咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
スズシロナズナ先輩が見事に凱旋門賞の優勝を果たした。タイムは2分35秒6と、ロンシャンレース場の不良馬場の記録としては、ほぼ平均値だったそうだ。
オオエドカルチャー先輩は残念ながら5着。しかし天下の凱旋門賞で入着出来ただけでも、私は大健闘だと思う。
ただライバル視しているスズシロナズナさんが勝っちゃったから、カルチャー先輩としてはかなり面白くないのでは無かろうか?
カルチャー先輩と共に渡仏している山西トレーナーの苦労が偲ばれるが、まぁあの2人ならケンカしつつも仲良く過ごせている物と思う。多分ね……。
「まさか本当にやり遂げるとは思わなかったな。カルチャーも頑張ったけど、スズシロナズナはまた奇跡を起こしたな!」
新代トレーナーも興奮が醒めないみたいで、声が大きくなっている。
確かにスズシロナズナ先輩って勝率はあまり高くないのだけれども、とにかく話題に事欠かない人なんだよね。
未勝利戦での転倒負傷からの復活、皐月賞での大逸走、1着から5着までが半馬身差の歴史的激戦だった日本ダービーと、そのウイニングライブでの昏倒と負傷の発表。
渡米して手術の後の復帰戦は、大親友オカメハチモク先輩との激闘を交えたマイルチャンピオンシップ。
続く有馬記念では当時無敵無敗、連勝街道爆進中で天下無双のツキバミさんに初めて土を付けた。
そしてマイルチャンピオンシップのリベンジマッチとなった、今年のヴィクトリアマイルでのオカメハチモク先輩との再戦、ハナ差の勝利。
トドメは今夜の凱旋門賞と、どれもドラマチックで極めてスター性に溢れている。
「私もなれますかね? あんなスターに…?」
確かにスズシロナズナ先輩は凄い。でもその『凄い』背中を眺めているだけでは強くなんてなれない。ツキバミ、スズシロナズナ、ブラックリリィ、オカメハチモク、スメラギレインボーと言った先輩方に加えて、フォーゲルフライやアバロンヒル、ハピネスシアターちゃんやメジロパラディンさんら同期の娘達と来年のシニア級からは一緒に競う事になる。
この事実だけでビビって呑まれそうになる。私なんかが挑んでもすぐに弾かれそうだもんね……。
「ああ、俺はコスモスを信じている。2人で頑張って行こうぜ」
新代トレーナーの言葉は単なる気休めかも知れない。でも新代さんは本気で私みたいな冴えないウマ娘を信じてくれている。
彼の期待に応えたい、彼の言葉なら『頑張ろう』という気になれる。私はもっと強くなれるはずだ… 我ながら単純だなぁ、とは思う……。
☆
レースの後はもちろんウイニングライブ。当然凱旋門賞もGⅠレースであるので特別な楽曲がある。それも年に一度、凱旋門賞の時のみに使用される貴重な楽曲だ。その名も「
現地では先ほどまで降っていた雨も上がり、僅かだが陽が差し始めている。まるでフランスの太陽もスズシロナズナ先輩の勝利を祝福しているかの様だ。
日本の物よりも少し広そうなステージに、先ほど歴史的な熱戦を繰り広げた20人のウマ娘が登場し、中継元の現場と遠く離れた日本のトレセン学園特設ステージの両方で大喝采が巻き起こる。
優勝したスズシロナズナ先輩、2着のルミエルシュプリームさん、3着のバレンタインホープさんはセンター用のライブ服を着ている。
ライブ服のデザインは、フランスらしいフリフリ多めのカンカンドレスなのだが、色合いが白と黒だけのシックなモノクロームデザインになっていてとてもオシャレだ。
先日のジャックルマロワ賞やムーラン・ド・ロンシャン賞のライブ服とはまた違った意匠なので、恐らく凱旋門賞専用のライブ服なのだと思う。さすが世界一のレース、豪華だよね。
5着のカルチャー先輩はバックダンサー用の衣装ではあるけれども、レースの格のせいか日本のセンター用ライブ服よりも上等に見える。
各員が配置についてステージと客席が一瞬真っ暗になる。その後曲が流れ始め、照明がステージ上のウマ娘達を煌々と照らし出す。
フランス歌劇に良く使われる曲調のイントロに力強い男女コーラスが被さり、20人のウマ娘によるクラッシックバレエの様なダンスが、華やかに舞台を彩っている。
「Devant un mur haut qui semble sans fin Ce frisson est la preuve de ma résolution(果てしなく続くような 高い壁を前にして この震えは 覚悟 証でしょう)
Je vise la porte étroite avec fierté, parmi tant de rêves Je tombe et je me relève, je ne me soucie pas d’être imprudent(誇り高く狭き門を目指し
フランスのレースなので当然フランス語で歌われる訳だが、浅学な私には当然聞き取れもしないし、意味もちんぷんかんぷんだ。まぁ日本語訳された歌詞は良く知っているので、その通りの内容を歌っているのだとは思う。
そうかぁ、外国のレースだと歌も外国語で覚えないといけないのよねぇ… 今更だけどハードルが一段階上がってしまった気がするよ……。
☆
ウイニングライブの中継が終わり、トレセン学園のライブ会場も照明が落とされ始める。程なく「生徒は早急に部屋に戻り消灯せよ」と言う放送が流れてくる。
こんな興奮した状態で寝られるわけ無いのだが、それはそれとして部屋に帰らなければならないのは理解している。
「また明日話そうコスモス。今日はもう早く帰って休みなさい」
「はいっ、また明日!」
新代さんに寮の入り口まで送って貰い、色々と充実した気分で部屋に戻る。
「おかえりなさいコスモスちゃん、ね? ナズナちゃんは見てて飽きないでしょ?」
迎えてくれたトッカンクイーン先輩も満面の笑顔だった。これはまたお喋りで寝不足になるパターンだねぇ……。
歌詞のフランス語訳はAI使用。
公式さんでライブの動画を上げて下さっているので、こちらも是非ご覧下さい!
https://youtu.be/DbKc5E1Cka8?si=WtcQvWf_bF1qBQEk