壊れたフリして好きな子曇らすの楽しすぎる   作:邪悪なトリカス

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第4話

「ご注文は」

「…………………あー……」

 

突如現れた正実の最終兵器、剣先を席に案内し、接客する。まさかこんなに早く正実が来るとは……って思ったが、近所で騒ぎ起こしたんだからそりゃ来るよな。現場調査か何かのついでに寄ったのだろう。

それはいい。いいんだが……

 

「けひゃぁ……くけっ」

 

何言ってんのか分からん! たまに標準語になるとすっげぇ繊細でいい奴なのに!

なんで羽川はこれと常時会話が成り立つんだよ!

 

「あるよ」

 

店主……?

 

今の注文だったのか? そして何故わかる?

もしかしておかしいのは俺の方なのか?

 

「最近来てなかったね。やっぱ忙しいの?」

「へへへぇ……」

「……そう、ウチはいつでもやってるから」

 

常連だったのか。なら会話が成立するのも……いや分かんねえよ、俺だって2年を超える友達付き合いなのにこのザマだぞ!?

 

「……」

「なに? 鳩ちゃん」

 

正実の前でそのワードで呼ばないでほしい。が、反応すれば余計に印象に残るだろう。落ち着け……

今気になっているのは……

 

「店主、あなた何者ですか?」

「私は……」

「……」

「只者ではない」

 

それはそう。()()()()()()()()を訊いてるんだが……

 

「誰にでも言えないことはある。()()()?」

「っ! そう、ですね。すみません」

「謝ることじゃない」

 

他ならぬ俺が正体はぐらかして働いてるんだ。訊ける身分じゃなかったな。

あと、やっぱりバレてるか。仮にさっきまでバレてなかったとしても正実トップの顔見た瞬間に隠れるなんて、これ以上ない自己紹介だっただろう。

そのうえで問い詰めるでも通報するでもなく居させてくれる。この人には頭が上がらないな。

 

「……ご注文(?)のアフタヌーン・ティーセットになります」

 

気を取り直して接客を再開する。俺の注意が店主に向いたところで剣先が帰る訳ではないのだ。

俺は注文を理解できていないので店主が出してきたのをそのまま運ぶしかできないのだが、満足気に受け取ったので多分合ってるのだろう。しかし店主は言語学者か何か? もしくは新人類。

 

しばらく楽し気に紅茶とスコーンを味わっていた剣先だが、不意に鳴った呼び出し音にスマホを取り出す。

店主や他の客に軽く会釈した後に応答ボタンをタップ。

 

「……ハスミか」

 

耳にスマホを当てた瞬間別人と入れ替わったかの如く真顔で流暢にしゃべり出す光景で脳がバグりかけるが何とか堪え、通話相手の名前が聞こえると同時に湧いてきた立ち聞きの誘惑もどうにか振り切って別の客への対応をする。

 

「ああ」

 

こっちをガン見しながら何かを肯定したぞ?

いやきっと気のせいだな。うん。先生の時とは違って顔すら見えず声まで変わってるんだ。

 

「わかった。ここで待ってる」

 

え? 羽川来るの?

 

「店主、ちょっと気分が悪くなる予定ですので今日はこの辺りで……」

「ダメ」

 

ダメかぁ

仕方ない。何とかごまかすしか……

 

ひとつ深呼吸して心を落ち着け待ち構えていると、やがて窓の外を剣先と同様の黒いセーラー服が横切る。

そのまま通り過ぎるわけもなく、その人物は扉を開けて入店した。

 

「……いらっしゃいませ」

「連れの者が既に居るはずなのですが……ああ、あの席です」

 

そのまま剣先の待つ席へ歩を進めるその姿を見間違えるはずはない。

正義実現委員会副委員長で剣先同様に”私”の友達の、羽川ハスミだ。

脱獄当日以来か。あの時は遠くから手を振ったくらいで会話も碌になかったせいか、大した時間は経っていないというのにずいぶん懐かしく感じる。

 

こんなシチュエーションで会いたくはなかったが、それでもあの日と違って手を伸ばせば届く位置に羽川が居るというのは心に響くものがある。

この場では注文受付以外で話しかけるわけにもいかないのだが、衝動的に声を掛けそうになるくらいには浮足立っているのが自分でも分かった。

 

包み隠さずシンプルに言えば、また会えて嬉しい。

 

「ご注文は」

「そうですね。ではこの季節のケーキを3つと、イチゴパフェ、チョコレートパフェを1つずつ、それと……」

 

信じられるか? これでダイエットとか考えてるんだぜ? 剣先も慣れたものとはいえやはり「後悔しない?」という視線を向けているように見える。

数十秒に及ぶ長い注文(えいしょう)を聞き終えた俺は一礼してカウンター奥に一旦引っ込み、店主にメモを渡す。

 

「大仕事だね」

「ええ」

 

なんて言いつつ店主も大量注文には慣れているのか異様なほど手際よくケーキの乗った皿をカウンターに並べる。実は羽川も常連だったりするのか?

 

ケーキを運んでいくと、羽川は何やら真剣な表情で剣先と話し込んでいた。電話の件だろうか。

 

「お待たせしました。ご注文の季節のケーキになります」

「……ええ、ありがとうございます。()()()

「他のご注文も、すぐに……お持ち………………」

 

不意に”私”の名前を呼ばれて接客台詞が中断される。

聞き間違い、ではないな。羽川も剣先も自分たちの会話を中断し、こちらの顔をしっかりと見据えていた。

 

「あなたなのでしょう? 顔を見せてはくれないのですか?」

 

羽川は少し寂しそうな顔でそんなことを言いながら首を傾げて見せる。

完全にバレているのを悟った俺はヘルメットを脱いでロボ市民からキヴォトス人ウェイトレスに戻った。

もう、なるようにしかならん。

 

「久しぶり、ふたりとも」




ブルアカ二次創作あるある「原作で同じ名前出てきたらどうしよう」
いや冷静に考えたら別にブルアカに限らないな……

最初に呼ばせるのはハスミという謎のこだわりによって、この鳩には今まで名前不詳で過ごしてもらいました。
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