咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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なんか男の人にモテそう…

 学園から10台程のバスが出発する。目指すは静岡は下田海岸に併設されている、我らトレセン学園の夏季合宿施設だ。

 トゥインクルシリーズ2年目のクラッシック級、並びに3年目以降のシニア級の生徒とトレーナーが原則として全員参加となる、数百人単位の大型イベント。

 

 当然クラッシック級の私も初めて参加する事になり、噂に伝え聞く夏合宿のハードさに恐怖を、トレーニング効果の覿面(てきめん)さに期待感を膨らませている。

 

「全員いるわね? 乗り遅れたら普通に置いていきますからね?」

 

 クラス委員長のアバロンヒルが点呼を取りながら冗談 (だよね?)を飛ばす。

 バス移動はクラス単位で乗り込んでいるので、騒然とするバス内もなんだか普段の休み時間の様なくつろぎを覚える。

 

 ブロークンギアは発車する前からお菓子を取り出して開けているし、ジュエルフラッシュは先週とは打って変わった明るい笑顔で彼女の友達と談笑している。

 ローゼスストリームは1人で文庫本を読んでいるし、フォーゲルフライはいつも通り爆睡している。

 

 みんな緊張してないのかな? あまりにも「いつも通り」なクラスメイトの面々を眺めながら、1人でビクビクドキドキしているのが莫迦らしくなってしまったよ……。

 

 ☆

 

「部屋に荷物置いて、ジャージに着替えて、入所式は今から30分後だからね? 庭に集合して、式が終わったら各々のトレーナーさんと合流して各自のトレーニングに入ってちょうだい、みんなOK?」

 

「「「「「は〜い」」」」」

 

 アバロンの指示でバスから降りて部屋に向かう。10人部屋くらいの大きなスペースが、基本的にチーム単位で割り振られる。

 

 5、6人でひと部屋みたいな割り振りになるので、参加人数の少ないチームは複数での合同使用となるのだが、私のチーム〈ミザール〉はオオエドカルチャー先輩が海外レース出走の為に今回の合宿には不参加だ。

 

 従ってミザールからの参加は私とババヤーガ先輩のみとなり、別チームとの相部屋になるのだが……。

 

「コスモスちゃん、合宿でも一緒だね。9月までよろしくね」

 

 相部屋となったチームはトッカンクイーン先輩の所属するチーム〈アルカイド〉。勝手知ったるトッカン先輩なら互いに気も遣わなくて済むし、私としてはとても助かる。そして…?

 

「…………」

 

 トッカン先輩の後ろでモジモジしている娘が1人、多分初めましてだよね…?

 

「あ、この娘はうちのチームのベクタースキャンちゃん、ちょっと人見知りだけど良い子だよ。コスモスちゃんと同期だから仲良くしてくれると嬉しいな」

 

 トッカン先輩に紹介されて彼女、ベクタースキャンさんがおずおずと頭を下げる。確かアルカイドさんにはプレオープンの娘が1人所属していたはずだから、その娘がベクタースキャンさんなのだろう。

 

「初めましてコスモスキュートです。トッカン先輩のルームメイトやらせてもらってます」

 

「うぃ〜す、ババヤーガだよ〜、よろしくね〜」

 

「べ… ベクタースキャンです… よ、よろしくです…」

 

 私達ミザール組2人の挨拶に、はにかんで会釈するベクタースキャンさん。トッカン先輩とは似て非なるベクトルだけど、可愛らしい人だなぁ。

 

 私と同期という事だが、これまでレースで見かけた事が無いので、恐らく(ダート)路線と思われる。何にせよお友達が増えるのは良い事だ。

 

「スキャンちゃんは慣れたら明るい娘なんだけどね…」

 

 つまり『慣れる』までが大変という事なのね、私もあまり社交性の強いタイプでは無いので、接し方に悩むなぁ……。

 

「とりあえず『アルカイド』と『ミザール』さんは、今日は合同で練習するらしいから、後でまた合流しましょう」

 

 トッカン先輩が仕切ってくれるおかげで、私もバー先輩もリラックス出来ている。このまま班長はトッカン先輩で決まりで良いよね。

 

 ☆

 

 浜辺で待っていたのは私達それぞれのトレーナーさん達。お馴染みの新代トレーナーとバー先輩の担当である林トレーナー、トッカン先輩の担当である巨漢の秋月トレーナーの隣に初対面の若い女性トレーナーがいた。

 

 一見大学生くらいに若く見える。綺麗な黒髪をポニーテールにまとめた、アイドルみたいにとても可愛らしい女性で、新代さん達と楽しそうに談笑している。

 恐らくこの人がベクタースキャンさんのトレーナーさんなのだろう。

 

「チーム〈ミザール〉の生徒さん達は初めまして。私は鈴宮(すずみや) 直美(なおみ)、ベクタースキャンのトレーナーやってます」

 

 鈴宮トレーナーに「よろしくお願いします」と挨拶を返し、新代トレーナーの元へ。

 

「初日だしコスモスとスキャンは初めての合宿だから、ここの海に慣れるつもりで砂浜ランニングと後半は遠泳、それが今日の練習な」

 

「了解です。あの… 鈴宮トレーナーって可愛らしい人ですね。なんか男の人にモテそう…」

 

 別に鈴宮トレーナーの男性関係とかはどうでもいいのだが、新代トレーナーに色目を使われたりしたら色々と面倒な事になる。なのでちょっと牽制球を投げてみた。

 

「そうだなぁ、あれでもう少し落ち着いてくれたらなぁ、とは思うよ。割と粗忽(おっちょこちょい)でガチャガチャした娘だから…」

 

 あぁ、そっか。トレーナー同士は前から顔見知りなのね。まぁミザールとアルカイドの関係を考えたらさもありなんだわ。

 それよりも新代トレーナーは『落ち着いた感じの女性』が好きなのね… これは覚えておこう。

 

「集合〜。とりあえず林のいる端っこまで行って帰ってくること。大体1600ってとこかな? レースじゃないから飛ばさなくても良いぞ」

 

 秋月トレーナーの号令で4人全員が砂浜に一列に並ぶ。林トレーナーはいつの間にかビーチバイクで折り返し地点に移動していたらしい。

 

「ではよーいっ! スタート!」

 

 鈴宮トレーナーの合図で4人が一斉に駆け出した。

 

 さぁ、夏合宿の始まりだ。

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