咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
トゥインクルシリーズのレースの後にはライブが開かれて、私達は応援してくれたお客さんへの感謝を込めて歌と踊りを披露する。
言わずと知れた『ウイニングライブ』。そしてトレセン学園の生徒達は新馬戦〜GⅡまでの全てのレースのウイニングライブで歌われる「
そしてそれ以外のレース、すなわち『GⅠ』用の歌とダンスはまた新たに覚える必要がある。
とは言えほとんどのウマ娘は、自分が走るレースカテゴリーに限らず、GⅠの楽曲は入学前から歌詞を見ずとも歌える程度には覚えている。
これはトレーニングの一環というよりも、「好きなアイドルの真似をして」的な意味合いが強い。
問題はダンスの方で、順位によって立ち位置の変わるウマ娘のレースでは、センターの踊りだけ覚えていても役には立たない。
バックダンサーにしても順位で踊りの内容がガラリと変わってくる歌も少なくない。
という訳で、トレセン学園にはGⅠ用の歌と踊りの特別授業が、楽曲ごとに個別に存在するのだ。
通常の
一応今回の私の様に『該当のGⅠレースの優先出走権』がある者は優先的に授業を受けられる仕組みにはなっており、その上で余った枠があるならば、(例え出走資格を有していなくても)有志が授業を受けられる、という形になっている。
2時間の授業で、ひたすら当該の楽曲を掛け続けポジションを入れ替えながらセンターやバックダンサーの踊りを体に叩き込んでいく。
という訳で、久し振りに一同に会したメジロパラディンさんやヴィブリンディちゃんらと楽しく… いやかなりスパルタにティアラGⅠの専用楽曲である『彩 Phantasia』を練習してきた。
秋華賞本番まであと1ヶ月、走りを極めるのはもちろん、ライブの準備にも気を配らなければならない。気の抜けない1ヶ月になるね……。
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9月も半ばを過ぎ、吹く風が少し涼しく感じられる頃になると、トレセン学園は新たな祭りに向けて全体的に高揚感が増してくる。
祭りの1つはもちろん「秋のGⅠシリーズ」で、もう1つはトレセン学園のファン交流イベント「秋のファン感謝祭」、通称『聖蹄祭』と呼ばれる文化祭だ。
春のファン感謝祭と同様、クラス単位で出し物を決めるのだが、さすがに今回ばかりはGⅠレースが間近に迫っているので私の参加は不可能だ。
これは私だけでは無く、菊花賞を控えたフォーゲルフライやアバロンヒルも同様で、他にも『スプリンターズステークス』に出走予定のローゼスストリームを始めとするシニア級のクラスメイトも文化祭への参加は辞退している。
10月の『秋華賞』に向けて走りのトレーニングとライブのレッスンとで多忙を極める私は、聖蹄祭当日まで自分のクラスの出し物すら知らずに過ごしてしまう事になる……。
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「へぇ、コスモスのクラスってメイド喫茶なんだぁ。あたしのクラスはレジェンド級のウマ娘をデータ化して、同じレースで競わせる『レースシミュレーションゲーム』ってのやってるよ」
そして『聖蹄祭』の初日、私はヴィブちゃんとイベント巡りをしていた。
前述の様に秋のGⅠを控えたウマ娘は『聖蹄祭』の準備からは解放されるのだが、逆に祭り本番になって「楽しんでこい」とトレーナーさんから放り出されて途方に暮れるウマ娘も少なからず発生する。何を隠そう私もその1人だ。
いつもなら私を強引に誘ってくるフォーゲルが、今日は彼女のファンである多くの後輩達に連れ去られてしまったので、身軽になった私はのんびり自主練でもしようかと思っていた所に、ヴィブちゃんが現れ私も拉致されてしまった、という次第だ。
ヴィブちゃんも『秋華賞』出るのだから遊ぶよりも一緒に自主練しないかと誘ったのだが、「ダメ、今日は遊ぶ日」と却下されてしまったのだった。何でそんな余裕あるの…?
とりあえずヴィブちゃんのクラスはゲームかぁ… 時間潰しにはなるかな…?
「へぇ、なんか楽しそうな催しだね。ちょっと興味あるかも…」
「おー、んじゃ行ってみる? 希望のウマ娘と走らせる距離を紙に書いて受付に出すと、それらを組み合わせて機械がレースを組み立ててくれるんだって。あたしも仕組みはよく分かんないけど、クラスにプログラミング得意な娘がいてさ!」
早速ヴィブちゃんのクラスへ行って、いま説明を受けたゲームで使う用の用紙を渡される。
受付の奥にあつらえたパソコンには、学園のトレーニング施設の中にあるヴァーチャルシミュレーション機材の『ウマレーター』とデータが直結されているそうで、歴代のレジェンドウマ娘達のスピードやらスタミナやらはもちろん、世界中のレース場の起伏や芝質等も選び放題という事だった。
余談だが『ウマレーター』は完全没入型のVR施設であり、『伝説の三女神』の元になったとされるウマ娘達から直接トレーニングしてもらえるモードを始めとして、ネットで繋がった海外のウマ娘との模擬レースや、オープンワールドRPGみたいなゲームも出来る優れものだ。
学園にも60基ほどの筐体があるにはあるのだが、2000人の生徒に対して60基は少なすぎて、常に順番待ちの状態になっている。
従って使用の予約を入れても使えるのは1ヶ月以上先であり、その時になって必要なトレーニングがまた変わってくる場合もあって、意外と柔軟な使用が難しい状況にあったりする。
新代トレーナーも「箱に入ったままでVRで走って本当に強くなれるのか?」と懐疑的であり、私のトレーニングにウマレーターが使われた事は無い。一度は体験してみたいんだけどなぁ……。
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私の提出したウマ娘は昔からのファンであるヴィルシーナさん。ヴィブちゃんの書いたウマ娘はサイレンススズカさんだった。どちらも『逃げ』でレースを引っ張る戦術を取るウマ娘で、もちろん史実で対戦した事は無い。
私達以外にも10人ほどの参加者のウマ娘も参戦し、『東京レース場、芝2000m』という『天皇賞 秋』の状況で争う事になり、プロジェクターにより教室の壁に映された大画面で、伝説クラスの12人のウマ娘が一斉にスタートした。
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「いやぁ〜、惜しかったねぇ。もうちょっとであたしのスズカさんが逃げ切ったのに…」
「あそこでオルフェーヴルさんが上がってくるとは予想してなかったよ。私のヴィルシーナさんはシンボリルドルフさんに前を塞がれちゃったからなぁ…」
私達2人の推しウマ娘は共に負けてしまったが、伝説が一同に会した凄いレースを見せてもらって大満足だった。ヴィブちゃんのクラス凄いよね。
因みにこの後、私のクラスのメイド喫茶にも顔を出したのだけども、ちょうどスタッフの居ない時間と客入りが増える時間が重なってしまったらしく、メイド長 (?)のブロークンギアに「コスモスも手伝って!」と拉致されてメイド姿で小一時間給仕させられる羽目になった。
ヴィブちゃんから「可愛いからコスモスのトレーナーさん呼んでこようか?」と言われたけど、恥ずかしいから断固お断りしましたよ。