咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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はい、先輩の言う通りですね…

「わぁ… 噂には聞いてたけど、今年のティアラの娘達は凄いねぇ…」

 

 トッカンクイーン先輩の呟きで我に返る。そうだ、いくら気持ちが盛り上がったとは言え、私に予定を合わせてくれた先輩を放って走って帰る訳にはいかないよね。

 

「は、はい。去年の今頃はカルチャー先輩が話題を独り占めしてましたからね」

 

 昨年の桜花賞、オークスのダブルティアラを勝ったカルチャー先輩。普通ならトゥインクルシリーズの最注目株なのだが、その翌週の日本ダービーのレース内容「1着から5着までの着差がわずか1m」という壮絶な事件があり、更にスズシロナズナさん昏倒からのプラチナアイリスさんへの一連のバッシング報道等の結果、カルチャー先輩のニュースバリューは完全に霞んでしまった。

 

 実力はあって結果も出しているのに、間が悪くて世間の話題に上らない。カルチャー先輩はそういった不幸な面があるし、多分本人も自覚してて気にしてるはず。

 

 今ターフでは、勝利したジーニアスセイントさんのインタビューが行われている。セイントさんってツインテにしているからガーリーなイメージがあるけど、受け答えはかなり落ち着いていて、わずか1年先輩なのに大人の雰囲気すら感じさせる。

 

 GⅠを勝ったインタビューでも興奮した様子は無く、淡々とファンやトレーナーさんへの感謝を語っていた。GⅠ初勝利なのにあの落ち着いた態度は凄いなぁと思う。私だったら絶対に浮かれて変な事を口走ると思うんだよね……。

 

 でも今は勝った人より負けた人達だ。メジロパラディンさんもヴィブリンディちゃんも早々に地下道に帰ってしまっている。彼女らの心情は推して察するに余りある。ハピネスシアターちゃんの時みたいに元気づけて上げられたら良いんだけど……。

 

「コスモスちゃん、お友達の所に行こうとしていたら、それは止めた方が良いと思うよ…」

 

 トッカン先輩が私の行動を先読みした様な発言に心底たまげてしまった。トッカン先輩ってよもやエスパー…?

 

「特にヴィブリンディさんの方は直前のトライアルでコスモスちゃんに送り出されてる訳だから、今コスモスちゃんに会ったら責任感じて心理的に潰れちゃうかも…」

 

 確かにハピネスちゃんの時はクラッシック路線のレースで、私は言わば『部外者』だった。だから無責任な訪問も明るく受け入れてもらえたのかも知れない。

 

 同じティアラ路線のライバルと目した人物が、敗戦直後の控室に現れる、という状況は、それが激励でも叱咤でも、何を言われるにしろ確かにイヤだよなぁ……。

 

「はい、先輩の言う通りですね… 軽くLANE送るだけにしておきます…」

 

 2人には「レース見てました、お疲れ様でした。GⅠの壁の高さをこの目と肌で実感して、自分も気合が入りました」的な事を書いて送っておいた。加えて「来週の日本ダービー、一緒に見に行きませんか?」とも。

 

 2人からは異口同音に「ありがとう、次も頑張る。ダービー参観は是非に」という返信が即座に届いた。ちなみにトッカン先輩は来週茨城にあるURAの保養所で温泉療養の予定だそうだ。

 よし、来週は同期のライバル3人でレース場デートだね!

 

 ☆

 

「レース以外で会うのは初めてだね。あたしはヴィブリンディ、改めてよろしくね!」

 

「メジロパラディンと申します。本日はよしなにお願いいたしますわ」

 

 ヴィブちゃんとパラディンさんの顔合わせを済ませて学園を出る。そうか、なんかもう『3人でお友達』みたいなイメージだったが、私と2人が繋がっていただけで、ヴィブちゃんとパラディンさんは「顔見知り」程度のお付き合いだったのよね。

 

 これを期にヴィブちゃんとパラディンさんも仲良しになってくれると嬉しい。あと2人だけで仲良くなって、私をハブったりしないでいてくれるともっと嬉しいかな。 

 

 何度も言うがトレセン学園と東京レース場は目と鼻の先。お昼ごはんを学園で済ませてから出発しても、時間的にメインレースには余裕で間に合う。

 

 問題は日本ダービー開催日の東京レース場の観客席は、まさにラッシュアワーの通勤電車の如く(すし)詰め状態になる、という事だ。いくら学園生徒優先席があると言っても、そこへの導線は保証されない。一度場を離れたら戻ってくるのは容易ではない。

 

「言うて生徒優先席も応援に来た学園生徒で溢れている訳なんだが…」

 

 ヴィブちゃんがボヤくが、これはもうしょうがない。ここから先は観客もサバイバルなのだ。

 

 ☆

 

「ハピネスシアターさんは(わたくし)のクラスメイトで…」

 

「フォーゲルフライとアバロンヒルは私のクラスメイト…」

 

「んでエバシブはあたしのクラスメイトって事で、今日は『推し』がバラバラな感じかな? まぁ誰が勝っても恨みっこ無しって事で」

 

 ヴィブちゃんのまとめでレースに臨む。まぁレースの勝敗で我々が争う訳では無いし、何より私はハピネスちゃんとも友達だし、エバシブさんは普通に推しなので、誰が勝っても嬉しいんだけどね。

 

 ☆

 

 レースは皐月賞の時と同様に、アバロンが前に出て全体を牽引する。本格的に『逃げ』る脚質に転向したのか、掛かってしまったのか、或いはアバロン(あのこ)の尊敬するスメラギレインボーさんの天皇賞・春での勝ちっぷりに影響されたのかはよく分からない。

 

 フォーゲルとハピネスちゃんは中段、エバシブさんは後方スタート。まぁ大体いつも通りの展開。

 

 第4コーナーから直線に入って隊列がバラける。まだアバロンが先頭だが、フォーゲルも加速しエバシブさんがスイッチを入れ上がってくる。

 

 残り200mでアバロン、フォーゲル、ハピネスちゃん、エバシブさんが並び、昨年のダービーを彷彿させる熱いデッドヒートが繰り広げられる。

 

 最初に脱落したのはアバロンだった。やはり2400mという長いレースに加え、『逃げ』る事で前半にスタミナを過分に使ってしまったのが原因だろう。

 

 残った3人で熾烈な抜き合いが展開される。現在トップからフォーゲル、ハピネスちゃん、エバシブさん。

 エバシブさんがハピネスちゃんを交わしフォーゲルに迫る。 

 エバシブさんの末脚は凄まじい物があるが、フォーゲルの末脚はエバシブさんを寄せ付けなかった。

 

 2人の距離が縮まらぬまま残り50m。ここでハピネスちゃんがまさかの追い上げでエバシブさんを抜き返した。

 ハピネスちゃんの怒涛の勢いはフォーゲルをも飲み込もうとするが、ハピネスちゃんがフォーゲルに追いつく0.2秒前にフォーゲルは一番に勝利線を跨いでいた。

 

 10万人の観客席は、その歓声で地震かと思えるほどに大きく震える。今年のダービーウマ娘の称号は、見事フォーゲルフライが勝ち取った。

 

 ラストの逆転劇を見せたハピネスちゃんはアタマ差の2着、更にクビ差でエバシブさんが3着になった。4着には青葉賞でハピネスちゃんに勝って優勝したタクミノツバサさん、アバロンは最終的に5着となってしまった。

 

 さすがに去年みたいな奇跡の戦いでは無かったけど、その熱量はスズシロナズナさんやブラックリリィさんらに勝るとも劣らない『熱い』レースだった。

 

 ダービー優勝、本当におめでとうフォーゲル!

 

 でも個人的MVPはハピネスちゃんだ。皐月賞(ぜんかい)とは打って変わった大激走で、終盤見せたフォーゲルやエバシブさんを凌ぐ驚異の末脚は、きっと後年『伝説』として語り継がれる事だろう。

 きっとあと20mあればフォーゲルを抜いて優勝していたと思う。う〜ん、惜しい! 

 

 他の皆さんもお疲れ様でした。とっても良いレースでしたよ!

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