壊れたフリして好きな子曇らすの楽しすぎる   作:邪悪なトリカス

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第3話

『今朝――区の公園から救護騎士団によって搬送された3名は発見時、いずれも拘束された状態で重傷を負っており、状況と聞き出せたわずかな証言から八囚人の”独善の鳩”から襲撃を受けたものと見られ――』

「近所の公園か。物騒だね」

「……ええ、本当に」

 

昨日加工した(痛めつけた)スケバン達は無事病院送りになったらしい。途中で泣いて謝ったので早々に切り上げたが、少なくとも昨日みたいなカツアゲは躊躇くらいするようになるだろう。

 

「……ところで、さっきからあのお客が泣きそうな顔で鳩ちゃんのこと見てるんだけど。何かあった?」

 

店主の言葉に、意図的に視界から外していた人物の方をチラリと見てみる。

そこには紹介通りそれはもう悲しげな表情を浮かべた先生が。なんでだよ、とっととアビドス行けよ。

 

「多分ストーカーか何かです。つまみ出していいですか?」

「ダメ」

 

流石にそこは「いいよ」とは行かないか……仕方ない。

 

「……ご注文は」

君の笑顔(スマイル)

 

吐きそう。キモさ世界チャンピオンかこの妖怪。

 

「あるよ」

 

店主!? 俺を売るのか!?

振り返れば静かに腕を組んでそっとこちらを見守る体勢。これはスマイルやるまで許されない流れだ。なぜ? なぜ? なぜ? 理解できぬ。

 

……いや、もしかして”私”は今ものすごく暗い顔をしているのだろうか。だとすると喫茶店の従業員としてあるまじき失態だ。

なら仕方ない。と、表情筋からまるで油の注されていない重機のような音が鳴り響くのを感じながら口角を無理やり引っ張り上げて見せると、店主はひとつ頷いて腕組みを解き仕事に戻った。どうやら正解だったらしい。

先生も悲しげな表情を幾分か和らげている。黙ってさえいれば画になるなコイツ。

前回同様に注文されたコーヒーを持って行くと、一言礼を言って少し飲んだ後、今回は先生の方から話しかけてきた。

 

”怪我とか、大丈夫だった?”

「……心配するなら()()()の方ではないですか?」

”あちら()、だよ”

 

ゲームの時から思っていたがコイツは本当に……

 

「……そうですか。私は軽傷でしたので、もう治っています」

”そっか”

 

何を寂しそうに微笑んでいる?

 

”ハスミの言った通りだなって”

「……羽川はなんと?」

”君は絶対に()()()()()()()()()から、独りにすると相手がどれだけ弱くても必ず怪我するってね”

「……そうでしたっけ」

 

心外だな。華麗に躱して無傷で片づけたことも1回や2回くらい……いや、無かったかもしれん……うん、無いわ。剣先ほどじゃないが他の奴より治りが早いのであまり気にしてなかった。

羽川がちゃんと見ててくれたのを喜べばいいのか、醜態全部把握されてるのを恥ずかしがればいいのか。判断に困る。

 

”前にも言ったけど、いつかちゃんとハスミと話してほしい”

「……」

”すぐじゃなくていいとも言ったね。でも君自身が前に進むために、きっと必要なことだから。会ったばかりの私が何を、って思うかもしれないけど”

「……必ず。会って話します」

 

敵としてな。

 

”友達としてだよ?”

 

心を読むな!

 

”顔に出てるんだよ。それも、ものすごいわかりやすさで”

「えっ……そうなんですか?」

 

思わず片手で顔面を撫でるようにしながら後ずさってしまう。先生の目が完全に微笑ましい物をみるソレに変わり、顔が熱くなるのを感じた。小っ恥(こっぱ)ずかしい。今後気をつけなくては……

 

”さて、そろそろ行くね”

「……アビドス自治区は広いうえに交通機関も少なく、店も閉まっているところがほとんどです。食糧など相応の準備をしてから行かれることをお勧めします」

”え、なんで行き先知ってるの……?”

 

連絡先の仕返しだ。どうだ気味が悪かろう? 反省しろ。

 

「お顔に書いてありました」

”そんな馬鹿な……”

「ふふっ」

”……! うん、やっと自然な笑顔が見られたね。注文通りだ”

 

キモさで殴り返してくるな!

店主の元へ会計へ向かう先生の背中に塩でも投げつけてやりたい気分だが、それは店主に迷惑だ。掃除は自分でやらなきゃならんだろうしな。

 

”……あれ? 前回より高くないですか?”

 

困惑気味の声を上げる先生に、店主はそっと壁に掛けられた札の一つを指し示す。

そこにはコーヒーとかパフェとかに並んで”スマイル”の値札が。しかも地味に高い。

「あるよ」ってそのままの意味だったのか……この店大丈夫か?

 

「ふざけたこと言うお客への牽制用で、半分ネタだったんだけど。本当に湧くとは……もっと見える位置に置いた方が良かったかな」

 

そういうことか。でも見える位置に置いたら逆にふざけて頼む奴が湧くと思う。

 

”あはは……今後気をつけます。ところでこのお店、カード決済って……?”

「あるよ」

”よ、よかった……”

 

地味に高いだけあって昼食コッペパン族の先生が持ち合わせている現金ではちょっと足りなかったらしく、大人のカードを取り出した。これはただのクレジットカードなのか、ボス戦とかで本当にコレを取り出してるのか。

すぐ粉になる某悲劇のアイテムのデザインを鑑みるに後者の可能性が高いが。

 

先生が”ユウカに怒られる……”と呟きながら去った後は穏やかな時間がしばらく続いた。

 

……の、だが。ふと視界に収めた窓の外。入り口扉に向かって歩いている人物の顔を視認した瞬間、俺は反射的にカウンターの影へ飛び込んだ。

 

「……鳩ちゃん?」

「その、顔を隠すものとか、無いでしょうか」

「あるよ」

 

店主、有能。わずか数秒で差し出されたヘルメット――しかもボイスチェンジャー付きらしい――を被り、ロボ市民ウェイトレスに擬態した俺は一つ深呼吸してから立ち上がり、努めて何事もなかったかのように入り口扉で来客を出迎える。

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか」

「……きえええええぇぇぇ……」

 

最終兵器(やべえの)が来た。




恋愛小説が好きな乙女(しかも友達)を捕まえて何を言ってるんでしょうねこの鳩は
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