咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「こ〜こ〜で〜今〜
「「「叶えた〜い
シニア級の中距離と長距離のGⅠレースで歌われるウイニングライブの楽曲は『Special Record! 』という、他はロック風の楽曲が多いGⅠ曲の中でも大人しめな、というか可愛らしい曲だ。
この曲の特徴は、いつもは曲のセンターとして歌うメンツが3人から4人という、極めて珍しい構成になっている事だ。
従って、今ステージの上でライブ服を着て踊っているのはトッカンクイーン先輩、私、オオエドカルチャー先輩、イーグルダイブ先輩の4名になる。今気がついたけど、その中でクラッシック級は私だけなんだね。
「ライバルがいる〜ほど〜頑張れ〜るよ〜」
センターのトッカン先輩の可愛らしい歌声が京都レース場の特設ステージに響いている。
聞き慣れたトッカン先輩の歌声だけど、GⅠのウイニングライブとなると、やはり滲み出す
トッカン先輩は順位が確定した後、1人ターフに戻って、悲願のGⅠ勝利に大粒の涙を流しながら勝利者インタビューを受けていた。
デビューから今日までの激闘や怪我の苦しみ、その全てを乗り越えて得た至上の冠は、トッカン先輩の為に
良いなぁ。私もあの冠欲しいなぁ… 来年こそは絶対に狙ってやるんだから。もう決めたよ!
「いつか〜 手に〜した〜い
そんな気持ちを歌にして、真横にいるトッカン先輩へ歌う。トッカン先輩、是非また来年も勝負して欲しいです。
「どんな時〜でも 笑〜い合え〜るよ〜」
去年の優勝者であるイーグル先輩は、慣れた物なのか凄く堂々と歌っている。初めての楽曲に気後れしている私に喝を入れてくれているかの様だ。
「君の
カルチャー先輩が歌って前半ソロパートが終わる。レース時から今まで、カルチャー先輩に何かを言われた事は無い。それが逆に凄く怖く感じる。
例えばそれが恨み言や八つ当たりといった強めの言葉であったとしても、何も言われない方が何だか爆弾の導火線がジリジリ焼かれている様な気がして、全然落ち着けない。
さすがにライブ中に蹴飛ばされたりはしないだろうと、警戒しながらも無事にウイニングライブをやり切る事が出来た。
出走者の皆さんお疲れ様でした。トッカン先輩は優勝おめでとうございます。
そして私を応援してくれたファンの皆様、あと一歩… もといあと『3センチ』足りませんでした。次はもっと頑張りますので、引き続き応援してくれたら嬉しいです!
☆
レース後の京都で私と新代トレーナーは、山西チーフとカルチャー先輩コンビ、そして秋月トレーナーとトッカン先輩コンビと合流し、盛大に祝賀会を行った。
もちろん主賓は優勝したトッカン先輩だが、優勝を逃した私達も含め1、2、3着揃い踏みの豪華なメンツに違いは無い。
今日のレースも反省点が無かった訳では無いが、3人のトレーナーさん達は早々に酒盛りを始めて、すこぶるご機嫌だった。
帰りの新幹線があるんだから、あんまり飲まないで下さいよ?
「いや〜、トッカンも含めてお前らみんな凄かった! お前ら最高! 今日まで生きてて良かったよ! 良いレースをありがとうな!」
男3人は担当ウマ娘を無視して、自分らだけで盛り上がっている。
主役のはずのトッカン先輩はデンと構える… でも無く、いつもの困り笑顔で甲斐甲斐しく大人たちに料理を取り分けたり、お酒を注いだりしている。
それで良いのか? と思わなくもないが、トッカン先輩なら「今まで苦労掛けてきたトレーナーさんにやっと恩返し出来たんだもん。今日は目一杯楽しんで欲しい」とか言うんだろうなぁ。
人間が出来ている。ホンマえぇ子やぁ。叶うなら私が結婚したい。うちの農園継いで欲しい。
「ふぅ、ちょっとお手洗い。ねぇコスモス、付き合って」
トッカン先輩で和みながら油断していたら、こんなタイミングでカルチャー先輩に誘われた……。
☆
「……取り敢えず2着おめでと。あたしも全力を出し切った勝負だったから、素直に負けを認めるよ。『今回』は、ね」
カルチャー先輩に何を言われるのか、悪い事を色々想像していたけど、化粧室に入って私と対峙したカルチャー先輩の一言は、意外にも敢闘の祝辞だった。
まぁあくまで『今回』と付け足す所が
「先輩の追い上げも凄かったです。私もあと10mコースが長かったら絶対に抜かれていました。トッカン先輩も含めて、あんな素敵な大接戦は今後体験できないと思ってます」
何と言うか今回のレースは、判定に時間が掛かったおかげか、物凄く冷静に結果を受け止められている。
皆が死力を振り絞って、最後の1cmまで本気で競って、私などは《
これほどの『熱い』レースの当事者になれた事は、私の誇りであるし、文字通りもう2度と訪れない機会であったと思う。
「そうだね… ところでそんな話をしにトイレに誘った訳じゃないのは分かってるよね?」
うぐ… 分かってます。敢えて触れない様にしていたのに……。
「新代トレーナーの事ですよね…?」
こうなったら私も腹を括るしか無い。気が進まない話でも、逃げていたら一生終わらないのだから。
「そう、勝負に勝った
アレってそういう話でしたっけ? 私は何となく「私が勝ったらカルチャー先輩は告白をやめる」みたいな感覚だったんですけど…?
「あの… 告白しなきゃ駄目ですか…?」
一応確認で聞いてみる。どちらにしても私の解釈違いという事にされて、カルチャー先輩の意見が通るのたろう。
「え…? したくないならしなくても良いけど。でもあんたが告白しなかったり、逆に告ってフラれたりしたら、次はあたしが遠慮なく行かせて貰うよ。これで良いよね?」
これ私がカルチャー先輩を止める為には、私が告白してそれを成功させないとダメって事じゃないか。圧倒的に不利だよこんなの……。
「あと告白するならあたしの見える所でする様に。結果を誤魔化せない様にね」
どんどん条件が増えていく。そんなの聞いてないよ!
「それって公開処刑じゃないですか…」
今日のレースやライブでの良い気分が一気に吹き飛んだ気がする。
私はどうすれば良いんだろうか…?