推しの子の弟は兄を推す   作:oz-ono

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転生した少年は馴染めないでいる。

 

東京でもそうだったが、やはり学校は馴染めない。

 

親が死んだからとかではなく赤子から前世の記憶がある自分にとって元の自分が本体なのか、死にかけの赤子の精神を乗っ取った自分がいるのかわからないが……精神年齢が違いすぎてうまく打ち解けられない。

 

 

田舎の学校は、初めだけは住みやすかった。

 

異物は好まれないかと偏見はあったが子供の世代はそんなことはなくむしろ全力で東京のことを聞きたがったしフレンドリーだった。

 

話を合わせるのが苦手でも言葉を減らすことでクールなキャラとして定着した気もする。

 

だが……田舎の噂を甘く見ていた。嫉妬は人が集団で生きていくうえでどこにでもつきまとってきた。

 

自分のことを知ってるのは病院関係者と吾郎にーさんだけなのだが、どこからどう漏れたのか「東京で親を亡くして叔父に殺されそうになったぐらいの宝くじが当たった」とか「むしろ叔父を殺した」とか「警察沙汰になった」など微妙に違う酷いものだった。

 

女の子、クラスのマドンナ的存在に気に入られたりもして、女の子たちと近所のおすすめスポットやカラオケを紹介してもらって、お返しにカラオケ代ぐらいだした、大人の嗜みとして。

 

 

だが、女の子の人気を独り占めする転校生なんて男どもからしてよくは思われない。

 

金目当てのど田舎の不良に絡まれたがそういうのは全員撃退、親たちから自分の噂を聞いた生徒たちは根も葉もない噂をして………イジメに発展した。

 

病み上がりとは言え腕力には自信があるし一度わからせてやりたいところだが表立って問題を起こす訳にはいかないと無視した。

 

引き取ってもらっただけ有り難いのに吾郎にーさんの迷惑になる訳にはいかない。

 

吾郎に―さんとはギクシャクしながらもやっと打ち解けてきたところだ。

 

むしろ吾郎にーさんのサポートをするべきで弁当だって作ってる。自炊というとなおのこと女の子にもてはやされて男子との溝が隔絶した気もする。

 

体育も歩けばするが無理して骨が変に曲がったりするのもよくないし休んでいるが体調不良で休む女子も居るから話してるところを見られて男子には更に嫌われてる気がする。中学生って言うと男女で気にする年頃だったかな?相手が女性だろうと男性だろうと同じ人間なんだから両方気にしないでいいのに不思議である。

 

最低限は男子と仲良くしようともしたが、クラス全体のいじめはなかなかに強固で……打ち解けられないでいる。

 

典型的な画鋲、椅子をずらす、靴を隠す、教科書を隠すなどされた。

 

クラスのマドンナ的存在に庇われて、むしろ逆にいじめは加速した

 

 

「星太郎はなんでやり返さないの?」

 

「そのうち飽きるだろうし、大丈夫だよ」

 

「でもさ、なんでやり返さないのよ!君、背もあって力もあるのに、なんでっ!?」

 

 

女子には不思議だろう、なんでいじめられるのか、なんでやり返さないのか。

 

 

「僕は血も繋がってるか怪しい遠い親戚に引き取られるか、親がいなくて施設に入るしかなかったからね……引き取ってもらえただけ有り難いのに問題を起こせないよ」

 

「っ……!」

 

 

学校が終わってすぐに帰って勉強し、発明に勤しむ。特許関係は調べるの面倒くさいなぁ……。資料室や部下がいた頃が懐かしいよ。

 

学校の勉強なんて懐かしすぎて忘れていて新鮮だ。社会に出て使うのなんて国語数学英語ぐらいで理科や社会なんて……いや、社会は結構使うな、地理や歴史の偉人で盛り上がったりもしたしな、うん。

 

まぁ、義務教育の間ぐらいは静かにしておこう。暴力も金目当てのチンピラに路地で襲われた程度で表にはでていない。

 

このまま行けば大丈夫だろうと思っていたら帰り道に苛めっ子に絡まれた。

 

野球部のエース佐野亮二、体格も良くて、性格も自分以外には明るい、クラスの中心的人物。

 

嫌な顔をしたと思ったが通り過ぎようとしたら―――ガムを吐きつけられた。

 

何かを吐きつけられたことはわかったが白かったので驚いた。歯かと思った。軽く唾液にまみれたそれを反射的に叩いてしまって服の繊維にガムがぬちゃりと入った。

 

 

―――これとるの面倒だなぁ……。

 

 

 

「僕、君になんかしたかな?」

 

「親殺しが目障りなんだよ!さっさと施設にでも引き取られちまえよ!!」

 

 

殺しても無いしむしろ愛していた。天才と持て囃して受け入れてくれた両親は大切な存在だった。

 

 

「やめなよ!」

 

 

後ろから、クラスのマドンナ、美玲ちゃんがでてきた。

 

隣の席で、怪我してる自分を気にかけてくれる真面目ないい子だ。

 

 

「何だよ、男の話に首突っ込んでくんじゃねーよ!、引っ込んでろよ」

 

「いーや、言わせてもらうね!あんたら卑怯なんだよ!!」

 

「はぁっ!?」

 

「両親亡くしたばっかで傷ついた相手にさ!引き取ってもらった相手に迷惑かけたくないからって反撃しないのに、だからって好き放題いじめてかっこ悪すぎる!!さいてーだよ!!!!」

 

 

それは駄目だ、この子は君のことが好きって見て取れた、だから虐めてきてたのにそこまで言っちゃうと……。

 

 

「こんな親殺しで警察沙汰になった奴!お前が助ける価値なんてねーだろ!目覚ませよ!!」

 

 

ガスッ!!

 

 

グーパンだ、美玲ちゃんが亮二くんの頬にグーパンした。

 

一瞬呆けたいじめっ子だったが美玲ちゃんを突き飛ばした、そっちはまずい!!

 

美玲ちゃんをかばって用水路に落ちてしまった……。背中から結構な高さで呼吸ができない。

 

 

こういうときぐらい、水かさがあればよかったのに……。

 

 

痛みに堪えて目を閉じていると二人がガチンコで殴り合いし通学路だけあって他の生徒たちに助けられて、救急車が呼ばれた。

 

病院の行き先には…………。

 

 

あー、これは問題になるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、無理してるんじゃありません?」

 

「うん、俺も結構心配してる。見てよこの弁当、中学生クオリティじゃないぜ」

 

 

作ってもらうようになった弁当を食べる。ちょっとした最近の楽しみである。結構凝った作りで栄養バランスも考えてくれているのが見て取れる。

 

 

「あらほんと……まだ身体もきついでしょうに………お手伝いさんとか探さないんですか?」

 

「うーん、それも提案したんだけどねぇ。あの子はなにかで役に立って居場所を作ろうとしてるんだと思うんだ」

 

「わかってて、放ってるんですか?!」

 

「うん、彼には彼なりの不安があるだろうし、僕の役に立って、捨てられないかと心配してるんだと思うよ」

 

「………」

 

 

看護師さんたちの表情が一気にクソ野郎を見る目になった?!待って待って待って!

 

 

「まってまって!僕が利用してるクソ野郎みたいな目で見るのはやめて!…………勿論僕も覚悟を決めて全面的に受け止めてあげてるんだよ?だけどさ、あの子の役に立ちたいんです!って気持ちを受け取らなかったら不安になるかもしれないだろ?僕の仕事もあってなかなか一緒にいてあげられないけど料理なら何を作るか、どこで食材を買うかとか、調べたりもできるし……その時間はきっとあの子の体と心を癒やす時間になるんじゃないか?してあげるだけじゃなくて相手のことを考えて見守るのも愛だと思うぜ?」

 

「ふーん、先生はそんなこと言いながらこの出汁巻きを食べてるんですか?……本当に美味しいですね、あの子うちにくれません?」

 

「駄目です!」

 

 

多めに作っていた、だし巻き、最後のだから楽しみにしてたのに……。

 

 

あの子が救急車で運ばれてきて、同級生らしきもう二人、男女で顔を腫らせてやって来た。

 

心配で仕事にならないし一度緊急として外来を止めて、身元引受人としてすぐに行くとあの子は寝ていた。

 

 

「田中先生、なにがあったんですか?」

 

「あぁ、坊主は大丈夫、MRIにもかけたが異常はない」

 

「えっと、あの子の同級生かな、なにがあったか聞いても?」

 

 

寝ている星太郎に聞くわけにも行かないし、顔を腫らした二人に聞いてみる。事故……じゃないよな、この傷だと。

 

 

「………」

 

 

警戒されたかな?中学生の女の子ってわからない。

 

 

「その、あの子の身元引受人で、ここで働いてる雨宮吾郎です。医師としてではなく、あの子の後見人として聞きたいんだ」

 

「こいつが、コイツラが虐めてたんです」

 

「チッ」

 

 

最悪の状況を知った。

 

若かっただけあって骨は折れなかったが一度怪我をした足の骨がまた少し曲がって傷んでいて後遺症が怖いな。

 

田舎の闇、拡散する噂、根も葉も生えて独り歩きする悪評、あの子にとってはお礼程度の金でも不良はそれを欲しがるし喧嘩もしていた。

 

「学校でも財布から金を盗まれたことがあるとか、でも、身元引受人の人に迷惑はかけられないからって虐められても全部なぁなぁで済ませていて……さっきなんてガム吐きつけられてて、私、本気で怒ったんです」

 

 

時間で星太郎が癒えるのを待っていたが、環境がそうさせてはいなかった。

 

いままでぎこちないけど共同生活でそういうサインはなかったか?思い当たらない。自分の仕事は不規則だし、学校の話はしていない。むしろ俺がアイドルの話を振っていた。星太郎は音楽が好きだったから。

 

 

 

「私を助けて、代わりに用水路に落ちて……」

 

「………」

 

 

かける言葉も出なかった。

 

新たな骨のヒビの部分、二度も大きな衝撃を受けたのであれば後々どんな障害が起きるかわからない。

 

入院させて、なにも言わずに、言えずにいた。

 

僕がなにか言って萎縮させるのは……

 

 

「難しいなぁ」

 

「何がです」

 

「子育て」

 

「誰だって難しいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吾郎にーさんはあまり追求してこなかった。

 

ただ大丈夫と言うとじっとこちらを見てくるだけで……迷惑かけたからなぁ。

 

数日で退院させてもらって学校に戻るとなにがあったのか、いじめっ子達は全員坊主になって何人か顔面を腫らしていた。

 

 

「これでもう大丈夫だからね?」

 

 

学校の上層部側は僕の味方は多い。発明によって天才であると言われているし、たまにだれでも知ってる会社の人が黒塗りの高級車で校門まで迎えに来る………目立たないわけがないのだ。

 

そのまま卒業するだけで学校的には大きなプラスとなるだろう。

 

 

異物ではあるがそれでも悪くない人間をいじめていて問題になった。いじめっ子たちには謝られたがかなり不気味である。まぁ謝罪は皆受け入れたが……。

 

その日の夕方、いじめっ子たちは親同伴でボロクソになった状態で頭を下げに来た。

 

入院していた数日、何があったか聞くと

 

美玲ちゃんはボコボコに腫れた顔をそのままに登校し、なにがあったかを話したそうな。

 

この話を聞いた学校中の親も瞬く間にその話を聞き、いじめっ子たちの親にもその話が届いた。

 

田舎で医者の子供に、しかも抵抗できない子を痛めつけて、それを庇った女の子の顔を殴ったとあって、吾郎にーさんのこれまでの信頼も乗算されていじめっ子達は親から鉄拳制裁を食らったようだ。

 

何ならこれから謝罪のために舎弟として頑張ってくれるそうだ。

 

 

………うーん、なにこれ?田舎の情報ネットワーク怖すぎぃ

 

 

それと、放課後、企業からの迎えがない日なんかに吾郎にーさんが校門にいることが増えた。

 

 

「吾郎に―さん!?何その車!」

 

「買った、乗れ乗れ」

 

「わかった」

 

 

乗り込むと野球の道具があった。

 

旧いミットと新品のミット、古いバットまである。

 

 

「キャッチボールしよう」

 

 

治った体で河原に来て、白衣を脱いだシャツのままキャッチボールをすることになった。

 

 

「いくよー」

 

「………はーい」

 

学校はどう?とかこっちの暮らしについて聞かれ、何でも困ったことがあったら相談してほしい……困ったことがあれば何だって言ってほしい………なんて言われ不思議なぐらい一気に打ち解けた。

 

一緒にアイドルの活動を見てくれたり、深夜に牛丼食べにいったり、カラオケでB小町の曲歌ったりと仲の良い兄弟のように打ち解けられたと思う。

 

 

「星太郎……いや、せーたでいいか?」

 

「うん」

 

 

病院への差し入れや吾郎にーさんが帰って寝る部屋に高級スイーツやお高いビール、自作のおつまみなんかを作っておいて少しでも恩を返してい。る。気にしないでもいいという吾郎にーさんだが金は貯まる一方だし、自分がそうしたいのだ。

 

そんなこんなで普通だと高校生になりそうだった自分だがもう稼ぐ必要はないのだが吾郎先生を見てマッサージや骨接に興味がでたのでそういった専門学校に行くことにした。

 

妊婦さんは体を痛めることも多く、マッサージが必要なんて本で見て、こういうマッサージをしながら開発で稼げば良いんじゃね?と思ったからだ。

 

半ば病院で可愛がられてる子として成立しつつナースさんや他のお医者さん、吾郎にーさんのマッサージをして暮らしていた。

 

資格は取れたが本格的に働いてはいなくて、開発が少しいそがしかった。

 

 

まだ未成年だがこれで吾郎にーさんに恩返しができるな……。深夜でもやってるラーメン屋にでも今度行こうと調べていると吾郎に―さんに呼ばれた。

 

 

「ちょっと訳アリの患者なんだけど他言無用でお願いできるか?」

 

「うん、分かった」

 

 

吾郎にーさんの好きなアイドルが―――――……よりにもよって吾郎にーさんの産婦人科に来ていた。

 




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