原作未履修の主人公が憑依転生して、知らない間に原作崩壊を引き起こすだけの話   作:原憑崩

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6話目

「あれ!? その緑のもじゃもじゃ頭ってまさか……!?」

 

 入試当日。雄英の敷地内をドキドキしながら歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。声の方向を見ると、何やらどこか見覚えのある顔が。

 

「えっと、君は……?」

「あ、ごめん、その……覚えてる? 2年前くらいに、ヴィランから助けてもらったんだけど……」

 

 そう言われて、僕はやっと思い出した。中学1年生の時、緑谷家と爆豪家で一緒に旅行に行った先で敵に襲われていた女の子を助けた時のことを。この子はその時の女の子だ。

 

「ああ! あの時の!」

「はい、そうです! あの時は本当にありがとう! 会えて嬉しいです!」

「あはは、こちらこそ」

 

 手を握られぶんぶんと上下に振られる。

 

「私、麗日お茶子って言います! あの、あなたの名前は――――」

「デク! テメエ道塞いでんじゃねえぞ!」

「ひゃうっ」

 

 かっちゃんがぬっと後ろから現れ、女の子……麗日さんがびくっと肩を跳ねさせてしまった。

 

「かっちゃん、大きな声出したらびっくりするでしょ?」

「けっ……あ? お前は……」

 

 かっちゃんが麗日さんを見て黙りこくる。

 

「あ! あなたも、あの時は助けてくれてありがとう!」

「……けっ、俺はなにもしてねえ! 礼なんざすんなや! というかデク……それにそこの丸顔も! こんな所で油売るなんざ余裕綽々だなおい! 今日こそは完膚なきまでに叩きのめしてやるから覚悟しとけ!」

「丸顔!?」

 

 かっちゃんはのっしのっしと歩いていってしまった。

 

「ごめんね麗日さん。気にしないで。あの人は割といつもああだから」

「う、うちこそごめん。そうだよね、今は邪魔したらあかんかった……あの、もし二人で受かって雄英に行けたら、その時は名前教えてね! お互い頑張ろう!」

「うん! 麗日さんも頑張って!」

 

 小走りで会場に行く小さな後姿を見て、僕は鼻の穴を大きくした。

 

(女子と話しちゃったよ~!)

 

 特訓塗れの中学生活を送ってきたこの僕、緑谷出久。当然女友達すらいない悲しき特訓モンスターである。

 

 

 

 

 

 

 筆記試験を難なくこなし、次は実技。プレゼントマイク直々の試験内容の説明にバイブスアゲアゲになった僕は、その状態で試験会場までやってきていた。

 

(呼吸を整えよう……)

 

 深く集中する。麗日さんが同じ会場にいたのは見えたが、今だけは話しかけられる程の余裕はない。

 

 身体を軽く動かして調子を確認する。健康そのものの肉体。どこにも不調は見当たらない。

 

 OFAの調子も悪くない。相変わらず1%から上は使えておらず、まるで鍵がかかったかのようで中々難儀してはいるが、身体強化状態の自分の体の動かし方も分かってきて、譲渡直後の時よりも高い火力は出せるはずだ。

 

 大丈夫。行ける……これまでの特訓を、努力を信じろ。

 

「んじゃ、始め~」

 

 その言葉を聞いた瞬間、僕はその場から掻き消えていた。

 

「はあ!」

 

 呼吸を整え、爆速で地面を蹴って、スタート地点から出来るだけ離れた場所まで到達し確保。そこで一人でロボット相手に立ち回る。

 

『標的発見! ブッコロス!』

 

 最初の一体を倒したら、すぐに他のロボットが集まってくる。

 

 複数のロボットたちが襲い掛かってくるが、僕は一瞬でそいつらの間に躍り出て、手刀で一気に破壊する。一秒も経たずに4体のロボットを叩き、ポイントを稼ぐ。

 

『チッ、コイツ強イゾ!』

『囲メ! 囲ンデ数デ押シツブセ!』

 

 まだ空中にいた上下逆さまの僕を、左右から同時に攻撃してきたロボットに、僕は腕をブレさせた。

 

「――――参ノ型 烈日紅鏡」

 

 両腕から放たれた、同時の二連撃が左右のロボットを両断する。破壊されたロボットたちが地面に落ちる前に着地し、僕はその場から駆け出して次の標的へと突っ込んでいた。

 

『アベシッ!』

『タワラバッ!』

 

 よし、良い調子だ。ロボット相手なら何の気兼ねなく素手での型を繰り出せる。

 

 このままの勢いで――――! と行きたかったところだが、僕は不意にオレンジ髪の女の子の受験生がロボットに追い詰められている所を見てしまい一気に駆け出した。

 

「はあ!」

「っ、ありがとう! 助かった!」

「どういたしまして! 最後までお互い頑張ろう!」

 

 言うが早いか僕はその場から駆け出す。

 

 これが雄英の試験! 助け合いながら、それでもロボット相手にポイントを稼がなければならない。流石は最高峰のヒーロー育成高校。試験の内容もかなり実戦形式だ。

 

 僕は前後からロボットに挟み込まれている受験生の、背後のロボットにかかと落としをして破壊した。

 

「むっ、すまない! だが今は自分だけに集中した方がいいぞ!」

 

 眼鏡をかけた受験生が、足のブースターに火をつけて前方のロボットを薙ぎ払って言ってくる。

 

「これはヒーロー試験だからね! 助け合った方がヒーローっぽいと思うんだ!」

「っ……確かにそうだ、なるほど、それがこの試験の……」

 

 その言葉を遮るように、爆発音が響いた。見てみると、ビルとビルの合間から、ビルと同じ程の大きさの巨大ロボットが進行してきていた。

 

 そして、不意に足元に人が動いた気がした。

 

「! 麗日さん……受験生が一人、足元にいる……!」

「なに!? よし、助けに行こう!」

「うん!」

 

 一瞬で意気投合して、僕と眼鏡の受験生は同時に駆け出した。

 

「俺は飯田天哉! 個性は足が速くなるエンジン! 君は!?」

「僕は緑谷出久! 個性は身体強化! 飯田君、なら君があの子を助けて! 僕は、あいつの足を止める!」

「勝ち目はあるのか!?」

「やるだけやってみる!」

 

 巨大ロボットの手前で、僕は一人ジャンプして躍り出た。全身にOFAの力を満遍なく流す。

 

「陸ノ型 日暈の龍・頭舞い!」

 

 僕は巨大ロボットの身体を最大走力で駆けのぼりながら、円を描くような手刀を繰り出して細部を破壊した。そして、そのままの勢いで頭上を飛び越し跳躍する。

 

 落下しながら、僕は蹴りの姿勢を取った。連続で型を使用するのはそれだけ負担がかかるが、もしこれが実戦を想定するものだったら、移動するだけで街を破壊しかねないこの巨大ロボットは最優先標的。

 

「――――弐ノ型 碧羅の天!」

 

 僕の日輪の如き回し蹴りは、巨大ロボットの頭部の接続部分を破壊し、胴体と頭部を分断した。

 

 崩れてゆく巨大ロボット。だが、僕は運悪く空中に投げ出された。オールマイトだったらこういう時、空気を蹴って空中移動するんだろうけど……僕はまだそんな離れ業は出来ない。

 

 足にじんじん響くだろうが、大人しく着地するしかないか、と思い体勢を整える。

 

 

「緑谷君!」

「えーい!」

 

 不意に横から飯田君と、飯田君に背負われた麗日さんがやってきて、手を伸ばした麗日さんが僕の手を掴んだ。その瞬間、ふわりと身体が浮く。

 

 そして着地と同時に、タイミングよく終了を告げるブザーが鳴り響いたのだった。

 

 僕は麗日さんと飯田君に感謝の言葉を告げて、そこら辺の瓦礫に座った麗日さんに声をかける。

 

「麗日さん、大丈夫だった?」

「えへへ、ごめんね。また助けられちゃった……うぷっ」

「そんな! 僕の方こそありがとう。あのままだと足に負担かけてただろうから、助かったよ」

 

 麗日さんはどうやら瓦礫に足を挟まれて怪我したらしい。気持ち悪そうにしているのは、個性の使い過ぎによる反動のようだ。

 

 とりあえず背中をさすってあげて、ハンカチを足に巻いた。

 

「……本当に倒してしまったのだな。これが最高峰の試験か」

 

 応急処置が終わったのを見届けて、飯田君は沈黙する巨大ロボを見上げてそう言った。

 

「飯田君こそ、スピーディな救出だったよ! その足の個性……エンジンって言ったよね。 もしかして君って、インゲニウムの関係者だったりする?」

「むっ! あ、ああ、実はそうなんだ。よく分かったな」

「ヒーローオタクなんだ、僕!」

 

 特に格闘を主とするヒーローは最低でも名前だけは知ってる。インゲニウムはかなりの大手だった筈だ。

 

 その後は、リカバリーガールがやってきて負傷者の傷を治していった。麗日さんもチューされて足のけがを治した。

 

 飯田君と麗日さんと一緒に会場を出る。

 

「緑谷君。今回は君に助けられてばかりだったな……。落ちても受かっても、君と一緒に戦えたことは俺にとって大きな経験だった。願わくば、君と共に机を並べられる日が来ることを祈っている! ではな!」

「またね、飯田君!」

 

 飯田君がびしっ、と手を直角にまげて歩いていく。

 

「きっと雄英の教室で会おうね! ばいばい!」

「麗日さんも、ばいばい!」

「うん!」

 

 麗日さんも行ってしまう。

 

 全力は出し切った。結果がどうであれ、今日の所は家に帰ってゆっくりしよう。お母さんも心配してるだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数週間が経過し、玄関に出たお母さんがどたばたと僕の部屋の扉を開けた。

 

「い、いいいいいいず出久! 合否の通知、来てた!」

「本当!?」

 

 僕は早速それを受け取って、お母さんと一緒に開ける。

 

「大丈夫よ、出久! 出久がこれまで沢山努力してきたの、見てたもの! きっと受かってる!」

「う、うん。それじゃあ出すよ……」

 

 お母さんの声援を受けながら、僕は中身を出した。

 

 すると……なんだこれ。円盤?

 

 出してそれを置くと、目の前にオールマイトの顔が浮かび上がったではないか。

 

『私が投影された!』

「「お、おおおオールマイト!?」」

『やあ、緑谷少年! 連絡が取れなくて済まない、諸々手続きに時間がかかってね……さて、実はこの街に私が来たのは、他でもない。雄英に勤めることになったからなんだ』

 

 そこまで言って、何やら他の人の声が微かに聞こえた。『え? 巻きで? 彼にはもっと伝えたいことが……分かった、分かったよ!』と謎のやり取りが交えられた。

 

『ごほんっ……さて、早速本題に入ろう。先の試験では、筆記が満点! ヴィランPが65点! 当然、合格さ!』

「いずいずいず出久ぅぅぅ! いずっ、いずっ……!」

「ま、待ってお母さん! リアクションするのが早いよ! まだ続きがありそうだよ!」

『だが、先の入試、見ていたのはヴィランPだけにあらず! 救助活動P! しかも審査制! ヒーローに必要な基礎能力の一つだ! 緑谷出久、98P! 合計163P! 一位に僅差で迫る、雄英史上トップクラスのポイント数だ!』

 

 オールマイトが手を差し伸べてきた。

 

『来いよ、緑谷少年! ここが君の、ヒーローアカデミアだ!』

「いずくぅぅぅぅぅぅ!」

 

 ばびっ、と滂沱の涙を流して抱きしめてくるお母さんに、僕は黙って抱きしめ返した。

 

 特訓に励む僕に気を使って、お母さんもたまに特訓に付き合ってくれた。ご飯も身体づくりの一環で変えてもらったメニューを、嫌な顔一つせず作って、一緒に食べてくれた。

 

 ここまでやってこれたのは間違いなくお母さんのお陰でもあった。僕はひたすらに、お母さんに感謝の気持ちを込めてハグし返したのだった。

 

 それからしばらく経って、頭が冷えてきた。

 

 『一位に僅差で迫る』とオールマイトは言っていた。

 

 僕レベルの実力で2位ということは、僕と同じくらいの実力のかっちゃんが一位という事。

 

「ああああああああ! かっちゃんに負けたあああああああ!」

 

 嫌な事実に気づいてしまって僕のSAN値は一気に削られ、慟哭した。

 

「出久! 爆豪さん所の勝己君も合格したから、記念に一緒に焼き肉に行かないかって誘いが来てるけど、行くわよね? あ、それから勝己君から電話変わってほしいって!」

「うわあああああ! 普段話しかける事すら拒絶してくるかっちゃんから電話って、絶対負けた僕への嫌がらせじゃん! 嫌だ、その電話には出たくないいいいいいい!」

『ざまーみろ、デク』

「がああああああ! 過去に類を見ない程上機嫌なかっちゃんの声がかすかに聞こえたあああああ!」

 

 僕は結局涙跡で目元を真っ赤にした状態で焼き肉に行き、かっちゃんに心底煽られたのだった。

 

 

 

 

 

 

「うん、今年は豊作だったね」

「ええ……特にこの二人は頭抜けていたわ」

 

 雄英の会議室で、ヒーローたちが、今回の実技試験の録画を流した巨大なモニターを前に話し合っていた。

 

「爆豪勝己。手のひらを爆破させる強個性……だが、目を見張るべきはその異様な身体能力だ。爆破だけでは説明がつかない程の瞬発力、そして機動力! タフネスも随一だった」

「緑谷出久って奴も、記録ではちょっと前まで無個性だった筈なのにこの活躍! 巨大ロボをぶっ壊しちまった瞬間はYEAAAAA! って叫んじまったぜ!」

「敵Pメインの救助P低め、そして救助P多めの敵P低め……鮮やかに対比してる」

「この二人は同じ中学か……どこか動き方が似通ってるし、ライバルだったんだろうな」

「なら、同じクラスに入れた方がいいわね。このまま切磋琢磨してもらいましょう!」

 

 フォーカスは二人から一旦離れる。

 

「飯田天哉。彼もまた人を助けるために走ったね! あんな大きな敵に真っすぐ立ち向かえる人はそういない!」

「俺は麗日って子を押すぜ! 怪我した状況で咄嗟に緑谷を助けるために飯田に協力を提案した判断力は中々……」

 

 わいわいと生徒達に評価をする同僚たちを、一人の男が壁に背を付けてじっと見ていた。




なお崩壊は溜めて一気に来るものとする。

すまんが巻きで行かせてもらいます。でも投げっぱなしにはならないように努力はするのであたたたタタタかい目で見守っててください。





評価バーが赤くなったので急いで投稿(いそいそ)。

我ながら分かりやすすぎて自己嫌悪に陥る。評価に左右されるやる気など真のやりたい事とは言えないのではないだろうか。名誉欲こそが私の原動力なのだろうか。そのようなあさましい考えで他人様の前に文章を差し出せる私は愚かな囚人、滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ 破道の九十 『黒棺』――――。

ぶっちゃけ後書きは

  • おもろい
  • 邪魔
  • 黒棺
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