつもりなど断じてございません。

 私はその美しさを保ちながら実直に任務をこなすモネ様のことを尊敬しており、そしてだからこそモネ様のことを心配しているだけなのです。

 任務の成功も、その綺麗な髪も、美しい肌も、全てモネ様の努力の証でしょう。

 ……私ごときでは出来ることなど限られておりますが、それでも、少しでも貴女様の助けとなりたいのです」

 

 モネ様はすすんで残業をなさることもあれば、作業に集中し過ぎると食事すら摂り忘れることがあると聞く。

 モネ様にとっては楽しいのかもしれないが、前世のトラウマがある俺にとっては彼女の働き方が心配で心配で仕方がない。

 

「私でなくとも構いません。

 手の空いている下級構成員などいくらでもおりますから、どうか過ぎる無理はなさらないでください」

 

 なんて、過労死したやつの言うことではないかもしれないが。

 

「……」

「……モネ様?」

 

 ……?

 

「……とこ……」

「え?」

「……そういうところが……!」

「あっ、え!申し訳ございません!?」

 

 そういうところ!?どこだ!!?!?

 あっ今の発言もしかしてセクハラだったか!!?!?

 

 何故か顔を隠して文句を言うモネ様にあたふたしてしまうが、どこに怒ったのかが分からないのでどうリカバーすればいいのかが分からないのでどうしようもなく。

 

 どうすんだ……俺セクハラの罪で若様に木っ端微塵にされるんじゃ……!!

 

 

「…………別に謝らなくたっていいじゃない。ふふっ、変な男ね」

 

 

 

 ──笑いながら焦る俺を見るモネ様の表情は、酷く美しくて。

 

 頭の中に渦巻いていた思考の全てが霧散して、目の前の光景に脳内を支配されるような感覚。

 あまりの衝撃に一瞬動けなくなったが、俺は何とか平静を装ってモネ様に言葉を返した。

 

 

 

「……私で変ならファミリーには変な男しかいませんよ」

「まぁ、それはそうかも」

 

 

 そんな会話をして、結局俺は直帰。モネ様は報告の為に若様の方へと帰っていった。

 

 …………次モネ様との共同任務があったら、相手にセクハラと思われないように細心の注意を払って行動しよう。

 

 うるさく騒ぐ心臓の音を若様への恐怖ということにして、俺はそのまま帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──三日後、辞令によってモネ様直属の部下になることも知らないで。

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