咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「寮長さんから聞いたぞ。昨日は帰ってからまたひと騒動あったらしいな」
事務所から練習コースに移動する中で、新代トレーナーがにこやかに話題を振ってくる。きっと昨日の『タルト事件』の事だろう。私自身は普通にトッカン先輩のお手伝いをしただけで、騒動だとは思っていないのだけれども、寮長さんからすれば夕飯のメニューに突如として大量のリンゴタルトが追加されたのだから、学園や美浦寮の娘達から色々と言われたであろう事は想像に難くない。
「はい。とっても美味しかったですよ」
私もにこやかに返した。確かに準備はかなり大変だったけど、みんなが「美味しい」と喜んでくれたし、何より元々は私の初勝利を祝してトッカン先輩の考えてくれたおめでとう企画なのだ。
昨日は最終的になんだか栗東寮全体で私の勝利を祝ってくれたみたいな感じがして、それがまた嬉しくて昨夜はなかなか興奮が冷めずにまるで寝付けなかった。
「こんな風に勝てば周りも喜んでくれる。周りを幸せにできればコスモス自身にも幸せが返ってくる。この気持ちを忘れないでくれ」
「ハイっ!」
そう、私は長い事忘れていた。勝利の喜びを、期待に応える喜びを。『勝てば自分が嬉しい』『応援してくれる周りも嬉しい』そんな当たり前の事すら想像できないで
次のプレオープンレースに勝って、更にその次のオープン戦を勝てれば、なんとかギリギリではあるものの春のティアラGⅠ『桜花賞』に間に合う。私の夢である『ティアラ3冠』に一歩近付く……。
『勝ち』のイメージは何となく掴めた気がする。特にラストスパートの前に見たあの不思議な矢印、あれは一体何だったのだろう? 新代さんなら何か知ってるかも知れないなぁ……。
「ね、トレーナー。そう言えば昨日のレースの最後に不思議な事があったんですよ…」
私は拙い語彙力を総動員して昨日の出来事を新代トレーナーに向けて懸命に説明した。説明したんだけど、返ってきた答えは……。
「それってまさか…? いや、うーん、ゴメン。やっぱりコスモスが何の事を言っているのかサッパリ分かんないや…」
だった。明らかに何かを隠している怪しい答え方だ。ここは問い詰めるしか無いよね。
「それめちゃめちゃ気になる言い方ですよね? 何ですか? 担当の私にも言えない様なヤバイ事なんですか…?」
ちょっと怒り顔を作ってみる。新代トレーナーは逆に脂汗を浮かべて困った表情を隠さない。なんとか言い訳を考えている顔をしている。
「いや、違うんだコスモス。『言えない』のは確かなんだが、秘密にしているとかじゃなくて、本当に『分からない』事柄なんだよ…」
☆
「はぁ、《
「そう、ウマ娘が超集中状態になると発揮される超常的なパワーだと認識されている。人間でもまれに観測できる事象ではあるのだが、ウマ娘の場合は特に物理法則すら捻じ曲げる事が可能と聞き及んでいるな…」
「そんな凄い力が私にも…? 何か覚醒しちゃった感じですか?」
何だか話だけ聞いていると『超能力に目覚めた』系のイベントみたいだけど、新代さんの顔色を窺うにそんな太平楽に構えていられる物でも無いっぽい…?
「確かに『時代を作る』様なウマ娘は、全員がその境地に至ったと思われる逸話がある。だが《
そういう事か… どんなに優れたトレーナーでも『分からない事』は教えられないし、不確実な知識で変な指導をして取り返しのつかない事態になる事も有り得るもんね。
「ただ先達の中には《
とりあえず《
新代トレーナーは『先達の中には《
私の周りで一番《
次に頼りになりそうなのはトッカン先輩とかヤオビクニ寮長だけど、こちらはこちらで2人とも私とはチームが違うから聞きに行きづらい……。
一応トッカン先輩からは『私の知ってるテクニックとか教えてあげるから気軽に相談してね』とは言われている。言われてはいるけど、《
今の所、私に起こった出来事が本当に《