壊れたフリして好きな子曇らすの楽しすぎる 作:邪悪なトリカス
連絡先が追加されていたのはマジでぞわってなったが、あちらからスタンプ爆撃や怪文書の類を送ってくるでもなくスマホは今日も沈黙している。
多分、自分ではどうしようもなくなったときに「もう頼れるのは先生しか……」って出来るように保険として置いといてくれたのだろう。
そうだと思っておかないとちょっと耐えられない。
まあ本人もあれ以来現れていないのでそうなる心配はないが。もうアビドスにでも行ったか。
対策編には関わらん。ていうかストーリーには関わらん。
一歩間違えば世界滅亡とかいう奇跡みたいなバランスの綱渡りに干渉する度胸なんぞある訳がない。
そんな度胸があったら”私”はこんなことにはならず、今でも羽川に呆れられたりしながら、正実でエリート気取って……やめよう。手が震えてきた。
……だが。
ほっとけば勝手に自罰的になるミカや洗脳されてるだけのアリウスは加工対象とは言い難いんだが、アレを黙って見てるのは……
気づいたら会場周辺の地理とか調べ直したりしていた。まあアレだ。こういうの把握しておけば、あの辺で活動しやすくなるし……正実と
「そういえば鳩ちゃん、学校行ってないの?」
仕事終わりにそんなことやってると、ボソリとロボ店主がつぶやく……鳩ちゃん? あれ? 正体バレてる?
「えっと……」
「?」
……いや、バレてるとかではなく、普段隠してる白い羽を見て呼んだだけっぽいな。警戒とか微塵も感じられないし。
「……その、退学に」
退学は実際言い渡されたわけではないが、可愛がっている後輩すら
もし今はまだ残っていたとしても、矯正局行きになって脱獄までしたんだ。シャーレの権限を利用するまでもない。条約関連のゴタゴタが始まる頃にはまず間違いなく”私”の名前はトリニティの名簿から抹消されるだろう。
もうあそこに”私”の居場所は無い。
「そうか……辛いこと言わせたね」
「……いえ、自分の行動の結果、ですから」
鏡は近くになかったので自分では分からなかったが、相当ひどい顔をしていたらしい。
店を出る前、店主が励ましつつ余ったケーキを持たせてくれた。
帰る宿も無いので、公園の東屋に入り、テーブルにケーキの箱を置いて椅子に腰かける。
雨が降りそうな空模様だったしちょうどいい。
しばらく色のやや暗い雲を眺めてボーっとしていると、不意に周囲の景色に既視感を覚える。
「……ここ、羽川のメモロビのところじゃないよな……?」
確か雨が降って、先生と一緒に東屋で雨宿りするんだったか。いや、テーブルなんてなかったか。似てるだけだな。
甘党の集まる喫茶店といい、ここといい、無意識で羽川の居そうな場所にばかり向かっている。そりゃ会うのが目的ではあるんだが……未練がましいな。
もう戻れないんだから。もう正義じゃないんだから……会うなら敵として。もう一度
「よぉ、ちょっと相席させてもらうぜ。雨降りそうなのに傘持ってなくてよ」
「……ええ、どうぞ」
遠い目になっていると、いかにもスケバンって容姿の生徒が3人現れ、俺を含めた4人でテーブルを囲むように腰掛ける。
言葉の通り、雲はすっかり暗く染まり、時折カメラのフラッシュのように空が一瞬だけ明るく光ったあと数秒遅れてゴロゴロと低い音が鳴り響いていた。
土砂降りの雨が降る前兆だ。屋根があってよかった。
「おっ、ケーキあんじゃん。アタシら腹減ってんだよねェ」
「……頂き物でして。日持ちしないでしょうから一緒に食べましょうか」
「悪いね」
言い終わるかどうかのところで無遠慮に箱を開けるスケバン。
ケーキは余った奴を片っ端から詰めたのか、結構な数があり俺独りでは食い切る前にダメになってしまうかもしれなかったので、
スケバン達からは仮に断っても勝手に開けそうな雰囲気を感じたが、それはただの言いがかりだ。俺がいいと言った以上、
「え、普通にうめぇ。これどこの店よ?」
「ここから結構近い所にありますよ」
確かに美味いな。スイーツ部がわざわざ来るのも頷ける。美食研は来るなよ? いや、この味なら暴れないか? 特別舌が肥えてるわけじゃないので判断がつかない。
「へぇー、じゃあ今度行ってみるか」
「ええ、是非」
会話は和やかだ。このまま仲良く雨宿りして、雨が止んだら手を振って、縁があればまた会いましょう、と終われればいいのだが。
そうは行かないだろうな、というのを察してしまう。左右の2人が立ち上がり、
「でも困ったことに、ちょっと懐が寂しくてさ」
「……あの店はバイトも募集していますよ。履歴書もいりません」
「いやそれ大丈夫なのか?」
自信ない。
「……ま、そんな怪しいバイトよりいい方法がある」
「アタシら一緒にケーキ食ってさ、もう結構仲良しじゃん?」
「少しでいいんだけど、支援してくんない? トリニティのお嬢様なら金持ってるよな?」
残念ながら素寒貧だ。言っても信じる雰囲気ではないが。
「仲良しというなら言わせてください。こんなことはやめてくだ――」
言葉は言い終わる前に銃声が鳴り響いてかき消され、俺は後ろに吹っ飛んで東屋の柵に背中を打ち付けることになった。対面に座ってた奴が硝煙を上げるショットガンを肩に担いでこちらを見下ろしてくる。
「ああ、ごめん。聞こえなかったわ。もう一回言ってくれる?」
「…………ええ、もう一度、言います。こんなことはやめて――」
今度は左右の2人がサブマシンガンで撃ってくる。ためらいも、淀みも一切無い。
「お嬢様ってのは意外と馬鹿か? 状況分かってねえの?」
……ああ。馬鹿だな。結果は分かり切ってるのに何で撃たれるまで言葉なんかかけてるんだ。
「そろそろ
「…………」
「おいおい、何だ? ビビっちまっ――」
「これが返事だ、
飛び上がりつつ、畳んでいた羽を一気に広げてショットガン持ちの顔面にぶつける。今度はあちらの方が、言い終わる前に吹っ飛んだ。
そのまま立てかけておいたライフルを手に取り、状況の理解が追い付かないのか棒立ちになっているサブマシンガン持ちの頭をゼロ距離で撃ち抜いて気絶させる。
数秒で独りになったもう片方のサブマシンガン持ちは半狂乱になって引き金を引くが、羽でその腕をカチあげて体勢を崩し、ライフルのストックでがら空きになった顎を殴打する。倒れたところを何度も踏みつけて意識を刈り取る。
その間にレバーを引いて次弾の発射準備をし、2人目が
「お前、まさか……ま、待ってく――」
”私”の白い羽と正義実現委員会のスナイパーライフルをはっきりと視認したショットガン持ちは目に見えて震え出し、慌てて何かを言おうとしたが、言い終わる前に頭を撃ち抜かれて気絶した。
ハスミと同じライフルで凸スナする変態。
ところでここまでハスミが一言もしゃべってないってマジ?