咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

43 / 98
その『皆さん』の中に私も入っているんですかね…?

「ホラホラ、せっかく山西のオッチャンがチケットを用意してくれたんだから、今日は思いっきり遊ぼうぜぇ!」

 

 オオエドカルチャー先輩、ババヤーガ先輩、トッカンクイーン先輩、更にバー先輩の担当トレーナーである林 晴美さん、最後に私という女5人でやって来たのは、トレセン学園から車で1時間程の場所にある『バブリーランド』と呼ばれる大型レジャー施設だ。

 

 学園生徒の間では「どんなスランプでも帰る頃には絶好調になれる」との伝説が語られている場所で、大型かつ多量の室内温水プールをメインとした、南国風の雰囲気が売りになっている施設であり、当然ながら我々は全員が水着に着替えている。

 

 もちろん学園指定のモッサいスクール水着ではなく、新しく買った可愛い水着だ。バー先輩の指令で「今回は全員ビキニにすること」と言い渡されて「何故?」と思いつつもトッカン先輩と水着を買いに行った。

 

 私はあまりスリムではないので、なるべく体型の出ないようにフリルの多めに付いたスカート付きの、キレイよりもカワイイ系でオレンジ色の水着を着ている。

 

 トッカン先輩は、先輩の好きな向日葵(ひまわり)の柄がたくさん付いた飾り気のない、シンプルで可愛らしい黄色い水着。

 

 カルチャー先輩は比較的露出の高い競泳用のレディースビキニだ。カルチャー先輩らしいストイックなデザインだが、色がピンク色でそのミスマッチ感が凄く可愛いと思う。

 

 バー先輩は真っ赤で私同様にフリフリがたくさん付いている。布地の面積は私より若干少ないかなぁ? という感じ。

 

 ついでに林トレーナーは柄無し青色の競泳用ワンピース。「もう水着を着てはしゃげる歳じゃないのよ」とビキニは拒否していた。今日は引率者として帯同してもらっている。

 

「今更だけど、本当に私もご一緒しちゃって良かったんですか…? チーム違うのに…」

 

 おずおずとトッカン先輩が林トレーナーに問い掛ける。そう、トッカンクイーン先輩は私達チーム〈ミザール〉の所属ではない。

 

「まぁチケットは余ってたし、うちの山西(チーフ)と貴女のトレーナーの秋月さんはとても仲良しだから、私達は全然構わないのよ。ねぇ?」

 

 林さんは「ねぇ?」で、視線を私達ミザール所属の3人に投げてくる。

 

 私はルームメイトだし、尊敬する大先輩だし、何よりトッカン先輩大好きだから、この場にトッカン先輩が居てくれるのはとても嬉しい。

 

 バー先輩もニヤニヤしながら満足気に頷いているし、カルチャー先輩は興味なさそうに明後日の方向を向いている。

 

「うちの娘達も問題無いってさ。それにまだ本格的に走れる程には怪我が回復していないんでしょ? リフレッシュを兼ねてプールで遊ぶくらいならOKって言われてるから、今日はチームとか気にせずに楽しんでいらっしゃい」

 

「…は、はい。ありがとうございます! チーム〈ミザール〉の皆さん、改めて今日はよろしくお願いします!」

 

 私たちに向けて頭を下げるトッカン先輩。水着の子供っぽ… もとい可愛らしいデザインと相まって、その仕草がとても可憐だ。

 

「んじゃまずは大型滑り台行こうぜ、滑り台〜」

 

「ちょっとバー、勝手に決めないで… って1人で先に行かないでよ!」

 

 マイペースのバー先輩は1人でひょこひょことウォータースライダーへと歩いて行ってしまい、見かねたカルチャー先輩がそれを追いかける。

 

「…ふふっ、〈ミザール〉って、トレーナーさんも含めて皆さん個性的で面白い人達ばかりだよね。ホント楽しそう…」

 

 離れて行くバー先輩とカルチャー先輩を目で追いながら、トッカン先輩がとても楽しそうに呟いている。

 

「えっと、その『皆さん』の中に私も入っているんですかね…?」

 

 ちょっと微妙な気持ちだ。トッカン先輩の中で『面白い人』枠に入れられていたなら少し悲しい。

 

 トッカン先輩は私の質問に答える事なく、「ウフフ」と笑ってカルチャー先輩達の後を追い始めた。

 

 ☆

 

 話は4日ほど前に遡る。スイートピーステークスで2着となった私、ヴィクトリアマイルで3着になったカルチャー先輩、さらにヴィクトリアマイルの前日に、オープン戦の六社ステークスを走ったが13着と大敗したバー先輩が揃ってトレーナー事務所で呆けていたのだ。

 

「今回は勝てると思ったんだけどにゃあ…」

 

 普段あまりレースの勝敗に拘らないバー先輩も、今回は勝算が高かったらしいのだが、その目論見が外れて珍しく元気がない。

 

 あと先輩達2人はレース直後だったので敗戦のショックが癒えていなかったのかも知れないが、私のレースは半月も前なので、私は単純に油断していただけだったりする。

 

 そんな光景がチーフトレーナーの山西さんに見つかってしまったのだ。

 

「なんでぇなんでぇ、揃いも揃って辛気臭え顔しやがって… レースに勝った負けたはいつもの事だろうに…」

 

 確かに勝った負けたはレースの常だ。でもやはり負けて良い気持ちのするウマ娘は居ない。

 パラディンさんやヴィブちゃんといった強敵(ライバル)との『熱い闘い』を経た爽快感や高揚感はあるが、それで負けた悔しさが消える訳では無いのだ。

 

 夏の合宿で猛特訓して、あの2人や他の強豪に勝てる実力を付けないとダメだよね……。

 

「全く、ちょっと待ってろ… 確か新聞屋に貰ったタダ券が…」

 

 山西チーフは自分の机の抽斗(ひきだし)をあちこち開け閉めして、やがて小さな封筒を見つけたらしい。

 

「おい林よ、お前土曜日の詰め番シフト変えてやるから、ガキ共連れてプール行って来い!」

 

 急に話を振られて「はぁっ?」と驚いている林トレーナーを尻目に、山西チーフはどこかに電話をかけ始めた。

 

「おう秋月か? お前んとこのトッカンクイーン1日貸せよ。遊びに連れてってやるから。おぅ、じゃそういう事で」

 

 なんというスピード展開。そしてなんというワンマンぶり。他の者の意見を一切聞かずに、週末のレジャーの予定を決めてしまった。特に秋月さんとは日時の連絡すら無かったみたいだけど大丈夫…?

 

「あの、山西チーフ… 私もそのプールって行ってもよろしいので…?」

 

 今週の土曜日出勤は林トレーナーの予定だった。それを放棄してプールに行って来い、は確かに急すぎる。

 

「あぁ。券は5人分あるから秋月んとこの担当も連れて行け。そいつの世話はコスモスがするだろ。(おまえ)は総監督兼コイツらが羽目を外さない様に見張るお目付け役な。男は居ねえ方が良いだろ、土曜日は俺が出てやっから心配すんな」

 

「はぁ… チーフがそれで良いならお言葉に甘えますが…」

 

 以上の流れでバブリーランド観光と相成った訳だ。

 

 でもなんだかんだで私達は豪華なプールを満喫して(カルチャー先輩ですら最後は笑顔だった)、とても楽しい1日を過ごした。それに何だか体も軽い。バブリーランドの伝説は本当だったのかな…?

 

 リフレッシュという名目で考えたら、これ以上無い成果があったと思う。山西チーフ、ありがとうございました!

 

 ☆

 

 さて、明日はいよいよティアラ2冠目であるオークス開催日だ。トッカン先輩と一緒にレース場デートする約束も取り付けた。ワクワクドキドキして眠れないかな? とか思っていたのに、レジャーの疲れかベッドに横になった途端に私は睡魔に負けていた……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。