咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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本物のお姉ちゃんみたいで大好きです!

 秋華賞の後、取材とか夕飯とかで出発が遅れてしまい、学園に帰ってきたのは結局夜の11時を超えていた。

 まぁ事情が事情だし、トレーナーさんも一緒だしで寮の門限を破っても怒られる事は無かったけどね。

 

「おかえりコスモス、よく頑張ったね。自分の事みたいに嬉しいよ…」

 

 寮長のヤオビクニさんは涙ながらに迎えて私の頭を撫でてくれた。ヤオビクニさんにも私の事でたくさん心配させちゃったし、色々と迷惑をかけたよね。また日を改めてお礼しなくちゃいけないなぁ……。

 

 ☆

 

「コスモスちゃんおめでとう! もぉ凄いレースだったしライブも良かったよ! 私、感動しちゃったよ!」

 

 次はルームメイトのトッカンクイーン先輩が優しく迎えてくれる。

 

 私のデビュー前からルームメイトとして、先輩として色々と気を回してくれて、私が勝てなかった時や調子を崩した時も、いつも親身になって隣で励まし支えてくれた大恩あるウマ娘(ひと)… 尊敬する大好きな先輩……。

 

 トレセン学園に入学してからずっと… それこそ新代トレーナーにスカウトされる前から、トッカン先輩は私に気を砕いてくれて、彼女からはたくさんの事を教えて貰った。

 ヤオビクニさんの5倍くらいはお礼をしないと、その気持ちに釣り合わない気がする。

 

「トッカン先輩がずっと支えてくれたから今日まで頑張れたんです。ありがとうございます。何て言うか… トッカン先輩は本物のお姉ちゃんみたいで大好きです!」

 

 今更だが私はひとりっ子で姉は居ない。更にトッカン先輩は私より小柄で顔立ちも幼いので、2人並ぶと私の方が『姉』っぽく見られる傾向がある。

 

 それでも、トッカン先輩は私の大事な『お姉ちゃん』だ。トッカン先輩と本当に家族だったら良かったのになぁ。

 

「本当に? 嬉しいなぁ… 実は私自身が末っ子だったから、ずっと妹が欲しかったんだよねぇ…」

 

 トッカン先輩も嬉しそうに顔をほころばせる。相思相愛で私も嬉しい。きっと「妹がいたら()()してあげよう」みたいな願望を、トッカン先輩は私に投影してくれたのだろう。

 

「でも次の『エリザベス女王杯』では、その可愛い妹を泣かせないといけないのがちょっと心苦しいかなぁ…」

 

 トッカン先輩がイタズラっぽい悪そうな笑顔を見せる。まるで秋華賞の時のヴァーンズィンさんを思い出させるなぁ……。

 そう、次のレースはいよいよトッカン先輩との直接対決となる、約束のエリザベス女王杯だ。

 

 昨日まで私の戦績でエリザベス女王杯に出られるかどうかはかなり微妙だったのだが、今回の秋華賞優勝で逆に優先出走権を手に入れる事が出来た。これで気兼ね無くトッカン先輩とのレースに打ち込めるという物だ。

 

 次走希望がエリザベス女王杯である事は、既に新代トレーナーにも伝えてある。彼の頭の中では本番までの1ヶ月のスケジュールが既に出来上がっているだろう。

 

「私じゃまだまだかも知れませんが、負けるつもりはありません! トッカン先輩と本気のレースを出来る事が凄く嬉しいです」

 

「私もだよコスモスちゃん。()()まで来てくれてありがとう。私を奮い立たせてくれてありがとう!」

 

 改めて2人で固い握手を交わす。来月のレースが今から楽しみで仕方ないよ!

 

 ☆

 

 翌日はクラスを上げて私の優勝をお祝いしてくれた。共に走ったジュエルフラッシュも一緒になってクラスの祝福を受けた。

 日本ダービーのフォーゲルフライ、安田記念のローゼスストリームに続く、今期クラスで3人目のGⅠ勝利に、担任の暮林先生は終始泣きっぱなしだったなぁ……。

 

 ☆

 

「おーいコスモスーっ! こっちおいでよ!」

 

 お昼休みのカフェテリア、私に声をかけてきたのはハピネスシアターちゃん。隣にメジロパラディンさんも居て、2人のランチに混ぜてもらう事に。

 

「コスモスの追い込み凄かったよねぇ。あれもやっぱり《領域(ゾーン)》なの?」

 

 屈託の無い笑顔で質問してくるハピネスちゃんにどう答えて良いものか少し悩む。

 《領域(ゾーン)》の情報を外部に漏らすのは好ましくない事と、秋華賞での私の《領域(ゾーン)》は進化前の道標が出ただけの言わば不完全な物だったから、あまり誇らしげに語るのも躊躇われたのだ。

 

「秋華賞に勝てたのは《領域(ゾーン)》がどうこうよりも、パラディンさんが道を開けてくれて、そこに捩じ込めたからだよ。パラディンさんのおかげ…」

 

 そう、最終直線(あそこ)でパラディンさんが道を開けてくれなかったら、包囲から抜け出す術を持たなかった私は、優勝どころか掲示板入りすらも怪しい結果に終わっただろう。

 

 私の言葉にハピネスちゃんの視線がパラディンさんに向く。パラディンさんは考え事をするかの様に、腕を組み目を閉じている。或いは少し怒ってる…?

 

「…だって、どうしてもGⅠの舞台でコスモスさんと競いたかったんですもの。もちろん正々堂々と勝負して、そのまま逃げ勝つ算段でしたのよ…? それなのに無様に負けた上にあんなはしたない所まで見せてしまって…」

 

 パラディンさんが顔を赤らめて手で覆う。

 パラディンさんの言う『はしたない所』とは、レース後の大笑いや大泣きの事だろうか? 確かに驚きはしたけど、私は逆にパラディンさんを身近に感じられて嬉しかったんだよなぁ……。

 

 まぁその割には私に寝言の件で揺さぶりを掛けてきたりしていたので、勝負してくれた事に感謝はすれども、()()()()として割引きさせてもらうからね?

 

 ちなみに例のデータは確かに私の音声データで、寝言なだけに結構不明瞭ではあったが、確かに「新代さん大好き…」と言っていた。これは本当にヤバいブツであり、ストレージは即座に物理的に破壊した。後はパラディンさんの言っていた「マスターデータ」という言葉を信じるしか無い。

 うぅ、やっぱり恥ずかしいなぁ……。

 

 ☆

  

(わたくし)はメジロと言っても分家の生まれで、子供の頃はあまり本家とは強い繋がりはありませんでしたの…」

 

 そこからパラディンさんのちょっと長い過去話をハピネスちゃんと2人で聞いた。

 

 掻い摘んで話すと、メジロ本家はレースへの熱意を無くしかけていて、始めは分家生まれのパラディンさんにも期待はしていなかったそうだ。

 

 その為かパラディンさんは幼少時にはお嬢様教育をほとんど受けず、市井(しせい)のウマ娘としてのんびり暮らしていたらしい。

 

 より本家筋に近い北野トレーナーがパラディンさんを見いだし、本格的にトレーニングを開始すると同時にお嬢様教育も並行して行われ、徹底的に礼儀作法等を叩き込まれた、という事だった。

 

 サマーウォークでお世話になった時も、ここまで踏み込んだ話は聞いてなかったなぁ。

 

「メジロの本家からは『クラッシック級のうちにGⅠを1勝、シニア級で春の天皇賞に勝て』と言われています。それがメジロ再興の条件だと…」

 

 うへぇ、メジロ家からの条件がそんなとんでもなくハードルの高い物だったとは思いもしなかった。せめてどれか重賞1勝くらい、とかで許してあげれば良いのに……。

 

「今年いっぱい… クラッシック級の間に行われる平地のGⅠは、来週の菊花賞を含めてあと4つ。私の戦績ではジャパンカップへの出走は少々難しいでしょうから、残りの3つ… エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、そして有馬記念。私は全てに挑戦し、必ず… 必ずメジロの栄光を取り戻して見せますわ!」

 

 パラディンさん高らかな宣言。途轍もないプレッシャーなんだと思うけど… 他はともかく来月のエリ女をパラディンさんに譲る気は無いからね!

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