咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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だって私にも予定があるんだもん!

「へぇ、メジロパラディンとそんな事が…」

 

 メジロパラディンさんと無事に(?)ライバル関係となった私は、新代トレーナーと合流していつも利用している西船橋とは逆の船橋法典駅の近くで、残念会を兼ねたミーティングを行っていた。

 なぜいつもとは違う場所に来ているかと言うと、少し長くなるが聞いて欲しい。

 

 新代トレーナーは、レース後に大泣きしていた私が変わらず落ち込んでいると考えて、「ホワイトデーだから甘い物でも食べに行こうか?」と言ってくれたのだ。

 

 ちなみに今年のバレンタインデーに、私は新代トレーナーに何もしていない。初勝利からデイジー賞の準備が忙しくて、トレーナーはおろか友達に配る『友チョコ』ですら気が回らなかった。

 

 クラスメイトのブロークンギアから「ほいコスモス、友チョコ」と可愛く包まれたチョコレートを渡されるまで、全くバレンタインデーを意識していなかった。我ながら女子失格だと思う。

 

 女子校であるトレセン学園でのバレンタインデーは、いわゆる『本命チョコ』を渡す機会はまず無い。基本的に男性との接点がトレーナーさんや学園の教師しか無いので、彼らにチョコレートを渡すにしても『普段お世話になっているお礼の義理チョコ』が常であり、本気でトレーナーや先生に恋しているパターンは多くない。

 

 だからといって、そういう娘は決して『ゼロ』にはならない。例えばチームのオオエドカルチャー先輩みたいに、(他人の)トレーナー相手にガチ恋しているパターンも稀にあるし、ウマ娘(おんな)同士で本気で惚れてしまう場合も稀にある。そう言えばカルチャー先輩って新代さんにチョコ渡したのかな…?

 

 話が逸れた。えっとつまり、私がチョコを渡していないのに、新代さんがホワイトデーをやってくれるという事になって、そこで近辺のスイーツ屋さんを調べてみると、いつもの西船橋よりは船橋法典の方に私好みのお店があった、という話なのだ。

 

 私はパラディンさんとお友達になれた事もあって、気分的にはもう惨敗の傷は引きずっていない。ちゃんと次に目を向けていると思う。

 ただ、バレンタインに何もしていないのに、ホワイトデーでお菓子を奢られるのは、なかなか気まずい物がある。近いうちに何かお返ししないといけないよなぁ……。

 

 ☆

 

「コスモスの切り替えが出来ているのなら、もう次の話をしても良いか?」

 

 新代トレーナーの言葉に私は力強く頷いた。うん、私は大丈夫です。

 

「コスモスが次に目指すべきは、当然桜花賞の次のオークスだと思う」

 

 ここでもう一度「ハイ」と頷く。その次の言葉も大体想像がつく。

 

「なので次のレースは5月頭の『スイートピーステークス』だ。オークスへの出走にはこのレースで優勝する必要がある…」

 

 オークスへのトライアルレースは2つある。1つは『スイートピーステークス』、そしてもう1つが……。

 

「同じオークストライアルの『フローラステークス』とどちらにするか迷ったが、フローラステークスは2着までオークスに進めるとは言え、こちらはGⅡの重賞だ。それだけ強い娘が出てくる可能性が高く、コスモスはファン数的に出走審査で足切りされる可能性がある。それにフローラステークスで2着以内に入るより、準重賞のスイートピーステークスで優勝する方が難易度が低いと考えた」

 

 出られるかどうか怪しいグレードの高いレースで2着以内か、グレードの低いレースで優勝か? 難しい判断だが、トレーナーがスイートピーステークスが最適だと判断したのなら、私もそれに従うだけだ。

 新代トレーナーはいつも私の第一を考えて動いてくれる。エリートだらけのトレセン学園で、今日まで2勝もしてこれたのは、間違いなく新代さんのおかげなのだから。

 

 ☆

 

 翌日の学園では春のクラッシック級GⅠの話題で盛り上がっていた。クラッシックGⅠとしては桜花賞がそのトップバッターであり、昨日はそのトライアルであるアネモネステークスとフィリーズレビューの2つのレースがあった。先週のチューリップ賞と合わせて、これで桜花賞の優先出走者が全員決定した事になる。

 

 アネモネステークスのパラディンさんに加えて、チューリップ賞のヴァーンズィンさん、フィリーズレビューのジーニアスセイントさん等といった実力者が出揃った訳だ。私が走れなかった無念はパラディンさんに託すとしよう。

 

 もちろんクラッシック級GⅠはティアラ路線だけではない。もう1つ、というかむしろこちらが世間的にはメイン扱いされているクラッシック路線も、緒戦の皐月賞が桜花賞の翌週に控えているのだ。

 

 その皐月賞も強豪が次々と名乗りを上げている。うちのクラスの学級委員長であるアバロンヒルを始め、弥生賞で私を戦慄させたエバシブさん、そして……。

 

「コスモス、桜花賞に出ないのならスケジュールに空きはあるだろ? ドロワの約束、守ってくれるよな?」

 

 そうだった… 私の最も近い位置にフォーゲルフライという、昨年のジュニア級最優秀ウマ娘様がいたんだった……。

 フォーゲルももちろん皐月賞の優勝候補の一角で… と、そんな話はどうでも良くて、私は彼女から年度末のリーニュ・ドロワット(卒業ダンスパーティー)のデート(パートナー)として誘われていたのだった。

 

 一応「桜花賞を走るから」という理由で、一度はお断りを入れていたのだけれど、この度桜花賞への出走が叶わなくなった為に、今日から4月いっぱいくらいまで、図らずも空き時間ができてしまったのだ。

 

 もちろん次のスイートピーステークスに向けてガッツリトレーニングしなくてはならないのだが、1ヶ月半も先のオープンレースで今からピリピリするのも変な話だ。

 

「あ、えと… その件は丁重にお断りを…」

 

 だからといって悠長に、ウイニングライブとも関係ないダンスの勉強に費やす手間と時間は無いのだ。

 

「ううん?!」

 

 不機嫌そうに眉をしかめて私に迫ってくるフォーゲル、距離が近いよ……。

 

「だ… だって私にも予定があるんだもん! 何でもフォーゲルに合わせてられないよ…」

 

 言ってやった。そうだ、私だって自分の事でいっぱいいっぱいなのだ。フォーゲルは友達とは言え、己を犠牲にしてまで尽くすのは、やはりおかしな話だ。

 

「わ、私だって一度しかチャンスの無い皐月賞が近いのに、やりたくもないダンスの練習をしているんだぞ!」

 

 それはフォーゲルがいつも寝てばかりで、真面目に授業を受けてないのが悪いんじゃん、自業自得だよ。本来無関係の私を巻き込まないでよ……。

 

「よ、よし分かった。それなら私とコスモスで今週末に模擬レースをしよう。私が勝ったら《デート》になってもらうぞ!」

 

 えっ? 何で…?! ウソでしょ……。 

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