咲き誇れ秋桜(コスモス)! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
カルチャー先輩と話せたおかげで、《
「という訳で、トッカン先輩、《
消灯前の空き時間に、私はルームメイトのトッカン先輩に土下座していた。
「え…? なに急に? 何が『という訳』なの? よく分かんないけど土下座とか止めてよコスモスちゃん…」
事態が理解できずに目を白黒させて狼狽えるトッカン先輩。私のこの予告なしの無茶振りも、もちろんトッカン先輩の可愛いリアクションが見たくて画策しての事だ。
☆
「あぁ、なんだそういう事かぁ。もぅ、驚かさないでよ…」
事情を説明した私に、小さい頬をぷくりと膨らませて拗ねるトッカン先輩。反省はしているが後悔はしていない。近いうちにまたやりたいと思う。
「これから先は、新馬戦や未勝利戦を勝ってきた娘たちばかりの選りすぐられた戦いになります。だから私も少しでもパワーアップしたいんです。先輩、知恵を貸してください!」
行動自体はトッカン先輩の可愛いリアクションを見るために、やや突飛な方向で動いてきたけど、気持ちは真面目に《
チームの違うトッカン先輩が、潜在的な敵である私に決定的な助言をくれるとは思ってはいない。それでも
「うーん、よりにも寄って《
トッカン先輩のトレーナーさん… 確か1、2度会ったことがある。秋月さんという髭面のオジサンで、190cm近いマッチョの巨漢、トレーナーというよりは『蛮族の戦士』といったイメージの人だ。
顔は怖いが性格は豪快で優しい。インテリ志向の多い中央のトレーナーには珍しく直感で動くタイプで、我がチーム〈ミザール〉の山西チーフとは似た者同士の飲み友達らしく、たまに2人セットで見かける事がある。
その様子はどう見ても由緒ある中央トレセン学園のトレーナーではなく、どこかの暴力団の
それから小一時間、トッカン先輩と《
まぁ、トッカン先輩とゆっくりお話しできたから、それで良いかな…?
☆
週が明けて日曜日、今日は阪神レース場でGⅡである京都記念が開催される。我がチーム〈ミザール〉のエース、オオエドカルチャー先輩の今年初めてのレースになる。
4月頭に行われる、春の3冠の初戦となる大阪杯の予行演習的な意味で参加しているそうだが、ババヤーガ先輩によればカルチャー先輩は、この京都記念でとある『リベンジ』を狙っているらしい。
昨年末の有馬記念、カルチャー先輩は9着と惨敗した。その時の優勝者がスズシロナズナさん、昨年のダービーウマ娘でもある彼女が京都記念に出走するのだ。
ババヤーガ先輩によると、ティアラ2冠のカルチャー先輩としては、ダービーウマ娘のスズシロナズナさんとの初の直接対決という事もあって、密かにライバル心を抱いていたらしい。
そしてナズナさんは、有馬記念で上位人気の圧倒的強者であるツキバミさんやブラックリリィさんを軒並み抑えて優勝し、昨年の最優秀クラッシックウマ娘並びに年度代表ウマ娘となった。
ここでもしカルチャー先輩が優勝していたら、文句無しで最優秀賞も年度代表もカルチャー先輩になっていただろう。でもカルチャー先輩は負けてしまった……。
私はスズシロナズナさんとは直接面識は無い。先月の歌謡祭ではご一緒させてもらったけど、ステージも別だったし私はサインを貰ったりとかの行動には出なかった。
学園でもお会いした覚えはない(生徒数2000人もいるのだからいちいち認識していられない)し、単純にスターウマ娘に対する憧れの気持ちしか持っていない。
なのでカルチャー先輩のナズナさんに対する復讐心? 嫉妬心? とにかく今回の京都記念に賭けるカルチャー先輩の意気込みは、私には理解できているとは言い難い。
好き嫌いの話で言うなら私はスズシロナズナさん派だけど、チームメイトとしてカルチャー先輩には是非ともリベンジを果たしてもらいたい。
もしそうなれば、少しは溜飲が下がって怖さが薄まってくれるかなぁ? とか考えつつ……。
本当は阪神まで応援に行きたかったのだが、カルチャー先輩直々に「大したレースじゃないから来なくて良い」と断られてしまっている。天下のGⅡなのに。
という訳で、私はトレーナー事務所で中継されているテレビの画面越しにカルチャー先輩を応援する事になった。
「カルチャー先輩、いよいよですね…」
「あぁ、コスモスもGⅠを走るウマ娘の戦い方ってのをよく見て、その目に焼き付けておくんだぞ」
敢えて『走り方』ではなくて『戦い方』、新代トレーナーの言葉は私にカルチャー先輩のスタート法、スタミナ配分、ポジショニング、仕掛けタイミング、そして《
カルチャー先輩は私と同じ『差し』の脚質だ。だから彼女のレースから学べる事はとても多い。恐らく私が未勝利の段階では、この様にゆっくり『学ばせてもらおう』などと考える余裕は無かっただろう。さて、この因縁の(?)一戦は目が離せないものになりそうだ……。