店に入り案内された個室に入り、モネ様と向かい合って席に着く。
……まぁ言うまでもないだろうが、当然俺は緊張でガチガチである。モネ様の食べられない物はないかという問いに答えるので精一杯だ。
なにしろ前世でもこんな店営業で数度行った程度だし、そもそも一体全体何故こんな場所に連れてこられたのか検討もつかない。
褒美にしても尋問にしても全くない心当たりに俺は内心で少し怯えながらも表面上だけは何とか取り繕って大人しく座っている状態だが、モネ様はというといつも通りの表情でただこちらを見ている。
何を考えているのかサッパリ読めずに不安を膨らませていると、モネ様は前触れなく、しかしゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、今日ここに呼んだ理由についてだけど……」
く、来る!
一体何の話が!?
心臓がバクンと音を立て始めたその時、コンコンとノックの音が部屋に響いた。
「失礼いたします」
……どうやら料理が届いたらしい。
宙に浮いたような緊張にもどかしい気分になりながらも前菜と酒を受け取り──いや待て前菜???コース料理?????
……そうか。……そうか、高級料理店だもんな……。
………………金足りるか……?
一抹の不安は覚えるが、もう足りなければ足りないでどうしようもないのでそのことは一旦頭から放り投げた。
今はまずモネ様の話が先だ。
「それで、本日はどのような……?」
「あぁ、ごめんなさい」
気になってつい先程の続きを促すと、モネ様は改めて口を開く。
「実は貴方を私の直属にした件に関して、まだ若様にお話ししてなかったの」
「……………………ハイ?」
嘘だろモネ様うっそだろ。
……いや、でも……そうか。俺なんか末端の末端もいいとこの、幹部の気まぐれで殺されても何も言われない立場の人間だしな。わざわざ許可なんか取る必要もないと思ってたのかもしれねェ。
「若様も一々許可をお求めにならない方だし、別にわざわざ言う必要もないと思っていたんだけど……」
モネ様の話にあぁやはりそういうことか。と納得した俺は、直後放たれたとんでもない言葉に己の耳を疑った。
「この間お会いした時に、若様が是非貴方に会いたいと」
……なんでだよ。
俺末端。下っ端。
王で七武海でファミリーのボスに会う器じゃない。
…………ははーん。
俺、モネ様を誑かしたと思われてるな?そしてこれから町ごと吹き飛ばされる未来が待ってるな??
あまりの恐怖で逆に冷静になってきた俺は、そのままモネ様に訊いた。
「私などのような末端の者が若様にお会い出来るなど光栄の至りには存じますが、本当によろしいので?」
「ええ。他でもない若様の望みだもの」
「ははは、身に余る栄誉ですね。
……いつお会いすればよろしいのでしょうか」
「さぁ?若様の時間が出来たら会いに来るそうだけど」
「……承知しました」
……つまりランダム遭遇ってことじゃねェか。
突然背後から首スパーンもあり得る訳だろ?心臓に悪すぎる。
頭の中に湧き上がった嫌な未来ごと胃の中に流し込むようにぐいと酒を呑み干すと、目の前のモネ様が、機嫌良さげに微笑んだ。
「あら良い呑みっぷり。
私も呑みたい気分だから、もう少し追加でお酒を頼んでおくわ」
「……ありがとうございます」
本来なら遠慮すべきだったのかもしれないが、酒でも飲まなければ逃れようのない恐怖から目を背けられそうにもなかった俺は、少し迷ってから礼を告げた。
──この後、この選択を後悔することも知らないままで。