咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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エピローグ 前編

 激動の有記念も色々ありつつも終了し、新たな年が明けた。

 私はシニア級へと昇格し、「ウマ娘最初の3年」の最終年を迎えた。

 

 去年の今頃は未勝利続きで心身ともに新年を祝う余裕なんて無かったけど、去年は初勝利も出来てライバルとも言えるお友達もたくさん増えて、何よりGⅠも勝てたし、長年目標としてきた先輩達とも同じレースでガッツリ競えて、良い勝負が出来た。

 

 本当に良い1年だったと思う。この満ち足りた気持ちで、誓いを新たに今年もレースに邁進しようと思う。

 

 実は有記念の直後から新年を跨いだ1週間ほどの間、私は実家の徳島に帰郷した。

 

「コスモスは良い結果を残せたのだから、故郷に錦を飾ってこい」

 

 とチームの山西チーフに言われて、私が返答するより前に帰りのチケットを押し付けられた。

 

 まぁ「去年も会わせる顔がなくて帰ってなかったし、たまには顔見せて安心させてやるかな」と地元に帰ってみたところ、私を迎えた商店街のアーチに巨大な横断幕が。そこには「徳島の星! コスモスキュート秋華賞優勝!!」と大きく書かれている。

 

 私が帰郷する事は親にしか言っていなかったのに、あっという間に親から噂が広まって町を、いや周囲の市町村も巻き込んで、1000人程の人が集まってイベントを仕組んだらしい。さすが田舎……。

 

 これはちょっと恥ずかしい。でも商店街の皆さまの応援あってこそ今の私が居るのだから、感謝を返さないといけないよね。

 

 両親を始め、地元の友達やランニングクラブのコーチ、その他色々な人たちとたくさん話をした。

 

 更には町会長さんの押しに負けて、急造の舞台に上げられトークショーや歌謡ショー紛いの事までさせられたりもした。

 

 照れくさいけど、みんな私を応援してくれている。皆が私に期待して、夢を託してくれている……。 

 とても温かい気持ち、皆の『想い』を受け取って十二分に充電出来た。新年度も頑張って結果を残さないとね。

 

 メジロパラディンさんが怪我を治して復帰した時に、情けない姿で迎えたくない。『強い私』で在り続けないとパラディンさんにも失礼だもんね。

 

 ☆

 

 年明けの新学期が始まり、昨年の成績に則って各種表彰が行われた。

 

 最優秀シニア級ウマ娘は、ジャパンカップで世界の強豪を一蹴したブラックリリィ先輩が受賞し、同時に年度代表ウマ娘にも選ばれた。

 

 シニア級では凱旋門賞を勝ったスズシロナズナ先輩と票が割れたそうだけど、ナズナ先輩はナズナ先輩で別途『特別功労賞』という賞を貰っていた。

 

 そして同時期にツキバミ先輩の現役引退も正式に発表された。トゥインクルシリーズだけでなく、次のドリームトロフィーリーグへの参戦も無期延期だそうだ……。

 

 やはり脚の具合が思わしくなく、仮に復帰してもまたすぐ脚を痛めてしまう可能性が高いかららしい。 

 抜きん出た実力を持つが故に、その実力に体を壊されたとても不幸なウマ娘、という訳だ……。 

 

 ツキバミ先輩、さぞや無念だろうと思う。「私がその無念を晴らします」等と言えた義理ではないのだが、貴女の分まで一生懸命走ります。見ていてくれたら嬉しいです。

 

 クラッシック級の最優秀表彰は、この1年でGⅠを3勝しているエバシブさん。彼女はアルビノというハンデがあるのに、とてつもなく強かった。来年の台風の目になるなるのは間違い無くエバシブさんだろう。

 

 そしてジュニア級は私の可愛い後輩であるウィッシュブリンガーちゃんが受賞した。おめでとうウィッシュちゃん、来年のレースで一緒に走れたら嬉しいな。

 

 そして私は… 何にも選ばれませんでした。ちょっと寂しいけど、表彰される為に走ってきた訳でもないし、エバシブさんを向こうに回して私が最優秀になるのも烏滸がましいから、まぁそんなものか、と納得している。

 

 ☆

 

「ねぇ、ちょっと良い…?」

 

 各種表彰から数日、すっかり日も落ちて今日のトレーニングも終わって寮に帰ろうかというタイミングで、私はエバシブさんに声をかけられた。

 

 エバシブさんは前述の通り『アルビノ』で、肌も毛色も真っ白で、近くで見るとまつ毛ですら真っ白だ。そこにウサギみたいな赤い瞳がとても綺麗に見える… 見惚れちゃうよね。

 

「ちょっと相談に乗って欲しいんだよね…」

 

 その言葉で夢の世界から引き戻される。そうだった、でも私なんかに何の相談があるのかな…?

 

 普段からぶっきらぼうなエバシブさんの方から話しかけてくる、しかも相談なんて珍しい事もあるものだな、等と思いつつもその未知の相談内容に少々身構えてしまう。

 

 グラウンド脇のベンチで私とエバシブさんの2人で並んで座って話を聞く。

 

「実は『歌謡祭』での楽曲なんだけどさ…」

 

 はぁなるほどなるほど。去年私が奇跡の復活を果たした神イベント、「新春ウマ娘大歌謡祭」の話ですね。

 

 聞けば、クラッシック級の代表に選ばれて、センターとして歌謡祭で歌う楽曲を決めろと言われたが、自分(エバシブ)はライブにはさほど興味が無く、特に好きな曲も無いのでどうしたものか困っている。との事だった。

 

「一応希望曲を書くだけは書いたけどさ…」

 

 そう言ってエバシブさんが見せてくれたプリントには希望曲の欄に『トレセン音頭』と書かれている。

 

 いやいやいやいや! 今1月だよ? 何で音頭? と思わずツッコミたくなる衝動を抑える。まぁ、それが本当にエバシブさんの歌いたい曲なら尊重されるべきだけどさ……。

 

「いやホント興味無さすぎてテキトーに書いただけなのよ。だから私の代わりに貴女に決めてもらおうと思って…」

 

 は? 何故? 何故に私が…?

 

 頭上に?マークを乱立させた私を見かねてエバシブさんが話の続きを切り出した。

 

「有記念での貴女は速かった。事故が無ければきっと貴女が勝っていた。そしたら年度代表は貴女になっていただろうし、曲を決める権利も貴女にあったはず。だから私の代わりに貴女が歌う曲を決めて良い…」

 

 え〜… そんな急に言われても分からないよ……。

 

 何かの冗談かと思ったが、エバシブさんのルビーの様な真っ赤な瞳は、純真無垢に私を見つめている。

 

「いやいや、私にはそんなの恐れ多いですよ。結果として私はレース失格になった訳ですし、私にはそんな大役無理ですよ…」

 

「そう… ならば貴女のイメージで勝手に私が曲を決めるけど良い?」

 

 私が歌うわけでもないのに、なぜ私のイメージになるのだろう? エバシブさんの考えている事が全く分からない。

 

「えっと、『私のイメージ』ってどういう事です…?」

 

「ん、私はイベント当日体調不良で欠席するから貴女が代わりにセンターやって」

 

 はぁっ?! 何を言ってんですかこの人は? そんな事が許される訳が……。

 

「んじゃ事務局に提出しておくから…」

 

 エバシブさんはマイペースに私を無視したまま、用紙に何かちょちょっと書いて、満足げに私のもとから去って行った。

 

 一瞬だけだけど、私はそこに書かれた文字をしっかりと目にする事に成功する。

 

 エバシブさんが「私をイメージして、ライブで歌え」と指定してきた曲、それは『めにしゅき♡ラッシュっしゅ!』だった……。

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