原作未履修の主人公が憑依転生して、知らない間に原作崩壊を引き起こすだけの話   作:原憑崩

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独自設定、独自解釈がバンバン出てきます。ご注意ください。


4話目

「かっちゃん! オールマイトと連絡を取る方法とか知らない!?」

「知る訳ねえだろ! 後普通に話しかけてくんじゃねえクソデク!」

 

 ボンバーマンに聞いたのが間違いだった。僕は肩を落としてため息を吐き出す。

 

 あれから数日が経過した。事件の次の日にはオールマイトの事務所から人がやってきて、オールマイトの拳が僕に当たった事への謝罪や補填(医療費や慰謝料、その他口止め料などのもろもろ)をしてくれたが、オールマイトは非常に多忙で、その日も各地を飛び回りヒーロー活動に明け暮れていて会うことは無かった。

 

 お母さんはオールマイトの拳が当たった事に驚いて心配した様子だったが、僕が普通に帰ってきた事、そしてぴんぴんしている姿を見て大事ではなかったのだと判断、おおらかな気持ちで対応してくれた。

 

 事務所の人には誠心誠意謝られた。何度頭を下げられたか分からない。

 

 という訳で僕はあっけなくオールマイトとの繋がりを失ってしまった。思い悩んだ末、放課後に僕はトチ狂ってかっちゃんに聞いてみたのだが、一蹴されてしまったというのが今の状況だった。

 

「つか、オールマイトにそう簡単に連絡なんざ取れる訳ねえだろが! んでいきなりそんな事聞いてきやがった!? 全て吐けクソデク!」

「うん、実は数日前にオールマイトに会ってさ」

「……あ”あ”……!?」

「それで、事故で割と強めのオールマイトのパンチをお腹に食らったんだけど」

「なっ……はあ?」

「あ、これその時オールマイトがサインしてくれたシャツなんだ! 嬉しくて着てきちゃったよ僕!」

「んな貴重なもん着てきてんじゃねえ、ちゃんと保管してろやクソデク! いや、違え! お前っ―――」

「あ、そう言えば今日、コンビニに受け取りに行かなきゃいけないものがあったんだった! ごめんかっちゃん、先に行くね!」

「あ、おい、待てデクっ……だあああああ! クソがァ! 気になる事話すだけ話して消えんなや!」

 

 走り出した僕の耳には、かっちゃんの暴言が一瞬で遠ざかって消えていくのが分かったが、いつもの事なので気にしないでおく。

 

 それよりも、本当にどうしたもんか。こっちからは絶対連絡は取れないし、向こうは365日、常にヒーローとして活動しているような人だ。

 

 せめて、せめてストーリーラインに乗れてるかどうかだけでも確認しなければ、不安で夜しか眠れない。

 

 原作を知らない僕にとっては、ちゃんとストーリーラインに乗れてるかどうかだけが重要だ。むしろそこさえクリアできれば、後は流れに乗ってできる所までやってみるしかないのだ。

 

 つまり、このままだと詰むし、もし何とかなっても後は精神論とお祈りで突っ切るしかないという二択である。ゲームだったら確実にクソゲー認定だ。

 

 僕はコンビニでネットで取り寄せた筋トレ器具を受け取って、家に帰って外に出た。無論特訓の為である。

 

 今日は海浜公園までひとっ走りして、ゴミ掃除兼筋トレだ。アスレチックにもなるしいろんな形状で色んな重量のあるゴミで無料で多彩な筋トレできるしでここは僕にとってのオアシス、楽園である。

 

 にしてもどうしたもんか。とにかく事件が起こりそうな場所を手あたり次第虱潰しで回ってみるか? オールマイトだって全ての事件に関わることは無いだろうが、それでも何もしないよりかはマシな筈だ。

 

 そんな事をうだうだ考えつつ、冷蔵庫を拾い上げて走り回っていると、不意に人影が降りてきた。ついでドスンっ! と音が響く。

 

「私が来た!」

 

 オールマイトだった。

 

「お、おおおおオールマイト!? なんでここに!?」

「偶然通りかかったら君の姿が見えてね! 謝罪の件、直接行けなくてすまない! 不誠実だとは思っていたのだが、どうしても外せない用事があってね……」

「いえいえいえ、そんな! オールマイトの用事より重要なことなんてありませんので!」

 

 僕は目ん玉を跳び出させる勢いで驚き、冷蔵庫を置いてオールマイトまで駆け寄った。

 

「オールマイト! また会えて嬉しいです!」

「それは私もさ。 それにしても緑谷少年、こんな所で一体何をしているんだい?」

「筋トレです! ついでにゴミ掃除もしてます!」

「なるほど……ヒーローは人気商売になってしまっちゃあいるが、根本的には奉仕活動がメイン! 緑谷少年、君はそれを良く分かっているんだね」

「え? へへへ、い、いやあ……それほどでも……」

「HAHAHA! 謙遜するなよ緑谷少年!」

 

 笑って僕の肩を叩いてくるオールマイト。

 

「さて、折角会ったのも何かの縁! ここなら人目も少ないし、少しだけ特訓に付き合ってあげよう、緑谷少年!」

「……!? そ、そんな、悪いですよ! オールマイトの貴重な時間を奪うなんて……!」

「大丈夫大丈夫。さて、という訳で普段の君の特訓の風景を見せてもらおうかな!」

「は、はあ……」

 

 僕は頭の中が疑問で一杯だった。

 

 何故トップヒーローのオールマイトが、無個性の僕なんかにここまで懇意にしてくれるのだろうか? 普通に考えれば、オールマイト程の多忙の人が時間を費やしてくれるなんて、それなりの理由があるはずだ。

 

 ……よく分からないが、実はフラグを立てていた、という事だろうか? 僕はストーリーに乗れたのか?

 

 答えが分からない以上、ストーリーに乗れた乗れないにいつまでも拘泥していても先には進まないか。今はこの流れに全力で乗っかるだけである。

 

 それに、単純にオールマイトに特訓を見てもらえるなんて嬉しすぎるしヤバすぎる! かっちゃんに自慢しよ。頭ボンバーするぞきっと。

 

「そ、それじゃあ……折角ですし、オールマイトに僕の技を見せたいと思います!」

「ああ、是非見せてくれ」

 

 僕はいつも使っている鉄パイプを持ってきて、そして構えた。オールマイトがじっと見てくることに緊張を感じつつ、呼吸に集中する。

 

「日の呼吸――――壱ノ型 円舞!」

 

 そこから、次々と型をつなげていく。アニメで見たヒノカミ神楽や、僕の心の中の師匠、竈門炭治郎先生の技を意識して、出来るだけ滑らかにつながるよう意識する。

 

 だが、肆ノ型まで行って、肺がぼきゅんっ、と音を立てて痛みが走り、僕は構えたまま動きを止めた。

 

「ぜえ……ぜえ……」

「ホーリーシット! ……凄まじいなこれは……! なんて美しい剣技だよ、緑谷少年! 技術、そして威力ともに練り上げられている!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 僕はオールマイトの賞賛に礼を言いつつ、素振りを再開する。

 

「――――拾弐ノ型 炎舞!」

 

 最後の型まで何とか繋げ終わる。

 

 どっと疲れた。

 

 何とか再現に成功したこれらの型だが、正直一つ使うだけでかなりのスタミナを消費する。その上所詮はただの再現なので、本物と比べると確実に劣っている出来だ。

 

 僕が勝手に『日の呼吸』と認識してるだけで、本当は全く別の技なのかもしれない、という不安さえある。一応日輪のような斬撃が出せはするので、大丈夫だとは思うのだが。

 

「無個性とは思えない程の剣圧を肌に感じたぜ! 師匠がいるのかい?」

「はあ……はあ……、んんっ、手本にさせてもらってる人ならいます。実際に会った事はありませんが」

「そうか。それじゃこれはほぼ我流か! いい剣技だ……だけど、なんというか……」

 

 オールマイトは少しだけ言いよどんだ。僕はそれに笑顔を返す。

 

「……分かりますよ、オールマイト。この技は、守るためのものですが……同時に、首を斬る為の技でもある」

「umm……そこまで言語化したものを感じたわけではないが、真っすぐな刃の中にうっすらと殺気を感じたのはそれが理由か。ヒーローを志す君にとって、それが悩みの種であることは想像に難くない」

 

 僕は頷いた。

 

「だから、僕はこの剣技を、人を守るために特化した、素手で使う拳法……護身術に落とし込みたいと思ってるんです。でも、それがどうにも上手くいかなくて」

 

 鉄パイプを置いて、僕は拳を構える。

 

 そして正拳突き、蹴りを披露する。日輪を想像させる衝撃波が弾けるが、鉄パイプを使った時よりも薄いし小さい。

 

「今の時点で無個性とは思えない程の威力だが……確かに君が型と称して披露してくれた技よりも迫力を感じないな」

「やっぱり、そうですよね……」

「ふむ……そもそも君は何故素手にしようと思ったんだい? 剣技を護身術として、拳で使えるようにする……言うは易いが、実際やろうと思えばかなり難しい事のはずだ」

 

 その問いに、僕は応える。

 

「……簡単に言うと見栄えが理由ですね」

 

 武器を振るうヒーローは中々いない。いたとしても、個性で生み出したものを使うヒーローが殆どだ。

 

 理由は様々ある。戦闘中に壊され無力化されるなんて笑えないし、敵に再利用される可能性もある。ヒーローが使っていた武器で殺傷される……なんてのは、ヒーロー本人も、被害者も、応援してくれる一般市民にとっても衝撃的で精神的被害が大きすぎる。

 

 その上、刃物など誰にでも入手可能なものは再現性があり、『ヒーローが使ってたんだから僕も使っていいだろ!』みたいな危険思考を招く危険性がある。

 

 ヒーローが刃物などの分かりやすく人を殺すことのできる武器を使用することに忌避感や恐怖を感じる人もいる。戦闘が誘発されやすい現場において救出対象がそのような感情を持ってしまった場合、救出する際にトラブルを招くこともある。

 

 銃などは本来は警察や自衛隊のみに使用許可が与えられるもので、そもそも使用することそのものに非常に高いハードルがある。

 

 その点ヒーローが敵を制圧するのに個性のみを使えば、その人だけが持つ固有能力を、平和を守る為にのみ使用してくれる、という安心感を方々に伝えられる。『ヒーローのスーパーパワー』というフィルターは、『武による制圧』という色を薄くし、『ヒーローが平和を守ってくれた』という一点を強化してくれる。

 

 アイテムが、精々ヒーローを支援する為だけに使われるのも、技術が悪用される危険性を無くすためでもあり、ヒーローという概念を補強する為でもある。

 

 強力なアイテムがあればヒーローなんていらない、なんて思想が蔓延すれば、治安悪化待ったなしだ。その点でも刃物や銃火器の使用はあまり選択肢に上がらない。ヒーローという存在そのものの首を絞めることにつながりかねないからだ。

 

 今の社会はとにかくヒーロー中心社会。ヒーローだから個性を使う……否、個性を使うからこそヒーローなのだ。この共通認識は治安維持に重要である。

 

 翻って見てみれば、僕の取れる選択肢ってのはあまりない。

 

 木刀は耐久力の問題がある。実戦に出れば即座に使えなくなるだろう。なら金属で作ればいいって? 雄英の試験会場に持ち込めれば良かった。個性をサポートする道具でもなければ、恐らく却下される事だろう。今の段階では選べない。

 

 刃の付いた武器なんてもってのほかだ。僕だけじゃない。全てのヒーロー志望にとってその選択肢は勇気がいる。

 

 無個性だから武器くらい使っていいじゃないか? 無個性や弱個性が、武器さえ使えばヒーローと同じことができると安易に考えてしまう事の危険性は考えるべくもない。安易なヴィジランテ行為は立派な犯罪だし、被害を拡大する恐れがある。

 

 ヒーローはただ人を助けるだけの存在ではない。指標となり、偶像となり、象徴でもあるのだ。

 

 無個性だからこそ、安易に選んではいけない選択肢は多い。

 

 だから僕は素手で戦う道を選んだ。それに、手を差し伸べやすいこの形が、僕にとって一番理想的な形なのだ。

 

 という事をつらつらと早口で述べると、オールマイトは「ん~! さてはオタクだな、緑谷少年!」と僕の語り方へリアクションした。

 

「しかし、君の考え方はよく分かった。尊重するべき立派な考え方だ! そういう事なら私も協力できるかもしれない! 何せ私は常に素手で戦っているからね! 徒手空拳に関しては一日の長というものがある! 早速君に手ほどきしてあげたいのだが……シット! 今日はもう時間がないな。本格的に訓練に付き合うのは次回からという事でいいかな、緑谷少年!」

「次回があるんですか!?」

「もちろん、一度関わった事を中途半端に放っておくなんて無粋な真似はしないよ! では、次もここで会おう! あ、一応だけど、これオフレコでお願いね……では、さらばだ緑谷少年!」

「は、はい! さよならオールマイト!」

 

 一瞬で空の彼方へ消えていってしまったオールマイトに、僕は最後まで頭を下げ続けた。

 

 これは、間違いなくストーリーに乗ってる! 僕はさっきまでの悩みの種が綺麗さっぱり消えてくれたことに、心底安堵していた。

 

 だが、それ以上にオールマイトに目をかけてもらったことが嬉しすぎる。

 

 僕は小躍りしながら冷蔵庫を持ち上げ、ゴミ掃除を再開したのだった。




なおモチベはあまりないものとする。

ただの思い付きで書き始めたのに予想以上に人気が出ちゃった!あーあ、エタっちゃったらどうすんの?怖いよ僕は……。



>>>デクはどうやって日の呼吸を習得したの?

6年間にわたる修行+試行錯誤とお砂糖、スパイス、素敵なものをいっぱいと博士は間違って余計なものまで入れちゃった!それは……ケミカルX―――……のお陰で奇跡を起こした可能性が微レ存あったのかもしれないと推測されますが、実際の所は今作のデク本人のみぞ知るという事で、何卒よろしくお願いします。ご都合要素の8割くらいがここに詰まっていると言っても過言ではない。
あとこれ以上その話題に突っ込むつもりならこちらにも考えがありますので、重ねてよろしくお願いいたします(ぷんすこ)。

日の呼吸の型は

  • 素手によるアレンジが見たい
  • そのままで使ってほしい
  • それよりもおうどんたべたい
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