咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

11 / 98
うわ〜、素敵… 最高に嬉しいです!

 今日も授業が終わってトレーニングの時間となった。事務所には林トレーナーだけがいて、ババヤーガ先輩のデータとかスケジュールだろうか? 何やらパソコンに打ち込みをしていた。

 

「あらお疲れ様コスモス。貴女にプレゼントが届いているわよ」

 

 プレゼント…? 何じゃろか? と思いながら机の上の荷物を見る。URA(協会)から私宛て、一抱え程の大きさがある。

 

「あ! これってまさか…」

 

「そう、貴女の勝負服よ。新代君が来る前に早めにサイズチェックを済ませておきなさいね」

 

 おおおおおおお! 遂に、遂に憧れの勝負服! 私専用の勝負服がやって来た! 確かに近々来るだろうとは予想していたけど、それでもこんなに気分が盛り上がる物だったのか! 感動っ!!

 

 ☆

 

 『勝負服』、それはウマ娘レースにおいて、最高峰GⅠレース出走の際にのみ着用が許される特別な服。それを身に纏う事でウマ娘は己の最大のパフォーマンスを引き出すことが出来る、まさに一世一代の『勝負』に賭ける時に着る服なのだ。

 その意匠はガーリー、ゴスロリ、ボーイッシュ、パンキッシュ、和装等々、極めて多岐に渡り、2つとして同じデザインは存在しない。それらはウマ娘の魂の具現化にして唯一無二の存在証明に他ならない。

 

 ちなみにデザインは自分で草案を提出して希望を出す事も出来るし、デザイナーさんに丸ごと任せても構わない。私の場合はトレセン学園入学時に「動きやすさ重視で東洋(オリエンタル)っぽい感じ」という要望書と同時に下っ手くそな私のイメージイラストを付けて送っていた。

 

 やがて生徒がメイクデビューを果たし、トゥインクルシリーズでの初勝利を上げたタイミングで、協会から「初勝利おめでとう。頑張ってGⅠを目指して下さい」という想いを込めて、その選手に向けて『勝負服』が送られるのが通例だ。

 

 包みから取り出した私だけの勝負服は、中華風のカンフー着と和風な着物のハイブリッドの白い上着に、学園制服によく似たデザインの紺色のミニスカートだ。私の髪色が黒鹿毛なので、アニメやゲームでよく見る『女格闘家』的なオリエンタルっぽさは完璧に表せていた。

 

 私みたいに絵心が無くても、イメージを伝えるだけでこれほど完成度の高い衣装を作ってくれるのだから、デザイナーさん凄い! マジで神! ってなる。

 確かにこれ着て走ったらめちゃくちゃテンション上がって100%以上の力を出せると思うわ。

 

「うわ〜、素敵… 最高に嬉しいです!」

 

 私は嬉しさのあまり、勝負服を抱きしめて1人で踊りだしてしまった。

 

「ほら、とりあえず試着してサイズを確認しなさい。レース中に服が突っ張ったりダブついたりしたら、走りに集中出来ないわよ?」

 

 林トレーナーからの指令で私はそそくさと更衣室に向かう。扉を閉める間際、顔を出して聞いてみた。

 

「今日のトレーニング、『これ』着てやったら駄目ですかねぇ?」

 

「う〜ん、それは新代君と相談して。私は何とも言えないわ」

 

 まぁそりゃそうか。新代トレーナー早く来ないかなぁ…?

 

 ☆

 

「いや、ダメだろ普通に…」

 

 後からやって来た新代トレーナーに「今日は勝負服を着て練習したい」と申し入れたら秒で却下された。辛すぎるんだが?

 

「もぉ、新代トレーナーは乙女心が分かってないにゃー。せっかくおニューの勝負服が届いたのに、着させてあげないなんてセクハラだよセクハラ」

 

 「え!? セクハラ? 何で…?」

 

 新代トレーナーとほぼ同時にやって来たババヤーガ先輩が私の代わりに抗議してくれた。

 まぁセクハラとまでは私も思わないけど、大人の男性として女の子のこれくらいの我儘は許す度量が欲しいと思うの。

 

「でも実際に走ってみないと服の具合も分からないんじゃない? ちょっとだけなら許してあげたら?」

 

 林トレーナーも参戦して私に味方してくれた。今は山西トレーナーも居ないから、新代トレーナーは孤立無援で女子3人の攻撃を受ける形になった。さっさと諦めて許可を出すのだ。ウリウリ。

 

「…まぁそこまで言うなら軽く外周を走ってきて良いよ。その代わりくれぐれも汚したり破いたりするなよ?」

 

 やったぁっ! 新代トレーナー優しくて大好き!

 

「はいっ! じゃあちょっと走ってきます!」

 

 私は後ろも見ずに部屋の外へと飛び出して行った。

 

 ☆

 

「へえ〜、そんな事があったんだぁ? 私もコスモスちゃんの勝負服可愛いと思うよ」

 

 就寝間際、入浴のためにようやく服を着替えた際に、トッカン先輩が私の勝負服を褒めてくれた。

 結局外周回りの後もずっと勝負服を着続けて練習していた。そして調子に乗って着替えもせずに寮まで帰ってきた訳だ。

 練習中も通り掛かった友達数人から勝負服を褒めてもらって、今日は終始ご機嫌な1日だった。

 

 ヤオビクニ寮長は「まぁ年に何人かは寮まで着て帰ってくる娘がいるよね…」と生暖かい目で言ってくれたよ……。

 

「ありがとうございます! トッカン先輩やカルチャー先輩の勝負服を見ていて、ずっと羨ましくて仕方なかったんですよねぇ。だからもう大感動で!」

 

「分かる。勝負服を貰えた事で『もっと頑張らなくちゃ』って思うよね」

 

「ですです!」

 

 やはりこの感覚はウマ娘なら共通の物なのだろう。普通の女子だって新しい服を買ったら気分が上がるのに、『最高の』レースを走るために『最高の』衣装で臨む、まだ見ぬGⅠレースの光景を脳裏に描いて、心が昂らないウマ娘なんているはずがない。

 

 ちなみにトッカン先輩の勝負服は、赤と黒を基調にしたメイド服っぽいシックな作りになっていて、それがまた小柄でスリムなトッカン先輩に実にベストマッチで、たまらなくキュートな『天使』を創り出している。

 

 この勝負服を着られるのは最短で4月の『桜花賞』。その為の第一歩として、週明けの『デイジー賞』の勝利は不可欠だ。

 

 逆にレースに負け続ければ、今後一生、日の当たる場所で勝負服を着ることは叶わない……。

 

 いやいや! 今からそんなネガティブな事でどうするコスモスキュート! 『絶対に勝つ! 誰にも譲らない!』この気持ちを強く持て! まずは来週のデイジー賞を必勝だ!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。