壊れたフリして好きな子曇らすの楽しすぎる   作:邪悪なトリカス

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”俺”ちゃんの影響を受けず純粋なキヴォトス生まれとして暮らしてたらこんな子に育つという話です。


IF もし”私”が図太かったら 前編

皆さんこんにちは! 正義実現委員会のエース! 政樹(まさき)エミリです!

……はい。嘘です。見栄張りました。エースというかトップは友達の剣先ツルギちゃんです。ついでにNo.2も私じゃなくて友達の羽川ハスミちゃんです。

まあでも完全に嘘って訳じゃなくて、模擬戦ではたまに勝てたりするので! 誤差ですよ誤差! 

え? 戦績の詳細? 9:1くらいですかね……9がツルギちゃんです……

まあ、1割どころか1回でも勝てるのが既におかしいと周りからは言われるので。エース級と言っても過言ではないのではないでしょうか!

 

やめよう。見苦しい。それに疲れる。

 

……強さにこだわるようになった最初のきっかけは中学生の頃、不良グループに誘拐されそうになったことだ。

大人しくしていれば痛い目に遭うことは無い、とわざわざ目線の高さを合わせてニヤニヤしながら言ってきたのが癇に障った私はそいつの顔面を殴り飛ばして大暴れした。

当然、上級生複数に敵うはずもなく、数分後には銃でズタボロにされ、地面に転がされていた。

悔しさで泣き出した私を見て不良たちは笑った。

今思い出しても腹が立つ。ゲヘナ共め。

 

「よかったな、高等部の先輩(お姉さま)方が()()()()()くれるってよ」

 

不良が何処かへ電話をかけたあとそう告げてきた。不本意ではあるが、助かるにはその先輩方に頼るしかないと思った私は大人しくなった振りをして到着を待った。

 

「おい嘘だろ!? アイツらいきなり撃ってきやがった!」

 

そうして待つこと数十分。到着したのは黒いセーラー服の集団。後に加入することになる正義実現委員会だった。

彼女らは、それはもう強かった。数で不良共に勝っているからとかそういうのではなく、ひとりひとりの動きが洗練されていて、カッコよくて、思わず見入ってしまった。

 

「動くんじゃねえ! さもないとこいつを……」

 

残った不良が私に銃を向けてきた。彼女らの動きが止まる。

戦いに見入って、夢みたいな気分でいたのを邪魔されて。

怒りが再燃した私は向けられた銃口を思いっきり蹴り上げた。

 

「こいつ? 誰のこと?」

「てめぇ……!?」

 

呆気にとられた不良の顔が妙におかしくて、口角が吊り上がるのを感じた。それを見た不良の眉も吊り上がった。よほど苛ついたのだろう。私に気を取られている場合ではないのに。

 

「今だ!」

 

そうして最後の不良もあっさりと制圧され、事件は幕を閉じた。

私は正義実現委員会から勇気を讃えられ、救護騎士団から無謀を叱られた。

前者は嬉しくて、また言われたい、と思った。だが後者にも何も言い返せない。なら強くなろう、と決めた私は、何となく嫌いで避けていた銃を持つようになった。

 

 

 

 

それから5年。

私は高等部の3年生となり、正義実現委員会の黒セーラー服を纏い日夜戦っている。

 

「居たぞ! ”ヒクイドリ”だ!」

「やっちまえ!」

 

パトロールで道を歩いていると角の生えた不良共が出合い頭に銃を乱射して来る。

撃ってくるなら敵だ。

 

羽で銃弾を防ぎながら駆け寄って顎を蹴り上げる。

そのまま隣の奴の頭にスナイパーライフルのストックをフルスイング。

前衛二人がやられて怯んだ後ろの連中が冷静さを取り戻す前に、銃口を向けた。

 

「正義全開」

 

口に出すと何となく力が湧いてくるような気がする言葉と共に引き金を引くと、光を纏った弾丸が不良共の中心で爆発を起こして一掃する。

これをガトリングで乱射するのが私の最大の攻撃手段だが、トリニティを滅ぼすつもりかと怒られて以来、スナイパーライフルで狙った場所だけを爆破するようにしている。

ちなみにツルギちゃんとの模擬戦では遠慮なくガトリングの方を使うが、それでも9割負けるのはなんというか自信を無くしそうになる。

 

「この辺りも、だいぶ廃墟街じみてきたな……」

 

見渡せば、かつて少なくとも見てくれだけは美しかったトリニティ自治区の街並みは罅だらけの道路やドアの吹っ飛んだ車、燃えて骨組みだけになった()建物など、見るに堪えない光景が珍しくもなくなっていた。

 

()()()()()()()()()()()()()してからというもの、ゲヘナ共の暴走はとどまるところを知らない。

まあ、暴走しているのは私達もだが。

 

エデン条約とかいう忌まわしい呪いをめぐる、あの事件。あろうことか調印式の真っ最中に会場へとミサイルが撃ち込まれ、内心では嫌いあっているトリニティとゲヘナが形だけの握手を交わす現場は、阿鼻叫喚の地獄絵図に早変わりした。

その中で私たちは先生を守り切ることができず、無限に押し寄せてくる幽霊のような連中の足止めで精いっぱいだった。

風紀委員長に託した先生は結局何者かに撃たれて重傷を負ったと、あとから聞かされた。

 

安静にしていれば助かるとも聞かされて一度は胸を撫で下ろしたが、先生は安静になどしてくれなかった。

病室を抜け出した先生はどうやってか、存在が秘匿されていたアリウス自治区に乗り込み、諸悪の根源を叩き潰してきたらしい。

しかし帰ってきた先生の容態が急変し再度緊急搬送された。今も目覚めていない。もう、助かるかどうかも分からないそうだ。

 

この世の終わりのような気分というのをこの時初めて味わった。

それが強さにこだわるようになったもうひとつのきっかけだ。こちらは私だけでなく正義実現委員会全員に共通している。ツルギちゃんなんて戦略兵器どころではなくなる勢いだ。

 

先生をほぼ失った代わりに、と言っていいのか。支配者が不在となり、行き場をなくしたアリウスの生徒たちが大勢、トリニティに編入となった。戦い方ばかり教わってきた彼女らは、今この状況にあっては非常に頼れる味方となった。出会いが出会いだったため、最初こそ無視できない確執はあったが、共通の敵というのはいい緩衝材になる。暴走するゲヘナからの自治区防衛という目的は私達に一体感をもたらした。

 

とはいえ、どこまで保つだろうか。先生が倒れたショックはキヴォトス中に波及している。

別に先生だってすべてを自分一人で引き受けるような超常的な存在ではなかった。各自治区の運営は先生が来る前からずっと、生徒が自分たちでやっている。

だがそれでも彼の影響力は計り知れない。先生を心の支えにしていた生徒は大勢いる。厄介なことに重要人物ほど、その傾向は強い。失踪した風紀委員長もおそらくそのクチだろう。

 

トリニティも、そもそも事件で受けた打撃が重すぎる上に、ティーパーティーは瓦解寸前。ゲヘナが暴れて破壊された街の修復が追いつかず、こんな光景が広がっている。あの日ミサイルで吹き飛ばされた区画の復興だけで精いっぱいな有様だ。

 

「いつか、平和になるのかな」

 

この様子では私の在学中には無理なんじゃないかという気がするが、それを認めてしまえば最早そうなるのを待つしかなくなる。そんなのは絶対に御免だ。

今は、状況がマシになるまでこうしてできる事を地道にやっていくしかないか。

 

拘束した不良共を、応援に来た仲間に引き渡してパトロールに戻る。

 

「平和になって、卒業したら、こういう店をやってみたいな……ん?」

 

ふと、目に留まった喫茶店の前でそんなことを呟いていると、店内の電灯が光っているのに気づいた。

廃墟街寸前になるほど戦いの頻発するこの地区からは、もうまともな住民は避難しているはず。逃げ遅れか、物盗りか、単なる点けっ放しか。何にせよ確かめなければならない。

窓から中の様子を伺って、見える範囲には誰も居ないことを確認した私は慎重に入り口扉を開いて店の中に入った。

 

「正義実現委員会です。誰かいますか?」

 

店内は無人だ。呼びかけてみるが反応は無い。

見上げれば、光っていた電灯は点滅を繰り返した後に消えた。窓からの日光だけが店内を照らしている。

 

「……一応、奥を見てみるか」

 

いよいよ点けっぱなしか誤作動の線が濃厚になってきたが、バックヤードの方を覗いてみる。

 

「地下への隠し階段……? 扉から光が漏れてるな」

 

事務室、更衣室、シャワールーム等があったもののすべて無人。探索中に戸棚がスライドして顔を出した怪しげな隠し階段を除けば、どこにも変わったところは無かった。

警戒は解かないまま、ゆっくりと降りて行って、光の漏れる扉の隙間から中の様子を伺う。

やはり人の気配はない。

 

光源の正体を確かめるべく、扉に手を掛けようとしたその時。

 

「そこは従業員専用だよ、入られちゃ困るな」

 

突然かけられた声に肩がビクリと震えて思わず顔が熱くなるのを感じながら振り返る。

隠し階段の上から、ロボットの市民がこちらを見下ろしていた。武装している様子は無く、服装と発言からしても喫茶店の関係者のように見える。

 

「失礼しました。住民の方ですか? 私は正義実現委員会の……」

「エミリ……?」

「え、ええ。ご存じで……?」

 

名乗る前に名前を呼ばれた。これでも割と有名ではある……黒い羽と凶暴性から”ヒクイドリ”なんて二つ名をつけられるような、あまり嬉しくない意味で。

しかしこの人物の反応は、そういうものとは違うようだった。まるでもう二度と会えないと覚悟していた相手が目の前に現れたような……私がここに居るのが信じられないような、そんな様子だった。

対する私も、何となく初対面の気がせず……思わず数秒間、お互いに無言のまま見つめあってしまった。

 

「……あなたは?」

「私は……」

 

気づけば問いかけていた。もう少しで、思い出せるところまで行っている感覚はあるが、どうしてもそのもう少しが埋まらない。

故にその答えを、固唾を飲んで待ち構える。

 

「只者ではない」

「そっかぁ……」

 

ダメだ分からん。




”俺”ちゃんがどれだけ戦闘に向かないかという話でもありました。どっかで見たことある必殺技だって? 知らんな。
このヒクイドリ、純粋なトリニティ育ちなところに浴びせられる怒涛の実害でゲヘナ大っ嫌いになっています。が、風紀委員等の例外には一定の敬意はあります。マコト? 許さん。陸八魔アル? ○してやるぞ。


それでは後半に続きます。
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