転生した。
それは良い、最高に良い。
しかも日本、時代もちょっと過去でほぼ知っている現代日本。ほとんど同じで地名も同じだが……微妙に人や文化が違う。
昔から人気だった誰でも知っている芸能人の名前がなく、調べればでてくるのは知らない歌手にアイドルグループ。知ってる曲も古い童謡程度で殆どない。
―――――だから作ることにした。
音楽ソフトで前世の曲を、今の生にはないちょっとした便利な道具を。
前世と似たことをして儲けている企業やちょっとした技術はまだ開発されていないものもあったしそういう差異から儲けに儲けた。
あとは未成年だが悠々自適に生きるだけ、そう思っていたが………ただ、運がなかった。
交通事故で両親を失った。
親の親戚なんて知らない、このままではおそらく知らない第三者に儲けた権利や金が行ってしまって、バッド・エンド。
前世では大企業で世界の部品や特許について調べる部門で働いていたとは言え一般人だった自分には世間で使われているような確実に売れるような便利グッズの技術なんてそこまでしらない。
企業に売り込んでた特許も今のところ打ち止めだ。開発は親の名義にしてたから一応自分のものになるはずだけど怪しいところだ。
―――第二の人生、好きな事ややりたかったことに挑戦したい人生だがそれでも過去のことは忘れられない。
前世の楽曲だけは守った。前世の音楽は作りも雑で音痴な自分が作ったもので自分で聞いても聞けたものではないがそれでも自分が前世を忘れないための唯一の趣味だ。
前世で常に音楽を聞いていた自分には両親や友人、彼女に嫁……いろんな思い出が、絆が楽曲に込められている。
自分の声では下手も良いところだがそれでも思い出すだけなら十分、これだけは渡せなかった。
幼い頃はこの世界は「なにかの作品」で実は自分が知らないだけでなにかの作品なのかな?なんて思ったこともある。
もしもそうなら最悪なのが地球滅亡不可避系の映画だ、ゾンビが出てきたり隕石が落下してきたりエイリアンに侵略される地獄なやつ。
次に嫌なのがバトル系少年漫画みたいなタイプ、世界の裏では日々悪の組織や世界の崩壊を招く何かと戦ってるとか言う作品。
最高に良いのが命の危機もない作品の場合だ、例えばアメリカのドラマで不倫や人間関係の多いようなものとか、とある田舎の学校の日常系アニメならほんとに良い。
知ってるものなら対処できるかも知れないし、精神安定に少しでも良いかもと少しアンテナを伸ばすことにはしているがなにも起こってる様子はない。
いざという時の事を考えてただ筋トレ何かを続けている、が、魔力とか特殊能力とか気功とかはマスターできていない。
第二の人生だけあって身体の使い方がわかってる分早熟かつ効率よく動けるし、人生を楽しむためには身体が一番大事と言うこともわかっているが少し残念だ。
―――……寝る前にチョコ食って歯磨きしないとか、ニキビは率先して潰すとかは絶対にしない。
ニキビを潰すのは医療的にもありだが肌の再生は人によって違うし、せめてクリーンに消毒してから行うべきだ。
幸い、まだ全部奪われてはいない。遠い血の繋がってるのかも不明な親戚に財産を根こそぎ奪われて施設に入れられる前にタンス貯金をしていたので興信所に頼んでほかの親族を探してもらった。
あんなクソ共じゃなかったら誰でもいい。そこで見つかったのが書類上の親族。普通に考えれば連絡も行かないような遠い親戚、だがそれでもいま引き取ろうとしてきているクソどもよりは良いと賭けることにした。
雨宮吾郎さんだ。
田舎で働いてるお医者さんらしい……時間のない自分はすぐに新幹線に乗ってその病院にすぐに駆け込んだ。
「ええっと、ここは産婦人科ですがどういったご要件でしょうか?」
「相談がありまして、吾郎先生の診察は本日ありますでしょうか?」
「でも君男の子ですよね?」
しまった、新幹線では爆睡しちゃったし、先生のいる病院としかしらべてなかった。
産婦人科医だったとは……。
「はい、その……」
「なにか言いにくいことでしょうか?」
「はい、実は僕の姉が妊娠しまして、相手はわかってるんですがヒモ気質の駄目ニートで僕や別の人が父親なんじゃないかって結婚から逃げてるんです」
自分でもアホな嘘だと思う、だが口から出てしまった。
「まぁ」
「それで姉がおかしくなったんですが少し変でいろんな薬を飲み過ぎてて怖いので妊婦が飲んでいい薬なのかを聞きたくてきました。あ、吾郎先生を希望ってのは男の先生で知ってるバーちゃんの世間話で評判がいいからお願いしたいです」
「わかりました、診察券を取ってお待ち下さい」
「ありがとうございます」
とっさについた嘘だがありそうな話を組み立てて作った。
話しながら前世の記憶では痔で産婦人科にかかってもいいとは聞いたことがあると思い出したがもう遅かった。
女性が基本の産婦人科の待合室で、スポーツバッグ片手に座る男の子。まだ幼いし誰かの付き添いと思われているかも知れないな。
キツイ視線が向けられていると思うのは被害妄想だろう。
「白木さん、どうぞー」
「はい」
「えっと、君は?お姉さんの薬のことを知りたいんだったね、持ってきてるかな?」
資料と同じ顔、いや、資料の写真よりは老けているかな?
印象は同じで優しそうな青年。
怪訝な顔の看護師さんだが気持ちはわかる、産婦人科に中学生の男の子が一人で受診に来たら怪しいだろう。彼女を妊娠させでもしたのかと考えているのか?若干視線が厳しい気がする。
「えっと、ごめんなさい。嘘なんです」
「は?」
「実は雨宮先生にお願いがあってきました。これが通らなければ僕は悪い大人によって地獄に落ちることになります」
「どういうことかな?」
意味がわからないだろうな、それでも続けるしか無い。少し深呼吸して話を続ける。
「ナースさん、警戒するのはわかりますしなんなら警備員さんを呼んでもらっても大丈夫ですが3分だけ時間をください、僕の生命がかかってるんです」
「まずは話を聞いてみようじゃないか」
「はい」
明らかに困惑している護師さんだが雨宮先生が視線で制してくれた。僕のことをDV被害者か何かと思っているのかも知れないな。
「ありがとうございます。まずは自己紹介を、僕は東京で学生をしている白木星太郎です」
「雨宮吾朗です」
「先日両親を交通事故で亡くしてここに来ました。…じゃないな、えーと、そのクズな親戚が最低でも財産を根こそぎ奪って僕を施設に入れようと目論んでまして……これが興信所の書類で、その、ここに吾郎先生のことが書かれています……話聞いてもらえます?」
書類を渡して頭を下げる。
受け取ってもらえてパラパラとチェックしている先生。かなり薄いがそれでも書類上のつながりがあってきた。突然のことに驚いているだろう。
「君の話の内容によるかな?俺の知らないことまでこんなに……続けて」
「吾郎先生が薄い親族に当たることがわかりまして……できる限り迷惑をかけませんしお世話になった分だけ金は支払うので俺を引き取ってもらえないでしょうか?」
メガネを外して目頭を押さえた先生。
わかる、いきなりこんなことを言われたら驚くよね。後日の回答にしたりするのが大人の回答だろう。断ってくるはずだ。それでも今の自分には……
「その、時間がないんです、なのでわかってすぐに新幹線に乗ってここまで来ました。
「まって」
「お願いします!できるだけ迷惑をかけないように生きるので引き取ってもらえないでしょうか!自分の生活は自分でできますし、親の遺産を半分ぐらい渡してもいいです!身元引受してくれれば「わかった、ひとまず話を聞くことにするからとりあえず……そうだな、院で休めそうな場所探してきてもらえる?俺は外来患者見なくちゃいけないから」
「先生?良いんですか?」
「すまない、だけどここまで必死になられて突き返すのもなぁ……せめて話ぐらいは聞いてやらないと」
「わかりました」
「あ、ありがとうございますっ!」
「言っとくけどまだ君を引き取ると決めたわけじゃない。俺のところに来るよりも幸せな道もあるだろうし、俺にも時間がほしい」
反応は悪い。悪くて当然だがそれでも今の自分には上々の話し合いとなった。下手すればそのまま警察の御用になっていたと思う。
看護師さんに空いてる部屋を教えてもらってコーヒーと茶菓子をもらって時間を潰す。
暇なのかナースさんに代わる代わる話を聞いてもらった。
「引き取ろうとしてる人はどんな人?」
「遺産の問題でぶっちゃけ骨肉の争いになりそうです」
「吾郎先生とはどんな関係?」
「初対面ですが登記や両親の保険金や資産価値から調べる人よりマシかなと」
「逆に吾郎先生はどんな先生?」
「優しくていい先生よ、ちょっとアイドルが好きすぎるのが玉に瑕だけど」
受付のおばさんも見に来たので謝った。
「こうでもしないと話を聞いてもらえないと思ってドラマで見たような嘘をついてごめんなさい」
「いいのよ、貴方も大変でしょうけど頑張りなさい」
「ありがとうございます」
ナースさん達が来たのは多分あれだ、両親を亡くしてすぐの子供が酷い境遇に陥ったのだ。自殺でもしないかと様子見してるのだろう、あとどうみてもゴシップが知りたいだけだ。
頭がボーッとする。寝不足だし、丸い椅子は座るのもきつい。
「おまたせ……顔色が悪いけど大丈夫?」
大丈夫です
そう雨宮先生に言おうとしたが言葉にならなかった。
「ん?………もしかして、どこか怪我してる?」
「は、い……」
色々伝えたいことがあるはずなんだけど、言葉が喉から出てこない。
「もしかして、君具合悪い?」
「……………――はい」
「専門じゃないんだけどな、少しみせてくれるかな?」
「大丈夫、です」
痛みに耐えるなんて、人生を経験していれば何度かある。
大事な会議があれば風邪をひいていようとも来いというような精神論も体験した。自分しか知らない情報、その会議で数十億数百億円の会社の将来がかかっていて、その決議で何人もの退職者が生まれるかも知れないという場面。無理をせざるを得ない場面というものは存在した。
今は、自分の命がかかっている。
「すごい汗だし、どう見ても普通には見えないね、外科の田中先生まだいる?」
「もう帰り支度してましたよ?」
「いたら掴まえてきて」
「わかりました」
さっきまでは脳内麻薬でもでてたのか痛みもそんなに感じなかったのに。
「時間が、無いんです。カバン、カバンにレコーダーがあって」
ふらついていると抱き抱えられて横に寝かされた。
優しく寝かしてくれている触れられただけで吐きそうだ。
「もしかして、交通事故で両親亡くしたって言ってたけど、その車、君の乗ってたの?」
学ランの下、左腕と左の足、それと肋骨が数本ヒビが入っていて動きにくいだけだ。
交通事故で両親は死んだ。
その車には自分も乗っていて、まだ身体も痛い。
タンス預金で金はあるが通帳も鎮痛剤もクソ親族に持っていかれた。痛みに耐えながらボイスレコーダーを再生する、部屋に設置していたやつだ。
「あんなガキに保険金は勿体ないな」
「そうね、私達で使いましょう」
「2階の部屋空いてただろ?一度引き取って、階段から落とせば事故だ、動きにくい身体で動いて転落死」
「事故物件になるじゃない」
「良いんだよこんな物件、保険金とこいつの金さえあれば新築に住めるさ」
「そうね、今から物件探しときましょう!借金もなくなって良いこと尽くめだわぁ!そうだわ、旅行でも行きましゃうか」
「だな!いやぁ、兄貴も死んで役に立ってくれたぜ」
いつの間にか入ってきた他の先生。
「薬は?」
「ムコスなんとかとボルタなんとかって痛み止めと抗生剤とかと出されてて……なんだっけ、全部とられてて、飲んでないんで」
このレコーダーも、先生にだけ聞かせるつもりだったのに……。老年の先生の顔が歪んで、流石に出された薬を飲んでないのを言うのはためらった。
「あ、いや、その、市販の痛み止め飲んでました」
「っ!!」
すぐにレントゲンを取られて警察も来た。
流石に引き取ろうとしていた叔父は警察官とは言え児童虐待と殺人を計画していた証拠があって、両親を亡くしたばかりの子供が傷だらけで放置されていたんだ。
でもこれで、施設行きかなと思っていたら、吾郎さんに引き取ってもらえた。
まぁそんなこんなで色々あったのだが身元引受人に雨宮先生はなってくれた。
特許を除く遺産分を渡そうとしたのだが
「それは君のご両親が君に遺したものだ、気にしなくて良い」
「ありがとうございます。えっと、どう呼べばいいですか?」
「お兄さんだ!間違ってもおじさんやお父さんではない!」
「わかりました吾郎にーさん」
開発や特許で稼いでた通帳に両親の死亡保険、交通事故の相手会社からの振込先などを合わせると親戚が殺しにかかってくるのも納得だと言ったが吾郎にーさん自身にお金があったので断固としてお金を受け取ろうとはしなかった。
投稿できていたことがわかったので軽く編集しました。PCとスマホでは全然見え方が違いますね。内容ぜんぜん違うやんけ作者どうなってんじゃ(# ゚Д゚)ゴルァという方……(;´Д`)ユルシテ…ユルシテ……。