咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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何だか凄く怖いです

「『写真』じゃなくて『審議』なんですね… 何かあったのでしょうか…?」

 

 メジロパラディンさんが私の元までやって来た。確かに5、6人でゴールに雪崩込んだので、写真判定になるのは当然だろうと思っていたけど……。

 

「ん〜、多分大接戦だったから、誰かが接触したとか、進路を塞いじゃったとか、その辺かと…」

 

 運営からまだ何の説明も無いので、私達も何も分からない。会場のお客さんも皆ザワザワし始めている。

 

「えー、写真判定が長引いておりますので、ウマ娘選手各位は結果が確定するまで、各自の控室で待機して下さい。繰り返します〜」

 

 このタイミングで会場からのアナウンスが入る。確かに次のレースの準備もあるし、私達がいつまでもターフに居たら邪魔になるよね。

 

「コスモスちゃん、お疲れ様。凄い接戦だったね…」

 

 トッカンクイーン先輩もやって来た。トッカン先輩とパラディンさんは初顔合わせらしく、互いに挨拶して健闘を称え合っている。

 

 周りのウマ娘は多種多様だ。座り込んで俯いている娘もいるし、私達みたいに2、3人のグループで話し合っている娘もいる。

 

 その中でオオエドカルチャー先輩は、『審議』と表示されたままの掲示板を睨みつけながら、1人微動だにしないでいた。

 

「コスモスちゃん、今日は本当にありがとう。去年のダービー… ううん、それ以上に熱いレースだったよ!」

 

「はい、私も先輩との今日のレース、一生忘れません!」

 

 去年のダービーは1着から5着までが半身差という超絶大接戦で、今日のエリザベス女王杯もそれに匹敵する、もしかしたらそれ以上な、歴史に残る大レースだったと思う。

 

 再度控室での待機を指示する放送が流れ、私達は全員地下道へと歩を進めた。

 

 ☆

 

「お疲れ様コスモス。観客席からだと本当に横一線で差が分からなかった。あんなに頑張って良いレースにしたんだ、勝てたら良いな!」

 

 控室で新代トレーナーが労いの言葉をくれた。

 

「さっきトッカン先輩とも少し話したんですが、レースが気持ちよすぎてもう勝敗とかどうでもいい気分で…」

 

 そこでハッと気がついた。最悪他の人達との勝敗は有耶無耶でも許されるけど、ここで白黒付けておかないとダメな人が1人いる。カルチャー先輩だ。

 

 カルチャー先輩とは、新代トレーナーへの告白権を巡って勝負している最中だった。レース前に「忘れるな」と釘を差されていたのにすっかり忘れていたよ。

 

 でも、これでもし私が勝ったとして、新代さんに告白するの? 出来るの私? 普通に振られそうだけど、そうなったら私生きていけないよ?

 

 そう考えると、目の前に新代トレーナーがいる事すら怖くて恥ずかしくて居た堪れなくなってくる。急に気まずくなって声が出なくなってしまう。顔が火照ってくる。

 

「どうしたコスモス? 顔が赤いぞ? 体調悪いのか?」

 

 気遣ってくれる新代トレーナーの優しさが更に追い打ちを掛けてくる。もう彼の顔をまともに見る事すら叶わない。

 

「ちょ、ちょっと顔を洗ってきます! ホコリっぽいので…」

 

 と、逃げる様に控室を飛び出した。

 

 ☆

 

「オッス、コスモス。やっぱ落ち着かないよねぇ」

 

「コスモスちゃんの追い込み、見事だったわ。私はまだまだ調整不足だったみたい」

 

 頭を冷やそうと化粧室に避難したが、そこにはヴィブリンディちゃんとジーニアスセイント先輩の2人が談笑している最中だった。

 

 珍しい組み合わせに思えたけど、何度も同じレースを走っているのだから、私の知らない所で別の友情が生まれる事もあるだろう。

 

 2人には「どうも」と頭だけ下げて、洗面台で軽く顔を洗わせてもらう。

 

「ウンウン、コスモスの追い上げを見て、あたしも加速したかったんだけど、ヘリアンに前を塞がれてさ、多分今『審議』が出ているの、ヘリアンの進路妨害だと思う」

 

「そうかどうかまだ分からないけど、ヘリアンちゃんもかなり必死だったからねぇ、悪い話にならなきゃ良いけど…」

 

 なるほど、そんな事があったのね。写真判定に加えてヘリアンさんの進路妨害 (?)の件も調べなくてはならないので、時間も掛かるよね。

 

 先行してから差してくるヴィブちゃんの末脚は私も要チェックだったから、使われずに済んで助かったと言うべきか、本気の戦いが出来なくて残念、と言うべきか?

 

「でも何だか凄く怖いです。このまま引き分けでレースの余韻だけ残して学園に帰りたい気分です…」

 

 最高に熱いバトルが出来た。最大限に燃え尽きた。もうそれで終わりで良いじゃない?

 

「なんか分かる」

「そうね」

 

 2人が笑ってくれたけど、実際はそんな訳にはいかないのも分かっている。分かっているから冗談にも出来る。勝敗は厳密に決められないとダメだ。

 

「大変お待たせ致しました。エリザベス女王杯の結果が確定致しましたので、ターフの掲示板か最寄りのモニターでご確認下さい。繰り返します〜」

 

 突如会場アナウンスが流れ、私達3人の顔が引き締まる。次の瞬間、映し出されたレース結果を見たと思われる観客席がドッと盛り上がった。

 

 どうなったんだろう? 凄く気になる。私達はそのまま無言でアイコンタクトを取り、それぞれの控室へと駆けて行った。 

 

 ☆

 

 結果が確定した。優勝はトッカン先輩で、私は『ハナ差』の2着。私にアタマ差でカルチャー先輩、ハナ差でイーグルダイブ先輩、更にハナ差でパラディンさんだった。

 

 本来はヘリアンさんがカルチャー先輩に先んじて3着入線だったらしいが、ヴィブちゃんの言う通り進路妨害の反則を取られ10着に降格されてしまっていた。

 多分今頃ヘリアンさんの控室では大変な事態になっているんだろうなぁ……。

 

 6着以下ヴァーンズインさん、クリスタルセイバー先輩、ジーニー先輩、ヴィブちゃん、(降格された)ヘリアンさん等々と続く。

 

 私とトッカン先輩の差は実質3cm程だったらしい。ウマ娘レースは文字通り『鼻の頭』が勝利線を越えた順に勝敗が決まる。

 だからゴールの時は前を向いて、鼻を出来るだけ前方に突き付ける走り方をする訳だ。

 

 もしも、私の鼻が何処かの漫画のキャラみたいに、あと3センチ高かったら私が勝てたのかも…? とかしょうもない事を考えたりもする。

 

 しかし… あ〜ぁ、負けちゃったよ悔しいなぁ! 3センチとか、もう同着1位で良いじゃん、とか思うけど、そうもいかないよね……。

 

 トッカン先輩おめでとうございます! 大好きな先輩がようやく取れたGⅠ、本当に女王(クイーン)のレースに勝って、名実ともに『女王』になれましたね。素晴らしいです!

 

 あ… あと私、カルチャー先輩に勝っちゃったね。これはどうすれば良いのかな…?

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