咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
『めにしゅき♡ラッシュっしゅ!』
それはトレセン学園の唱歌の中でもダントツにコケティッシュな、『可愛さ』を全面に打ち出した曲である。
ずっと付き添ってくれたトレーナーさんへの多大な感謝と、それ以外のちょっと微妙な乙女心が歌われる、非常にお客さん受けのする『人気曲』だ。
エバシブさんは「
これはどういう事だろう…? 単に私に「可愛い曲が似合いそう」とかなら、まぁまだ「ありがとうございます」で済むのだけど、私が新代トレーナーに恋していた事も、エバシブさんに知られていた可能性もあるって事…?
いやいや、そんな事はありえない話だ。エバシブさんとは私生活を語るほどの近い距離ではなかったし、それどころか去年はまともに会話すら出来ていなかったのだから、彼女が私の心情なんて知る由もない。
…とは思うが、オオエドカルチャー先輩からも「コスモスは分かりやすい」と言われていたし、下手したらエバシブさんだけでなく、他の同期のウマ娘にも私の恋心がバレバレだった可能性すらあるって事…?
イヤだぁ! …こんな疑惑に囚われて、私はこの先どうすりゃ良いのよ…?
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一応私も『秋華賞』というGⅠの勝者であり、クラッシック級ウマ娘の代表の1人として、歌謡祭のステージへの参加は既に確定していた事から、私がエバシブさんの代わりにステージのセンターに立つ事自体は大して問題とはされなかった。
当初はヘリアンさん辺りが猛反対してくる事が予想されたのだが、次席のフォーゲルフライと三席のハピネスシアターちゃん他、ヴァーンズインさんやジーニアスセイント先輩ら同期の強豪が、揃って「コスモスがセンターで構わない」とフォローしてくれた。
『センターはコスモスキュートで』という案は、クラッシック2冠覇者であるエバシブさんのアイデアな上に、『桜花賞』 以外のGⅠ覇者が「許可」した以上、これはほぼ決定事項となる。
そんな事もあって、内心はともかく表立って異議を唱える人物も出てこないまま、私のセンターで『めにしゅき』が歌われる事が決定した。
…でもその裏事情も大体想像出来る。みんな『めにしゅき』の歌や踊りが可愛
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今後のシニア級に向けたトレーニングはもちろん、学年末のテスト対策や今年こそは忘れちゃいけないバレンタインの準備等々、多忙な中で『歌謡祭』に向けての歌やダンスのレッスンもある。
ちなみに歌謡祭のラストに各階級のトップ3人がセンターとなって歌う『ウマぴょい伝説』はさすがに「それは違うでしょ」と辞退した。
その代理はフォーゲルかと思いきや、何やら紆余曲折あって結局ヴァーンズインさんに決定したらしい。事情は分からないけど、彼女も素敵な歌声をしているから楽しみではある。
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そんな目まぐるしい毎日を過ごすうちに、あっという間に『歌謡祭』当日になってしまった。
当日のプログラムは例年通り、デビュー済のウマ娘の中からランダムに選ばれた72名による盛大な『GIRLS' LEGEND U』から幕を開ける。
去年の私のスタートはまさに『ここ』からだった。去年の歌謡祭が無かったら、今の私は居なかった。あれは多分一生忘れられないステージだ……。
懐かしい気持ちでステージを見守る。今年の歌唱メンバーに知り合いは居ない。未勝利も重賞ホルダーも関係なく、選ばれた72人が懸命に歌い踊っている。
上から目線になってしまうかも知れないが、ステージの皆は頑張って欲しい。特に今まだ未勝利の娘達、絶対に夢を諦めないで。
『勝ちたい』と願い続ける限り、ウマ娘には必ず奇跡が訪れるのだから……。
2曲目は日本初の『凱旋門賞』制覇を成し遂げたスズシロナズナ先輩の「
こちらはナズナ先輩を中心に、オカメハチモク先輩とスターコロボックル先輩の3人のみのステージでバックダンサーは居ない。
ちなみにこの3人組の由来は、同じチーム所属の仲良し同期だそうだ。
凱旋門賞本番の時に着ていた白黒のカンカンドレスに赤みを足して鮮やかになった感じのドレス衣装を纏った3人の先輩が並ぶ。
ファンファーレを想起させるイントロから、ナズナ先輩の歌に繋がっていく。
凱旋門賞はフランスのレースなので、当日のウイニングライブもフランス語で歌われていたが、今回は日本語歌詞バージョンで歌われた。
やはり偉業を成し遂げたナズナ先輩の人気は凄まじく、会場の10万以上のお客さんの大歓声が巻き起こる。
この後に歌うジュニア級の娘達ってめちゃめちゃプレッシャーじゃないかな…? 私だったら
3曲目はジュニア級選抜によるウィッシュブリンガーちゃんセンターによる『爆熱マイソウル』という熱血ソング。
「カモンカモンカモンカモンカモン! バーニ〜ングソ〜ウル!」
ウィッシュちゃんのイメージから、もっとスラっとした透明感のある歌が披露されると思いきや、思わず拳を握りしめてしまうような「熱い」楽曲が来るのは、良い意味で予想外だった。
そしてウィッシュちゃんの歌声は、ナズナ先輩で一色だったステージの歓声を力任せに塗り替えてしまう。
ウィッシュちゃんは走りも凄いけど、ステージ度胸も凄いなぁ。醸し出すオーラに気迫が宿っている。後輩ながら尊敬の念すら抱いてしまう。今年のトリプルティアラなんか、きっと余裕で獲ってしまいそうだね……。
そしていよいよ私達クラッシック級の『めにしゅき♡ラッシュっしゅ!』の出番となる。
ステージ前は「ジュニア級の娘達で客席が良い具合に温まっているから楽勝でしょ」なんて声もあったが、ナズナ先輩の『ラーク』に見劣りしなかったウィッシュちゃんの熱唱の後で、難易度が爆上げされた気分だ。
「呑まれてんじゃないわよ! 後輩に情けないステージ見せるつもり?!」
いきなり後ろから叱咤された。ヘリアンさんだ。
ヘリアンさんはどうにも凶暴で怖いイメージがあるけど、今なら分かる。カルチャー先輩と同じで『常に真剣に向き合っている』だけなんだよね……。
だから今みたいに『ステージを成功させたい』という同じ気持ちでいる時はとても心強い仲間になる。うん、呆けている場合じゃないよね。
この後にはブラックリリィ先輩らシニア級ウマ娘による『
私達のステージ衣装はバックダンサーも含めて全員が同じピンクのフリフリドレス。とても可愛いんだけど、普段使いはとても出来なさそうなやつ。
フォーゲルやハピネスちゃんを応援するお客さんの声に混じって、私を応援してくれている声も聞こえる。ここでしっかりしないと、またたくさんの人達を悲しませる事になる。うん、頑張るぞ!
「わたしの全力、受け止めて!」
『めにしゅき』にはイントロが無い。いきなり歌唱から入る。そこから歌… というか台詞と振り付けはセンターのみになる。責任重大だ。
声は出せた。振り付けも問題無く出来た。次にボーカルとなるハピネスちゃんには繋げたよ。
ハピネスちゃんからヴァーンズインさん、そしてフォーゲルのパートを経て、再び私のソロパートになる。
「例え〜ばタイムループなんか〜しちゃったって〜運命でっ選んじゃうのはっ、キミ〜!」
見ていますか新代トレーナー? 貴方の導きのおかげで私は今ここにいます。1年前はステージの『その他』の一人に過ぎなかったモブウマ娘が、10万人を前にして特別な歌のセンターを勤めているんですよ……。
もし私が本当にタイムループしたり死んじゃって転生したとしても、私はまた貴方から、何度でも、指導を受けたいです!
そしてコレが私、コスモスキュートがこの1年の集大成として、大好きな貴方に胸を張って言える、贈る言葉です。聞いてください……。
「こんなに大きくなりました!」
…ずぅっとよろしくね……。
『咲き誇れ