原作未履修の主人公が憑依転生して、知らない間に原作崩壊を引き起こすだけの話 作:原憑崩
「はあああ!」
「遅いぞ、緑谷少年!」
オールマイトとの衝撃的な出会いから、早数カ月が経過した。
光陰矢の如し。最後の1年間が過ぎ去るのはやはりとんでもなく早い。試験勉強、そして特訓……この二つをとにかく極め続けていると、時間が湯水のごとく消えていく。
だが、何故なのだろう。そんな日常の中にオールマイトがいるのが当たり前になっていた。
人目のつかない場所……例えば海浜公園などにいると、何かと理由を付けて僕を見つけてやってきて、すぐさま実戦形式の特訓が始まるのだ。
お陰で近接戦闘の経験値がどんどんと溜まっているのが分かる。流石トップヒーローだ。色んな戦い方を知っている。
そして同時に、僕の戦い方について様々な意見を聞かせてくれた。
『緑谷少年。一度思考を柔軟にしてみよう。そもそも、こう言っちゃなんだが我流で身に着けた剣技を、更にオリジナルを加えて拳で使えるようにするってのは、素手レベル1の君じゃあまりにもハードルが高すぎる。まずは日の呼吸の技に囚われず、他の格闘術などを修めてみて、素手の戦いの何たるかを理解した方がいい。まあ、この時点でかなり修練を積んでいるのは分かるが、見た感じ独学だろう? 丁度いい機会だから、私が培ってきたものを教えてあげよう』
という訳でオールマイトに修行を付けてもらうことになった。
当然僕も、過去に格闘術を学ぼうとしたのだが、無個性ゆえに門前払いされ、今までは動画サイトで独学で学ぶしかなかった。
そして呼吸に行きついたわけだ。小学校6年間。様々な漫画の技を再現するべく試行錯誤を続け、やっと結果が出たのが呼吸という技術だった。
僕はそれにあまりにも固執しすぎていた。やっと手に入れた力だったから……など、傾倒して良い理由にはならない。
ただでさえ無個性なんて弱点をしょってるんだ。全てに挑戦する気概でやらないとヒーローにはなれない。
……とは言え、漫画技の再現はもうできないが。僕が知ってる範囲内はあらかた試したからな。出来ることがあるとすれば技術をよそから学ぶことだ。いや、今までもやってはいたんだが、本腰を入れて習得することになる。
という訳で、僕は早速オールマイトからオールマイト式アメリカンCQCを叩き込まれることになった。といっても一週間に一回か二回、実戦形式で見て盗む形式だったので物凄くしんどかったが、全力で盗みまくった。
それ以外の時間はとにかく基礎トレーニングだ。重量をより増やしてランニングしたり(それ以上重くするなら車両扱いにするぞと警察に怒られた)、ゴミの山を全部素手で運びきったり。
お陰で呼吸もそこそこ熟練されてきた。だが、これに関してはやはり一番大きかったのはオールマイトとの実戦形式の特訓だ。実戦に勝る経験はない。
お母さんにヒョウタンを買ってもらって、ドラ〇もんと同じ大きさのものならギリギリ破裂させられるようになった。
あとやっぱり物足りないからかっちゃんを良く襲撃するようになった。受験生故個性は使えないが、それはそれとしてかっちゃんはやっぱり強い。オールマイトから教えてもらった技の練習に良く付き合ってもらっている。
そして、僕は今日も今日とてオールマイトに吹き飛ばされていた。
「はあ……はあ……」
「――――うん、大分良くなったな!」
「はは……オールマイトのお陰ですよ……」
仁王立ちで笑うオールマイトに、僕は起き上がりながら言葉を返す。
「さて……緑谷少年。良くここまで鍛え抜いた。最初出会った時も凄まじかったが、今の君はより洗練された戦士の迫力がある! その力の使い方を誤ることが無ければ、君はきっと最高のヒーローになれるはずだ!」
「ありがとうございます……!」
胸が熱くなる。この力で僕は人を助けられる人になる。
「そうだった。実は今日は君に話……というより、頼みがあってね!」
「はい、何でしょう、オールマイト!」
「緑谷少年……私の後継者にならないか?」
「はい、よろこんで!」
世話になっているオールマイトの頼みなら断るべくもない。条件反射でそう言った僕だったが、その後沈黙の時間が舞い降りた。
「……え? 後継者?」
僕は思わず目をぱちくりとさせてしまったのだった。
その後、オールマイトから語られたものは、本来なら僕みたいなただの中学生が知る由もない裏の事情……トップヒーローの、血塗られた真実だった。
ワンフォーオールのこと。骸骨オールマイトのこと。もはやオールマイトが、長い間戦えない身体になってしまったこと。
「受け継がれてきた、個性……」
「そうだ。それこそがワンフォーオール。人々の助けを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶なのだよ」
「どうして、そんな事を」
「どうしてそんな事を、僕に、ってか? この数カ月、君の頑張り、君の人となり、君の心を見てきた。君は無個性である身空で、ただひたすらにヒーローを目指し、誰かの為に救いの手を差し伸べる事ができる。そんな君だからこそ、私は『次』に君を選びたい。そう思うようになったんだ」
「……」
オールマイトはもう長くは戦えない。骸骨みたいになってしまったオールマイトを目の前にして、僕はその事実にただただ打ちのめされていた。
幼いころからの憧れの存在だったオールマイトが、そんな状態になってしまっているから? それもある。だが一番は、日本全体を取り巻く平和を作り上げたオールマイトが、もう万全の状態ではないということのほうが衝撃的だった。
「……このことを知ってる人は……」
「当然限られているし、君にも秘密にしてもらいたい。オールマイトはナチュラルボーンヒーローにして平和の象徴。こんな事実が広まれば、治安悪化は免れないからね」
「と、当然ですよ。こんなこと、誰にも言えない……」
僕は気づいてしまった。これが『僕のヒーローアカデミア』のストーリーの根幹にして、主人公、緑谷出久の出発点であることに。
恐らく緑谷出久は受け取った。継承したのだ。そしてヒーローを目指すことになった。トップヒーロー、オールマイトの後継者として……。
じゃあ、僕は? 少し考えて、いつの間にか作っていた握りこぶしを脱力させた。継承する以外の道はない。ここが現実であると同時に、ちゃんと漫画の世界であり、ストーリーラインが流れているのであれば、僕は主人公を張る必要がある。
だけど、この選択でそんな裏事情だけで首を振るのは、あまりにもナンセンスに思えた。
「どうしてですか? たった数カ月の関係なのに……どうして僕にしようと?」
「そりゃもう、見ちゃったからね。朝から晩まで足掻く君の姿……そして、その間、君は困った人を見つけたら必ず声をかけていたし、助けを求める声を聞いたら必ず駆けつけて、助けようとしていた。今思えば私達、割と事件現場で会うことも多かったよね! 当然人目の多い場所で仲良くお話ってのもあれなんで声をかけることはできなかったけども!」
そりゃ、ヒーローを目指しているのだから困った人を見つけたら声くらいいくらでもかけるし、助けを求める声が聞こえたら様子をうかがうくらいのことはする。
それで女の子を助けたり個性攻撃から逃げ回ったり、ちょっとした大立ち回りをすることは割とあった。お陰でこの辺の警察やヒーローには割と顔を覚えられてしまっている。悪い意味でだが。しかしこれはかっちゃんも同じだ。
まさかそんなところを見られていたとは。僕としては、ゲームやってる時に発生する突発クエストみたいなノリで気軽に参加してただけなんだけど。
「自身の境遇にめげず、ただ愚直に前だけを見ることができる……そんな事、誰でもできるって訳じゃないんだぜ? だからこそ、君はヒーローになれる! 私は心の底からそう確信したんだ!」
その言葉を受けて、僕は少し考え込んだ。
僕は無個性ヒーローになるのだと決心していた。どんな苦難が待ち構えていようが、必ずヒーローになると。
それが、蓋を開けてみれば個性を受け継ぐだって? そんなの予想できるわけがない。そんな、この世界のコミックやアニメみたいな展開……。
……そういや、異世界ではここもコミックの世界だったな。
僕は決心して口を開く。
「分かりました。オールマイト。僕はあなたの後継者になる。そして、あなたを超える最高のヒーローになって見せます!」
「良く言ってくれた、緑谷少年! じゃあ、とりあえず……」
オールマイトは髪の毛を一本抜いた。
「はいこれ。食え」
「ええええ!?」
僕はその日、オールマイトから個性を受け継いだ。
「―――これで君には私の個性が受け継がれたはずだけど……どうだい?」
「いえ、今一自覚はないですね……」
「ふむ……」
手のひらを握って開いてを繰り返すが、特に変わったことは……って、ん?
少し意識した途端、バチッ! と手から緑色の電気が迸り、僕は目を丸くした。
「うん、ちゃんと受け継がれているみたいだね!」
「ほ、本当に個性が……はは、凄いや」
個性の発動のコツを掴んだ僕は、今度は発動したり消したりを繰り返す。スイッチで切り替えるっていうよりも……力んだり弛緩したり、って感じだ。個性の事を、ちゃんと自分の体の一部だと意識してそれを行えば、徐々にスムーズに切り替えることができるようになってきた。
そこで、僕はふと気になった事を尋ねた。
「あの、本当に良かったんですか? 受け継ぐってことは、オールマイトの個性はもう……」
「ああ、それなら大丈夫。なんか余韻は残ってるから。向こう数年はまだ現役で活動できるさ!」
なら大丈夫……なのか? オールマイトが言うのだから大丈夫なのだろう。
「よし、なら早速個性を使ってみよう。私に一発、入れてくるんだ!」
「わ、分かりました!」
オールマイトが両手を差し出して受け止める体勢を作る。
僕は個性を発動させた。全身に緑のエフェクトが光る。
「はああ!」
そして、僕は思いっきりオールマイトの手のひらに正拳突きを放った。
どかんっ、と音がして、オールマイトが若干後ろにずれた。それは僕のこれまでの攻撃とは比較にもならない程強力なものだったのだが……僕とオールマイトの表情は、あまり良くなかった。
「umm……まあ、大体2割くらいかな。強くなったのは……おかしいな。緑谷少年ならばもっと引き出せるはずなのだが」
「もしかして、上手く継承できてなかったとか!?」
「いや、ちゃんと継承されているはずだ。考えるとするならば、無意識にセーブしてしまっているのかもしれないな。まあ、今まで存在しなかった機能なんだ。慣れるまで時間はかかって当然だろうね」
つまり、これは僕自身の問題ってことか?
オールマイトは指を二本立てた。
「私の感覚だと、今のはOFAの力の大体1%程度ってところだろう。ここから少しずつ使いこなせるようになればいいさ! 期待してるぞ、緑谷少年!」
「は、はい!」
ここがスタートラインってことか。上等だ、絶対なってやる。子どもの頃憧れた、誰でも助けてしまう本物のヒーローに!
◇
「かっちゃん! 僕個性が発現したみたい!」
「……は?」
かっちゃんが幼馴染やってきて初めて見る位の衝撃顔を浮かべて目を丸くしていた。
「お互い頑張ろうね! それじゃ僕今日も特訓行ってくるから!」
「待てやコラぁ! ……いや本当に待てやクソデク! 今日は逃がさねえぞクソが!」
次の日、僕はかっちゃんと無限追いかけっこを繰り広げたのだった。
◇
「もう入試前日か。早いもんだね、緑谷少年!」
「はい、八木さん」
あれから一カ月が経過し、早くも入試まであと一日という所まで来た。日々高まっていく肌を焼くような緊張、圧迫感。受験期間特有のピリピリとした空気をここ最近はずっと感じている。
今日の分も特訓が終わり、僕はオールマイト……の骸骨状態と歩いていた。この姿の時は本名である八木と呼んでほしいと言われているので、その通りにしている。
「ついに明日が本番……くぅ~! 私まで緊張してきたな。まあ大丈夫だとは思うのだが……よし、緑谷少年。景気付けだ! 今日は私が何か奢ってあげようじゃないか!」
「本当ですか!? あ、じゃあお母さんに夕ご飯遅れるって連絡しないと……」
「HAHAHA! 家に帰ってからも食べるつもりだな、育ち盛りめ! そうだな……お、あそこにうどん屋があるじゃないか。あそこにしよう」
オールマイトと連れたってうどん屋に入り、席に着く。
「さあ、私のおごりだ。なんでも食べてよ」
「ありがとうございます! それじゃあ……僕はかつ丼にします! ゲン担ぎに丁度いいや」
「じゃあ、私もそれにしよう。私の分のゲンもおすそ分けだ。大将、かつ丼を二つ! あ、一つは小盛で!」
「八木さん!……ありがとうございます」
早速運ばれてきたかつ丼に、オールマイトがカツを二ひれくれた。僕はそれを思いっきり腹に入れる。
「八木さん……本当にありがとうございます」
「ん? おいおい、奢ったくらいでそう何度もお礼を言われてしまうと、逆にこそばゆいぞ……」
「違います! 多分、僕がここまでこれたのは、八木さんのお陰ですから。だから、見ていてください。明日は絶対に雄英に受かって見せます」
僕はオールマイトをまっすぐ見て笑った。オールマイトは力強くうなずく。
「本番でこそ笑えるヒーローは強い! 緑谷少年、君は既にヒーローの卵として、しっかりと育っている。だから自信をもって試験に臨みなさい。応援しているよ」
「はい!」
ついに明日が本番だ。明日失敗すれば、今までの全てがパーになる。それに明日はかっちゃんともライバル同士だ。絶対に負けられない……僕は静かに闘志を燃やし、カツを口の中に掻き込んだのだった。
オレンジ評価がランキングに乗っていることの場違い感よ。
こんな出来で済まねえ。自由時間削ってできるだけ楽におわらs……早く投稿する為に工夫しようとするとこのレベルの質になっちまうんだ。許せサスケ八卦六十四掌(ドドド)。
せめてUSJまでを目標に書いていくのでよろしゅうお願いします。
この小説の文章は
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yo,me need cute in.
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こんにちは、私は可愛いものが必要です