咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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本当に頑張りますねえ…

「コスモスさん、(わたくし)『ジャパンカップ』に出られそうですわ!」

 

 私とオオエドカルチャー先輩の初恋が破れた翌日、メジロパラディンさんが嬉しそうに話しかけてきた。

 

 まぁ恋愛に関しては元から上手くいく予感がゼロだったし、告白してからフラれるという最悪の展開も未然に回避する事が出来た。

 

 カルチャー先輩に新代トレーナーを盗られる心配も無くなったし、単純に悩み事が1つ無くなっただけの感覚で、昨日よりも体が軽く感じるまである。

 

 そりゃ失恋した当日は物凄く辛くて辛くて、一晩中泣いてトッカンクイーン先輩に心配かけたけどさ、新代トレーナーと林トレーナーは学生時代からもう7〜8年の付き合いになるっていうし、結婚適齢期を考えたらここで林トレーナーを放流するのは極刑相当の罪だと思うし、これはもう仕方ないよね……。

 

 私とカルチャー先輩の秘恋譚はここで終了だ。ここからはストイックにレースに賭けるウマ娘の熱いストーリーの再始動になる… と思う。

 

「ジャパンカップですか… 本当に頑張りますねえ…」

 

 パラディンさんはGⅠである秋華賞で2着、エリザベス女王杯で4着と健闘し、着実にファン数を伸ばしてきた。

 結果、ジャパンカップへの出走が認められる程の実力がある、と判断されたらしい。

 

 日本のトゥインクルシリーズだけでも凄い人達だらけなのに、更に世界の強豪を招いてのガチレース。

 憧れはするけど、私にはまだ「挑戦したい」とまでの覚悟は持てないなぁ。パラディンさんは凄いなぁ……。

 

 しかし、私とパラディンさんは『エリザベス女王杯』で走ったばかり。ジャパンカップまではわずか2週間しか時間が無い。

 

 本番レースでの消耗は模擬レースの比ではない。肉体的な、特に脚への負荷はとても大きく、レース連戦は確実に膝、脛、股関節、(くるぶし)、あらゆる場所が少なくないダメージを受ける。

 

 なので私達は通常1ヶ月以上のレース間隔を空けるのだが、もちろんそれはただの一般論。チーム、トレーナー、更に走るウマ娘本人の意向でそんな物はコロコロ変わる。

 

 元々パラディンさんは「ジャパンカップには出られそうにないのでマイルチャンピオンシップを目指す」と言っていた。

 

 それって今週末だよね? 2週連続で走るのはさすがに命を縮めるよ? とも思っていたので少し安心する事が出来た。

 

 ☆

 

 さて、そのマイルチャンピオンシップだが、天皇賞 (秋)やエリザベス女王杯とは違った短距離やマイル戦のエキスパートがそろい踏みとなった。

 

 昨年の覇者『風林火山』オカメハチモク先輩を筆頭に、幾度もカメ先輩と死闘を繰り広げた『芦毛の女勇者(アマゾネス)』ドキュウセンカン先輩は、スプリンターズステークスを2連勝中。

 

 そしてローゼスストリームとブラッドハーレー先輩という、今年と昨年の『安田記念』の覇者も揃いぶみだ。

 

 他にも我らが栗東寮長ヤオビクニ先輩、ファイヤーブレス先輩、チャームラズベリー先輩やレーザーディスク先輩といった、4〜5年目の大先輩の姿も見える。

 

 ちなみにオカメハチモク先輩のルームメイトにしてチームメイト、そして最大のライバルである『凱旋門賞ウマ娘』のスズシロナズナ先輩は、今回は翌週のジャパンカップへの出走を表明している。

 

 噂ではナズナ先輩本人は前年通りマイルCSへの出走を希望していたが、今年の凱旋門賞ウマ娘に挑戦すべく、海外から複数の強者が名乗りを上げたらしい。

 

 その中には凱旋門賞で戦った、昨年の覇者ルミエルシュプリームさんやロードアンドホークさん、昨年のジャパンカップ覇者であるドイツのバラタックさん、更には『現・欧州最強』と言われるウマ娘も参戦するとかしないとか……。

 

 とにかく海外からの挑戦者(おきゃくさま)が多数お見えになるので、その迎撃の為に「今回はジャパンカップ出走」という形になったそうだ。

  

 いやしかし、秋天やエリ女を走った人達とは別に、まだこれだけの『化け物』クラスの人達が世界中で日々競っている。

 

 まったく、日本だけでもこのトレセン学園という所は、冗談抜きで日本中から『化け物』を集めて食い合わせている恐ろしい場所だよね。

 

 私だって地元では、小さい頃から散々「天才」とか「神童」と言われて、『主役』として気持ち良く走ってきたんだよ?

 でもトレセン学園(ここ)は、そんな私ですら群衆(モブ)にもなれない過酷な所。

 

 右を向いても左を見ても、自分より遥かに高みに居る強烈なウマ娘がひしめき合っている。

 

 …でも私だってそんな凄い人達と(たたか)ってきて、曲がりなりにもGⅠを勝てた。いつまでも気後ればかりしていられない。もう少し自分に自信を持っても許されるはずだ… よね?

 

 ☆

 

 本日もトレーナー室のテレビでレース観戦。そして新代トレーナーの隣に座るのはまだ少し辛い。

 彼が手を伸ばせば届くほどすぐ隣に居るのに、決して触れる事が許されない、というのは本気で落ち込む。

 

 まぁ慣れないとね……。

 

 気を紛らわせる為にもレースに集中しよう。

 さて、レースはいつもの様に逃げるドキュウ先輩を他のウマ娘が追う形になる。

 

 第4コーナーまで回ってドキュウ先輩が依然として先頭。2番手との差は8馬身近くある大逃げ状態で、これはブッチギリの大楽勝かと思われたが、簡単に終わるメンツでは無かった。

 

 ほぼ最後尾に居たはずのオカメハチモク先輩が、淀の坂を降りきった直後に凄まじいスピードで追い込んでくる。これが『風林火山』と名付けられた末脚、恐らくは彼女の《領域(ゾーン)》の威力。

 

 他のウマ娘が止まっているかの様に見える速度差で、あっという間に13人を抜き去りドキュウ先輩に迫る。

 

 逃げるドキュウ先輩と追うオカメハチモク先輩。一瞬だけ拮抗するが、ラスト20mでオカメハチモク先輩がドキュウ先輩を交わし、見事アタマ差で優勝、マイルチャンピオンシップ2連覇を成し遂げた。

 

 オカメハチモク先輩は3月の高松宮記念以来となる、今年2度目のGⅠ勝利を飾った。

 

 ウィナーズインタビューで、オカメハチモク先輩は「ジャックルマロワ賞もスプリンターズステークスも良い所が見せられなかったので、今日は結果が出せて嬉しいです!」と誇らしげに語っていた。

 

 これでオカメハチモク先輩はGⅠを合計4勝。ホント何度もGⅠ勝てる人ってどうなってるのかしら? 体の構造とか私ら一般ウマ娘とは何かが違うのでは無かろうか? と思ったりする次第だ。

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