咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
菊花賞から1週間、今日のGⅠは東京レース場で行われる『天皇賞(秋)』である。
場所がトレセン学園の近くと言う事で、私達はトレーニングの息抜きがてら勉強を兼ねて観戦しに来ている。
メンツは私と新代トレーナー、それにトッカンクイーン先輩と秋月トレーナーの4人だ。最近この4人で動く事が多い気がするなぁ。
国立特別や秋嶺ステークスといった午後のプレオープンレースが終わり、いよいよ本日のメインレース『天皇賞(秋)』が始まる。
さて、最注目はこれまで秋天2連覇で、史上初となる3連覇を狙うトウザイブレイカー前生徒会長。
彼女はこのレースを最後にトゥインクルシリーズを引退し、ドリームトロフィーリーグに進む事が発表されている。
トウザイブレイカー前会長の引退レースと言う事もあってか、東京レース場は観客数11万人と大盛況。冗談抜きでうっかり買い物やトイレに行ったら元の場所に戻ってこれない混雑ぶりだ。
2番人気は大阪杯を含むGⅠを4勝しているブラックリリィ先輩。何度も争ってきたトッカン先輩によると、「やっぱり総合力はリリィちゃんが同期で最強じゃないかな?」だそうだ。
3番人気は現生徒会長で春の天皇賞覇者で、天皇賞春秋連覇を狙うスメラギレインボー先輩。
新旧生徒会長同士の争いにして、どちらが勝っても大きな偉業の達成となる、2人の大記録を賭けた真剣勝負には多いに注目が集まっていた。
他にもフックトッシン先輩、スターコロボックル先輩、パッションオレンジ先輩、ブラッドハーレー先輩といった錚々たる重賞ホルダー達が出走者リストに名を連ねている。
「パドックで見る限り、皆十分に仕上げてきてるな。全く甲乙つけがたい…」
秋月トレーナーが唸る様に呟いている。確かに皆さん顔色も良く、落ち着いている。GⅠなんて慣れっこなのか、秋華賞の時の私みたいに緊張して固まっている娘は1人もいない。
「コスモス、今日は勉強だ。よく見ておけよ、来年一緒に走るかも知れない娘達だからな」
新代さんが冗談めかして笑いながら言う。来年の事なんてまだ分からないけど、確かに今から走るメンツの何人かとは今後実際に勝負する可能性が少なからずあるんだよね。
「何か見てる方が緊張してきました…」
いや私が緊張してどうする? って話なんだけどさ……。
☆
天気は晴天、馬場は『良』、絶好のレース日和り。
今、出走者各位がスターティングゲートに収まり、厳かにレースがスタートした。
すっかり『逃げ』戦術が定着したスメラギ会長が先頭に立ちレースを主導する。トウザイ元会長は4〜5番手に付け、そのトウザイ元会長をマークする形でハーレー先輩が食らい付く。
スメラギ会長は大逃げ戦法を取るつもりなのか、最初からトップギアで後続を突き放そうとスピードを上げ、開始1000mで2番手を10馬馬近く離して「一人旅」状態だ。
スメラギ会長は春天でも3200mを『大逃げ』で勝っている。秋天の2000mなら、そのまま一気に突っ走るつもりなのかも知れない。
リリィ先輩を始めとする強豪勢は『差し』脚質が多く、中段でまとまっている感じ。
第3コーナーの大ケヤキに差し掛かる直前でコロボックル先輩が加速を始める。そこからだと800mのロングスパート、スタミナ保つのかな? ちょっと心配。
大ケヤキを超えた辺りでリリィ先輩が加速、やはり多くがリリィ先輩マークだったらしく。それを合図に全体が速度を上げて集団が短くなる。
第4コーナーを抜けて最終直線。まだスメラギ会長がトップだ。2番手との差はおよそ8馬身。かなり粘っているが後続も次々と追い上げてきてその差は徐々に狭まりつつある。
スメラギ会長に最初に食らいついたのはトウザイ元会長。最終コーナー回ってからの加速で、一時はスメラギ会長と並んで見せた。
しかし急な加速の反動か、ゴール手前150mでトウザイ元会長は失速。代わってその位置にス〜っと自然に入ってきたのがリリィ先輩。
最後はスメラギ会長とリリィ先輩との一騎打ち。追うリリィ先輩と逃げるスメラギ会長、ジリジリと追い詰めたリリィ先輩だったが、最後までトップを死守したスメラギ会長がアタマ差で逃げ切り、天皇賞春秋連覇という偉業を成し遂げた。
以上、3着はトウザイブレイカー元会長、4着はブラッドハーレー先輩、5着はスターコロボックル先輩という結果に終わった。
新旧生徒会長対決はスメラギレインボー先輩に軍配が上がった訳だが、ウィナーズインタビューの直後に新旧両生徒会長が抱き合って、何やら話していたのがドラマチックでとても印象的だった。
秋華賞の時の私とメジロパラディンさんも、お客さんにはあんな風に見えていたのかな…?
☆
天皇賞のウイニングライブはもちろん「NEXT FRONTIER」だ。春の天皇賞でもセンターを務めたスメラギ会長が今回もセンターで歌う。
ビアノの前奏から始まるイントロから、力強い演奏に繋がっていく。
「選ばれ〜しこっのっ
「NEXT FRONTIER」は春秋の天皇賞と、年末の有馬記念でのみ歌われる楽曲だ。日本のレースの最高峰とも言えるこの3レースを飾る勝利の歌。
まさに『頂点』を獲った者だけが歌える最強の歌だ。センターの3人だけで無く、バックダンサーの15人もGⅠである『天皇賞(秋)』で優勝を競った、日本トップクラスの人達だ。
「俺は
新代トレーナーが独り言の様につぶやく。別に私に対してどうこう言った訳じゃないのは分かっているけど、そうまで言われたら私も「NEXT FRONT」を歌うレースに挑戦するべきではなかろうか?
今日の強豪達を相手取ったチャレンジマッチは『来年』じゃない。今年だ。今年の年末だ……。
「あの、新代さん… 『エリザベス女王杯』の次のレース、『有馬記念』じゃダメですか…?」
新代さんは一瞬何を言われたのか理解できない顔をしたが、その直後とても嬉しそうに顔を綻ばせ、
「あぁ、それ良いなコスモス。是非やろうぜ!」
そう言ってくれた。