咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
京都記念の出走者達をパドックで観察する。カルチャー先輩とスズシロナズナ以外では、昨年のセントライト記念 (GⅡ)で2着だったバードストライクと、昨年のチャレンジカップ(GⅢ)優勝者のサンアタックが有力候補と見られている。
現在ダントツの1番人気は昨年の年度代表ウマ娘であるスズシロナズナで、2番人気がティアラ2冠のカルチャー先輩だ。続いてサンアタック、バードストライクとなる。
パドックでの顔つきを見る限り、調整不足な人はいないように思える。さすがGⅡと言ったところか。
「スズシロナズナさんもヤル気充分な顔つきですねぇ、これはカルチャー先輩といい勝負になりそうですね」
「どちらもシニア級最初のレースだから、勝って春のGⅠ戦線への弾みを付けたい所だろうな…」
新代トレーナーも会場の熱気が伝わってきたかのようにボルテージが上がっているみたいだ。
そう、来週からはフェブラリーステークスを皮切りに『春のGⅠシリーズ』が始まる。私の目下の目標である桜花賞やオークスもそれらに含まれる。まぁまだその2歩手前な状況ではあるけれど……。
カルチャー先輩の次の目標レースは恐らくGⅠの大阪杯。スズシロナズナも同様と思われる。更にその次は長距離の苦手なカルチャー先輩は多分ヴィクトリアマイルで、スズシロナズナは天皇賞 (春)かなぁ?
他にも『王者』ツキバミや『
もちろん私達クラッシック級も負けてはいられない。クラッシックやティアラのGⅠは、走るチャンスそのものが一生のうちで1度しか無い。「やり直し」や「また来年」の無いレース、私の夢のゴールでもある。
今はカルチャー先輩の走りを観察し、盗めるものは何でも盗んで、自分自身の養分にしなくてはならない……。
☆
ゲートが開きレースが始まった。序盤から先頭より1段下がった位置で大きな団子が出来ている。『逃げ』の先頭争いをしているのが2人いて、その後方で10人くらいが固まっているのだ。その後ろでカルチャー先輩の他、数人が脚を溜めている状況。ずいぶん
「恐らく中団の全員がスズシロナズナをマークしているんだろう、『先行』策の彼女を中心に一団が出来ている。このまま埋もれてくれればエドにも勝機があるな」
新代トレーナーの解説が助かる。テレビの実況アナウンサーさんも同様の事を言っていた。そして「ここまで多くのウマ娘がスズシロナズナをマークするとは互いに考えていなかったのだろう」とも。
その証拠に中団の走りはチグハグで、互いに進路を塞ぎ合ったり接触事故スレスレの位置取り争いをして全体がスピードを落とし、後続のカルチャー先輩達も前を塞がれて減速せざるを得なかった。
その結果『逃げ』た2人だけがリードを広げて、その他が大きく遅れる展開になる。
しかしそこでいち早く大外から立ち上がってきたのが我らがカルチャー先輩だ。未だに混乱の残る馬群を掻き分けて、最終コーナーからの激烈な追い上げで先行した2人を射程に捉える。このレースの名前は『京都記念』だが、開催地は阪神レース場だ。そして阪神レース場の最終直線には、短いが勾配のキツい『仁川の坂』が控えている。
そのままカルチャー先輩は坂の魔物をものともせず、前の2人をごぼう抜き、結果2着に2馬身差をつけて優勝した。実況さんの「オオエドカルチャー貫禄勝ち! まさに横綱相撲でした!」の言葉通り、見ていて気持ちが良いくらい堂々とした勝ちっぷりだった。
一方カルチャー先輩が密かにライバル視していたスズシロナズナは、結局最後まで馬群から抜け出せずに10着とまるで良い所無しで終わってしまった。有馬記念で輝いた彼女の末脚が今回見られなかったのは残念だが、勝負は勝負、ここは素直にカルチャー先輩の9ヶ月ぶりの勝利を祝いたい。
「色々と見るべき所の多い良レースだったな。コスモスも勉強になっただろ?」
新代トレーナーの言葉にハッとして動きが止まる。普通に観戦して盛り上がっていただけで、『技術を盗んでやる』的な発想はすでにどこかへ飛んでしまっていた。まぁその後何回もビデオ再生を見せられてレポートを書く羽目になったのだが……。
☆
「あ、あの、カルチャー先輩、GⅡ勝利おめで…」
「たくないから!」
レースの翌日、事務所で顔を合わせたカルチャー先輩との対面時の会話がこれだ。えぇ…? 何で重賞に勝って帰ってきたのにいつも通り、いやいつも以上の不機嫌モードなの…?
「ムフ〜、エドちゃんはライバルに肩透かしを食らわされて欲求不満なのだぁ〜」
怯える私の後ろからババヤーガ先輩が声をかけてきた。え? それってどういう事…?
「相変わらずバーはお節介でうるっさいよねぇ、ホントムカつく…」
カルチャー先輩の怒りの視線をのほほんと受け流すババヤーガ先輩。私もあの受け流し術を身に着けたい、切実に。
「ほら、昨日のレース、スズシロナズナは他の娘のマークがキツすぎて、レースそのものをさせてもらえなかったでしょ? 『ライバルとの熱い闘い』を望んでいたエドちゃんは、それが出来なかったのでイライラしているのでした!」
おぉ、なるほど。ただレースに勝つだけではなく、ライバルと目した相手との丁々発止の攻防戦の末に勝利を掴みたい、というウマ娘あるあるな贅沢な理由で苛ついていた訳ですか……。
その気持ちは分かるけれども、私には今イチピンとこない。なぜなら私は「地元で勝ち続けてきた」か「学園で負け続けてきた」かのどちらかの人生しか送っておらず、『ライバルとの勝ったり負けたり』なんて青春展開とは縁が無かったのだ。
本日の予定表を睨みつけたカルチャー先輩が口を開いた。
「今日はバーとコスモスで併走練習の予定か… よし、あたしも混ぜて。3人で走ろうよ!」
「いやいや、エドちゃん昨日レースしたばかりじゃん! 大人しく今日は休みなよ…?」
「イヤだ、走る!」
部屋の反対側で私達の騒ぎを遠巻きに見ていたトレーナー陣も、全員が諦めた様に首を振っていた。カルチャー先輩がこうなったら誰にも制御出来ないのだ。
結局私も巻き込んで併走練習… いや最終的には模擬レースになって全力で走らされる羽目になった。しかも
☆
体力的には極限まで減らされて、真冬にも関わらず汗だくになってしまった。でもやはり実践的な練習だった事もあって、テレビ中継では分からなかったカルチャー先輩の息遣い等も含めて実のある学びの日になったと思う。
「『熱い闘い』かぁ…」
これから先、GⅠを目指す中で同じ