咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
先週のフォーゲルフライのダービー優勝に続き、今週はローゼスストリームが安田記念の栄冠を手にした事で、私のクラスは熱狂状態になっていた。
ローゼスは学年こそ同じだが、彼女は本格化が早かった為にレースは私達より1年先輩、トッカンクイーン先輩やオオエドカルチャー先輩と同じシニア級だ。
去年のクラッシック級時代は今の私と同様ティアラ路線を走りティアラGⅠレースの全てに出走、そのうちの桜花賞では掲示板入りを果たしている。
その後は短距離路線に入り、年末のGⅡ『阪神カップ』を優勝、今年に入ってのGⅠ『高松宮記念』では3着、続く『ヴィクトリアマイル』では6着という結果だった。
そんな彼女がようやく掴んだGⅠ。クラス全員がその苦労を知っているからこそ共感できる喜びもある。
先週のフォーゲルのダービーの様な「期待に応えてくれた」という喜びとはまた一味違う、「今までよく頑張ったね」という祝福の空気が教室に満ちていた。
「先週のフォーゲルフライさんに続き、今回の安田記念でまたうちのクラスからGⅠ優勝者が出ました。おめでとうございますローゼスストリームさん、私も担任として鼻が高いです」
クラス担任の
トレーナーさんが担当ウマ娘の勝ちレースに依っては『ダービートレーナー』とか『グランプリトレーナー』などと呼ばれたりする様に、『ダービー教師』とか… 言わないよねさすがに…?
クラスの皆が拍手と共に口々にローゼスへの祝福を述べる。それを受けてローゼスが立ち上がり何度も礼をする。
「皆、ありがとう! クラスのシニア級も寂しくなっちゃったけど、だからこそ余計に『私が頑張らないと』と打ち込めました。秋にはもうひと花咲かせるつもりなので、また応援して下さい!」
秋のGⅠ、恐らくはスプリンターズステークスかマイルチャンピオンシップ。またはその両方への意気込みを述べるローゼス。
ちなみに現在我がクラスではシニア級がローゼスの他に2人いて、共にオープンクラスで重賞勝利は無し。
本当は同級には更に5人の娘がいたのだが、4人は未勝利で、1人は故障が原因で学園を去っている。
この様にトレセン学園では、年数を経る毎に友やライバルが減っていく。『勝負の世界』である以上、それは仕方の無い事ではあるのだけれども、夢破れて去って行ったり、残る者がそれを見送ったりは割と日常茶飯事だ。
何度も言うが、私も
競っていたライバル、仲良しだった友人、切磋琢磨したチームメイト、そして自分自身も… 誰がいつどの様な理由で学園を去る事になるのかは誰にも分からない。我ながらかなり残酷な世界に身を置いているとは思う……。
☆
トレセン学園では7月から夏休みになるので、期末テストは6月半ば、安田記念と宝塚記念の間に行われる。
トレセン学園と言えど生徒の本分は勉強であり、赤点追試などとなれば貴重なトレーニング時間、何より夏休みが浪費されてしまうので、一学期の期末テストは特にどの娘も真剣に勉学に取り組んでいる。
私はいつもの様にトレーニングの合間にフォーゲルに勉強を教えたり、メジロパラディンさんやヴィブリンディちゃんと図書室で勉強会をしたりとなかなか忙しい日々を送っていた。
そして地道な努力が実ったか、今回もフォーゲルを含めテストは無事に乗り切って、皆で仲良く夏休みに突入出来る運びとなった。いやぁ良かった良かった。
そして夏休みの前の一大イベントである、春レース最後のGⅠ『宝塚記念』。このレースと年末の『有馬記念』は、共に事前のファン投票によって出走者が決定される特別仕様だ。
今回の得票数1位は昨年の覇者で且つ、大阪杯も優勝して絶好調の『黒羽の風妖精』ブラックリリィ先輩。
2位が菊花賞と春天の覇者、ついでに今月から新生徒会長となった『皇道のステイヤー』スメラギレインボー先輩。
3位が今年のダービーウマ娘である、『おとぼけイケメン』もとい『眠れる白き矢』ご存知フォーゲルフライ。
4位が昨年の年度代表ウマ娘で、今年はヴィクトリアマイルを優勝している『鉄人』スズシロナズナ先輩。
更に皐月賞覇者のエバシブさん、秋天2連覇トウザイブレイカー元生徒会長、エリザベス女王杯覇者イーグルダイブ先輩、昨年のジュニア王者アバロンヒル、桜花賞覇者のヘリアンさん、神戸新聞杯覇者のフックトッシン先輩等々と続く。まぁグランプリに相応しい豪華メンバーだよねぇ。
もちろん私は出られないし、海外行きを表明しているオカメハチモク先輩やオオエドカルチャー先輩も出走を回避、フォーゲルやアバロン、ヘリアンさんとエバシブさんも休養を理由に出走を辞退している。
そのおかげと言えるのかどうか、宝塚記念のファン投票で空いた枠に、ハピネスシアターちゃんが繰り上がり出走出来る事になった。これも目出度い。
☆
さて本番の宝塚記念だが、直前になって得票1位のブラックリリィ先輩が病気により欠場すると
まさかの『病気』と聞いて、皆が最悪を予想して戦々恐々としていたが、翌日ヴィブちゃんから「ただの『ものもらい』で瞼が腫れただけだってエバシブが言ってた」と教えて貰った。
エバシブさんはリリィ先輩の妹かつ寮も同室という話だから、彼女からのブラックリリィ情報はこれ以上無く確実な物と思われる。
もしそうならひと安心だね。走りに影響でる病気じゃなくて良かったよ……。
ここでまた屈腱炎とか繋靭帯炎とかでスターが第一線を離れるのはレース界の大損失だ。私だってリリィ先輩とは一度くらいは競ってみたい。それまで元気でいて欲しいよね。
☆
という訳で一番人気を欠いた宝塚記念だったが、まさかの大事件が起きた。
最終直線で先頭に立ったのはすっかり『逃げ』戦術が定着したスメラギ会長。そこにトウザイ元会長とフックトッシン先輩が追撃し、すぐ後ろにナズナ先輩という形。
1800mを超えても驚異のスタミナを持つスメラギ会長の脚色は衰えず、先頭をキープしたまま仁川の坂を登り終え残り200m。後ろからナズナ先輩が追い込むが、更にその後ろ、大外から現れた栗毛の小さな小さな、ともすれば見逃してしまいそうな影が1つ……。
まさかの15番人気だったハピネスちゃんが、ダービーの時を彷彿とさせる鋭い末脚で追い上げ、前の2人を交わしただけでなく、なんとそのまま1着で勝利線を跨いでしまったのだ。
「きゃーっ!!!」
テレビの前で思わず大絶叫してしまう。
凄い凄い凄い凄い凄い! あの怪物ばかりを集めたメンバーの中で優勝しちゃうハピネスちゃんホント凄すぎる! 初のGⅠ勝利がまさかのシニア級を交えたグランプリでだなんて、見ていた私自身がまるで夢みたいで大興奮しちゃったよ!
ちなみに2着にはスメラギ会長、3着にナズナ先輩、4着にトウザイ元会長、5着はイーグル先輩という結果になった。皆さんお疲れ様でした。
☆
そして宝塚記念が終わり、今日は次レースに向けて渡仏するカルチャー先輩と山西チーフを、チームの皆でお見送りする為に空港にやって来た。
カルチャー先輩が搭乗を待つ間、皆でボンヤリと壁モニターのニュース放映を眺めていたのだが、その時『《速報》スズシロナズナ、フランスの凱旋門賞にチャレンジ!』との報道が始まり、緊急記者会見の模様が大画面に映し出された。
「ほわ〜、スズシロナズナさんも凱旋門賞挑戦かぁ、凄いなぁ…」
と呟いた私の横で、出発を控えたカルチャー先輩がとてもイヤそうな顔をしていたのが印象的だった。
カルチャー先輩の海外挑戦はスルー気味だったし、まぁマスコミの扱いの差って露骨だよね……。