咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「ちなみにコスモスキュートさん、貴女はメジロのウマ娘をどれだけご存知ですか?」
メジロパラディンさんからは疑問の答えではなく、まさかの質問が返ってきた。困ったな、あまりたくさん知らないぞ…?
「ええっと… やはりティアラを目指す身としては、初のティアラ3冠という偉業を成し遂げた『メジロラモーヌ』さんや同じくティアラ2冠の『メジロドーベル』さん、他にも『メジロマックイーン』さんとか『メジロパーマー』さんとかですかね…」
とりあえず知っている名前を列挙する。パラディンさんに「ニワカね」とかバカにされたりするのかな…? と少しビクビクしていたら、パラディンさんは優しい笑顔のまま大きく頷いてくれた。
「ええ… いずれも押しも押されぬ偉大な先輩達ですわ。でも彼女達の時代は今から何十年も前の話です。ではここ最近のメジロ家のウマ娘はどなたをご存じですか?」
次の質問、これは普通に困る。分からない。
「え…? あれ…? えーっと… ごめんなさい… ちょっと分からないです…」
内心「そんな事も知らないの?!」と怒られるかな? と思いながらも正直に白状する。ここで知ったかぶりしても良いことは無いはずだ。
「ええ、それが正解です。メジロのウマ娘が最後に獲った平地の重賞はメジロマイヤーお姉様のGⅢ、小倉大賞典で、それだって私の生まれた頃の話です…」
お、正解だった… わざわざ『平地』って言葉を使ったのは、ウマ娘には芝やダートの平坦なコースのレースとは別に、陸上のハードル競走に似た『障害走』というレースもあって、メジロ家のウマ娘は障害走カテゴリでも好成績を残してきているからだろう。
「つまり向こう十数年間に限っては、大きな結果を出せているメジロのウマ娘はいないのです。恥ずかしながらGⅠレースは疎か、GⅡやGⅢですら満足に勝てていないのが今のメジロの実情です…」
へぇ、メジロ家のウマ娘ってGⅠ常連のイメージあったけど、最近はずいぶん勝ててないんだなぁ。ていうかまさかのメジロクイズ展開は想定外だったよ……。
「それに偶然だとは思いたいのですが、メジロアサマお
母親がウマ娘でも産まれてくる娘がウマ娘とは限らない。私の母親はウマ娘だが、徳島のランニングクラブにいた頃は、ヒトの母親に送迎されているウマ娘もそれなりにいた。
この辺りはとても不思議で、ハッキリとしたメカニズムは未だに解明されていないらしい。専門家にも分からない事が私みたいな一介の学生に分かる訳はないので、かなり前に考える事を止めた記憶がある。
「そしてここからが本題ですが、お祖母様亡きメジロ本家は『これも時代の
なんですって?! 天下のメジロ家がレースから手を引く…? これは一大事なのでは…?
「奇しくもその時に次のデビューを控えていたのが
「だから『最後の希望』なんですねぇ… え…? あ、じゃあもしメジロパラディンさんが結果を出せなかったら…?」
「ええ、メジロのウマ娘は今後トゥインクルシリーズを走る事は無くなります…」
えええええっ?! これってそんなサラッと口にして良い事なの? いやまぁ質問したのは私からなんだけどさ……。
「私の次に生まれたメジロのウマ娘は、6歳下のレオちゃん… メジロレオンなので、私が頑張らないとレオちゃんはメジロの施設や人員を使える環境すら取り上げられて、町のクラブで細々と走る羽目になってしまうでしょう…」
そうか、『家の恥』とか『業界では有名』とかそういう事だったのか… あまり楽しい話ではないはずなのに、ずっと笑顔で答えてくれたパラディンさんに凄く申し訳なくなる。
「ごめんなさい、何だかメジロ家に対してずいぶん違ったイメージを持っていました…」
不意に頭を下げた私にパラディンさんが慌てる。
「いえいえ、気にしないで下さい。別にコスモスキュートさんが悪い訳では無いのですから。全ては
明るくニッコリと笑顔でガッツポーズを見せてくれるパラディンさん。この小さな体にどれだけ大きなプレッシャーを抱えて生きているのかな? それにもし今後パラディンさんと対決する場面だと色々とやりにくいなぁ……。
「もしかして今後私との勝負で『手を抜こう』とか思っていらっしゃる? 腐ってもメジロのウマ娘、そんな侮辱は絶対に許しませんよ…?」
あはぁ、見透かされている。その時のパラディンさんの目は本気で怒りと
現に小さな物でもレースで八百長が発覚したらトレセン学園では厳しく処分される。学園内の模擬レースでも八百長は停学だし、もし公式レースで不正をやらかせば学園退学の上にレース界からは永久に追放される。
「あ… ごめんなさい… 別にそんなつもりじゃ…」
しどろもどろに答える私の様子は、パラディンさんの予想が的中した事を意味するのだが、パラディンさんは直後また優しい笑顔に戻ってくれた。
「うふふ、ちょっと驚かそうと思っただけなので、あまり真に受けないで下さいな。次に闘う時は家の事とか一切気にせずに、全力の1対1で競い合いましょう」
パラディンさんは笑顔のまま右手を差し出してくれた。これは握手を求めているのよね…?
「一足先に『桜花賞』に行ってまいります。私達の次の闘いの舞台は、願わくば『オークス』で…」
オークス… ティアラGⅠロードの2戦目。そうだ、私もノンビリしていられない。次の目標に向けて気合を入れ直さなければ……。
私は両手でパラディンさんの右手を掴み、そのキレイな黒い瞳を見つめ返す。
「はい! メジロパラディンさんに必ず追いつくので待ってて下さい! 桜花賞応援してます! でも次は負けませんから!」
パラディンさんの笑顔が深くなる。幸せそうで本当に可愛らしい。
「どうぞ『パラディン』とお呼び下さいまし、コスモスキュートさん。私のお友達に… いえ
「私もどうぞ『コスモス』と呼んで下さい。私なんかで良ければ、謹んで『ライバル』やらせてもらいます!」
廊下中に私の上ずった声が響き渡ったが、不思議と恥ずかしいとは全然思わなかった……。