壊れたフリして好きな子曇らすの楽しすぎる   作:邪悪なトリカス

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様子見に開いてみたら一晩とは思えない数の評価ついてて草 ありがとうございます。
よーし、続けましょう!(現金なトリカス)


第1話 

「いらっしゃいませ、4名様ですね。お席にご案内します」

 

ドーモ、独善の鳩です。

現在、出来る限り変装して喫茶店でバイト中です。

羽川曇らせはどうしたアホウドリ、だって? それはそう。

 

だが待ってほしい。銃弾って、有料なんだよ。

矯正局にブチ込まれた関係で口座は当然カッチカチに凍りついていたし、押収物保管庫から銃と一緒に奪還した財布(正実委員長の剣先ツルギが誕生日にくれた可愛いやつ)の現金だって雀の涙。これじゃあ不良を1、2グループダウンさせるのが精々で、正実の部隊相手じゃ戦うどころか逃げに徹してもあっさり捕まる可能性がある。それじゃあ羽川も困惑顔しか見せてくれねえよ!

 

脱獄から数日経ち、ヴァルキューレの追っ手も大体振り切ったかな、という頃。

さあどうやって暴れようかと計画をたて始めたところで腹の音と共にそのことに気づいた俺は慌てて金を用意する方法を探し始めた。

 

とはいえやれることなどたかが知れている。

砂ウルフ式(銀行を襲う)とか、勇者ロボ式(倒した不良のポケットに手を突っ込む)とか、ヴァニタス式(悪い大人の求人に応募する)とか、ラビット式(装備を売る)とか、そういうことをする気にはどうしてもなれなかった。

”私”がすさまじい拒絶反応を示すのだ。特に最後の(ラビット式)は考えただけで吐きそうになった。八囚人の姿か? これが……

 

そうしてあてもなく彷徨い歩いていたところ、履歴書不要でバイト募集していたこの喫茶点を偶然発見したのだった。怪しいが、腐ってもトリニティ自治区の店だ。ブラックマーケットに比べれば数百倍はマシだろう。

店主はどう見てもコーヒーとか飲めなさそうな、と言うか飲食出来なさそうな、落ち着いた雰囲気のロボ市民で、バイトしたいと言ったら「いいよ」と二つ返事で即採用してくれた。

 

怪しさはともかく、バイトを募集するという事は人手が必要という事で、自治区の目立たないところにひっそり佇むこの店にも結構客が来る。

メニューを見てみればケーキやらパフェやら、甘味にかなり力を入れている様子で、客の中にはゲームで見たことある奴(ネームドキャラ)も普通に紛れている。

さっき席に案内したのも放課後スイーツ部の4人だ。早速注文を……おい、メニューにないチョコミントパフェを頼むな。しかし俺が何か言う前にすかさず「あるよ」と店主のフォローが。あるのか……

 

ところで……これ、そのうち羽川来るんじゃないか? 結構評判良いみたいだし、あの甘党は絶対来るよな……どうしよう、流石に羽川や剣先(ともだち)相手じゃこんな変装一発でバレるぞ。

次の再会はあいつらの任務中に、八囚人(てき)として、と思っているのでそうなると非常に気まずい。

嫌だよ、弾代に困ってバイトしてる姿なんて見られるの。もうグダグダな雰囲気でしか戦えなくなるじゃん。

その後どんな凶悪な顔して撃っても「あの時のパフェ代で買った弾」って余計な記号(テクスト)がつく。そんな()()()()()()は望んでねぇ!

 

なんか店の扉が開くたびに肩がビクってなるようになった。バイト先間違えたかもしれん。いや他に選択肢なかったんだけども。

あ、また開いた。

 

「……いらっしゃいませ」

 

ふう、正実メンバーじゃなかった。黒セーラーとは似ても似つかない()()()()()()()()()()()()がおひとり様で来店だ……なんか見覚えあんなこのイケメン。

コイツ先生じゃね? この間プロローグメンバーと一緒にいたよねアンタ?

 

”ひとりです”

「お席にご案内します」

 

羽川が直接来るよりはマシだが、正実に漏れる可能性のある奴が出てきた……落ち着け、営業スマイルを崩すな。遠目でちょっと見ただけの”私”が変装までしてるんだからバレるわけがない。

 

”あの時の、ハスミの友達だよね? 奇遇だね。ここでバイトしてたんだ”

 

ひっ……怖いよコイツ。なんで分かるの?

 

”声が一緒だったから”

 

心を読むな! そして割と納得の理由ではあった。声はどうしようもない。こんな短いやり取りで分かるのは、やっぱり普通に怖いが。

いかん、寒気が……

 

”ハスミが、君のことをものすごく心配してたからね。気になってたんだ”

 

ああ、そういう事か。それならこの生徒第一な大人は”私”の情報を頭に叩き込むだろうな。それこそこうしてばったり出くわした時に必ず気づけるように。

完全に納得するとともに、羽川が”私”を気にかけていると分かったとたん寒気も引いて来た。現金なものだ。

まあ寒気が引いたところで状況がマシになるかと言われれば答えはNOだ。

注文されたコーヒーをテーブルに置きながら問う。

 

「……”私”のこと、羽川に話しますか?」

”いつか、自分からハスミと話をしてくれるなら、私からすることは何も無いよ。きっと今は時間が必要で。すぐ会えば丸く収められるって訳でもないだろうから”

「”私”が何をしたのか、羽川から聞いてるんですよね? ……そうして放置している間に、また繰り返しますよ? 今度こそ本当に、人を――」

 

殺すかもしれない、と口に出すことはできなかった。喉がヒリつくように痛んで言葉が出なくなった。

 

”そうなる前に止めるよ……いや、君ならきっと()()()()()()()

 

そんな訳があるか。止まれないから羽川に遊んで(おわらせて)もらおうってのに。

なんでそんな確信に満ちた目でこっちを見られるんだ、コイツは……これが俺たちの分身って、絶対嘘だろ。

 

「……それでは、ごゆっくり」

 

直視できなくなった俺はさっさと仕事に戻ることにした。

先生はそう長居せず帰ったが、俺のスマホにはいつの間にか先生の連絡先が入っていた。

 

いや普通にキモい。




”私”ちゃんの見た目は一回り小さくて羽が白いハスミって感じです。
固有武器もハスミと同じタイプのSR。

バイト中は羽を畳んでスカートの中に隠し、髪をポニーテール状に結んで眼鏡を掛けています。
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