我儘な天使   作:多様性の獣

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お日柄ァ(挨拶)
思い付きの見切り発車小説です。一応この次の話は考えてますが、それ以降は何も無いので続くかはわかりません。
タイトルは良いの思い付いたら変えます。


人間から改人へ

 時代遅れなペーパーワークに囲まれて、死に体で帰ったワンルーム。そこに置かれた安っぽいベッドに倒れ込んだのが、思い出せる限りの最後の記憶。

 

 そして目が覚めたら水の中にいた。

 

 いやマジで。他に言い様が無いし、僕だってこの状況に困惑してる。水の中で目を開けていても特に眼球が痛くなるとかは無いけど、置かれた状況の所為で頭の方は痛くなる一方。

 

 どうやら僕は今水中……というよりガラスケースの中にいるらしい。そのケースの底から伸びている色々な器具が僕の体に張り付いていて、中でも一番大きな管が僕の口にあるマスクと繋がっている。

 

 マスクのおかげか呼吸は問題無いし、体に張り付いた他の器具も、別段痛みとかを伴うものじゃない。他に特徴的なものと言えば、ただケースを満たして僕を浮かせている水が緑色をしてるくらいだ。

 

 ……汚いな、色が。これに浸かったままでいたら健康被害とかありそうだ。仮にそんなのがあったとしても、どう出たら良いとかわからないけど。

 

 いや、そうか、そうだ。まずは出る方法を探さなきゃ────

 

『おぉ!もう起きたのか!』

 

 ────…ガラス越しの声。くぐもったその声は、多分老人のものだ。それが聞こえた瞬間に目を閉じてしまったから外見はわからないけど、何と言うか、こう……生後間も無い孫を見てるおじいちゃんみたいな温かみのある声音。

 

 それが本当に赤ん坊辺りに向けられてたなら良いんだけど、多分向けられてるのは僕だ。だとするとこのおじいさんは相当おかしな奴になる。

 

『うむうむ、経過は順調そのもの。定着も済んだようじゃな』

 

 経過、定着。何だそれ、モルモットみたいだな。まぁモルモットなんだろうな。緑色の水に浸けられた人間とか、明らかに何かしらの実験体だろうし。

 

『む……?もう目も開くのか!?良い良い、愛い子じゃのォ68番ちゃんは』

 

 うわぁすっごい悪趣味な名前。

 

 それはそれとして、さっき声を掛けられた時に思わず閉じてしまった目をもう一度開けば、思った通り老人が立っていた。

 

 それも、しっかり見覚えのある顔が。

 

『ぬお!?脳波が凄まじい振れ方を……そうかそうか!68番ちゃんも嬉しいか!!』

 

 嬉しくなんて無いが。本気で。

 

 このジジイ、随分と見覚えのある顔をしてるじゃないか。どこかで会っただとかじゃなく、寧ろ仮に会いたかったとしても会えない顔だったはずだ。

 

 殻木(がらき) 球大(きゅうだい)、【僕のヒーローアカデミア】という作品に登場するマッドサイエンティスト。

 

 僕はその作品が好きで、となればこのイカレ医療従事者の事も知っている。オール・フォー・ワンという個性を持ち、同名で魔王として名を馳せた巨悪に、個性の複製等の技術を提供する下衆外道だ。

 

 それが今、目の前にいる。

 

『いずれお前さんにも大仕事をして貰う事になる。その時まで、すくすく立派に成長しておくれ』

 

 ははーん、さては転生ってやつだな?

 

 ……とか冗談を言ってる場合じゃない。いや冗談でも何でも無いけど、とにかく今はそんな事より考えなきゃいけない事がある。

 

 仮にこれが現実だとして、今の発言からして僕はこいつの味方として扱われるポジションにいるって事になる。凄く嫌だ。とても嫌だ。めちゃくちゃ嫌だ。

 

 だって悪役だし。これで同情出来る過去とかがあれば多少は違うかもしれないけど、こいつはそういうのを見た覚えが無い。確か個性の論文を否定されて学会から追放されたとかだった気がする。

 

 そこだけならまぁ、一応同情は出来るけれども。問題はその後、このジジイがオール・フォー・ワンなんていう大悪役に靡いたって所だ。

 

『おや?その検体はまだ試したばかりだと思っていたんだが』

 

 そうそう、確かアニメではこんな声────

 

『また脳波が大きく振れておるな。もしや、わかるのか?そうじゃそうじゃ!この人がお前に力をくれた御人じゃ!』

『成程、もう思考が始まっているのか。優秀な個体だ』

 

 ────…うん。そう、こいつがそのオール・フォー・ワンだ。かつては魔王なんて呼ばれて恐れられていて、最強のヒーローであるオールマイトに敗北した後は、裏で様々な策を練りながら雌伏の時を過ごしていた大悪党。

 

 で、だ。僕は今ガラスケースの中にいて、気色と発色の悪い液体に浸けられて、オール・フォー・ワンから力……この世界で言う【個性】を与えられた実験体って事になる。

 

『しかし奇妙だ。僕はてっきりもう一月程を費やすとばかり思っていたし、実際そういう計算だったんだろう?』

『確かにその通りじゃが、この子は再生系と活性系を持っておるからな。上手く作用してくれたようじゃ』

 

 おまけに個性は複数あって、それらはここにいる二人がシナジーを考えて与えたもの。これだけ情報が手に入れば、嫌でも結論は出る。出てしまう。

 

『覚醒時点で思考、情動の類を持つ【ハイエンド】か。また面白い子が出来上がったね、ドクター』

 

 どうやら僕は意思を持たない戦闘人形である【脳無】に、それもハイエンドになってしまったらしい。




・ハイエンドちゃん(くん)
寝て起きたらケースの中で汚い水に浮いていた転生者。起きて間も無いので思考も纏まってないし、自分の事でもどこか他人事のように感じている────…どころか、無理が祟って悪夢を見てる程度の認識。
まだ本人は気付いていないが、転生どころか性転換もしてる。

TSはノリ
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