「ところでにーさん、瑠美衣ちゃんも転生してたりする?」
「アクアって呼べ、誰かに見つかったら変に思われるだろう」
「わかった」
一応母親には理解してもらって仕事中に兄(幼児)を預かっている。
瑠美衣ちゃんはミヤコさんが見ている。
調べてみたらこの兄貴、ベビーカーでヲタ芸披露していた。テレビでは見たことがあったがまさか兄さんだったとは……。となると同じ年の瑠美衣ちゃんも転生者で実は中身老人の可能性もある。
「瑠美衣も転生者だな。SNSでアンチと戦ってたよ」
「へ、へー……」
SNSにガッツリ反応するということは小学生から大学生ぐらいで亡くなったのだろうか?
「ところでにー、アクア。死んだ後って死後の世界とか見れた?」
「いや?セータこそどうなんだよ?」
そもそも死んだというような感覚すらなく気がついたら赤子だったからなぁ。
「わからない、激務で寝て起きたらこっちいたしもしかしたら過労か心臓発作……かな?」
「俺も似たようなもんだよ」
「………そっか、にーさんを殺した犯人って奴だったの?」
「そうだ。このアカウントのパスワードってなんだ?」
「キーボードのQからPまで一直線で」
にーさんはパソコンに釘付けである。
通販サイトで上の階に必要そうなものをポチってる。にーさんの遺産は全てにーさんが使っていいって言っているし結構な金額がある。
通販の受け取りはここでその後プレゼントとして持っていくことになった。何だ?ライオットシールドと催涙ガス?護身用か?
「………アイを狙った人間は、芸能界にまだいる」
「壱護社長だろ?失踪中の」
「は?なんでそう思ったんだ?」
自分の推察を兄さんに伝えた。どう考えても怪しいヤーさんである。
病院内なのにサングラス、にーさんと同じ金髪、ヤクザファッション、挙動不審、帝王切開を嫌がり、なによりあの病院のことを知っていた僅かな人間。1つ2つなら偶然だけどここまで来たらどう考えたって怪しい。
「そういう見方もあるか……だけど多分違う」
「どうして?」
「動機がない。それに嘘が上手いタイプにも見えなかったしな」
「刺された日の前の晩、色々問い詰めてたしかに自分も違うと思った。けどヒットマンが来た後に失踪。これはもう黒でしょ」
じゃないと失踪した理由がよくわからない。
「可能性は捨てきれないな……だが、俺は別の可能性も考えておくべきだと思う」
「確かに、でもそうするとホシが多くなりすぎない?」
「そうだな、それでもこれからも危険な相手が送られてくる可能性もある。―――――だから俺は芸能界に入ることにした」
なんかにーさんが闇落ちしてる気がする。いや、まぁ自分の仇は自分で取りたいのかも知れないな。
人間、恨みはそうそう忘れるものじゃない。ましてや自分が殺された原因がまだ生き残っているならなおさらだと思う。
壱護は本当に生きているのか死んでいるのかわからないが、もしも主犯ではないのならその恨みの炎は兄さんの中でくすぶっていることだろう。
――――もしかして犯人に心当たりがある?
「何故に?」
「何もしなくても危険性は変わらない。なら、何も知らないまま危険が襲いかかってくる前にどうにかすれば良い。アイや瑠美衣、お前が危険なら、調べてみるべきだ」
「わかった。僕も注意してみるけど、危険だと思ったら知らせてよね?あ、唐辛子爆弾と催涙スプレーならストックあるよ?」
にーさんには危ないことをしてほしくはないけどにーさんが選んだことなら応援する。たとえ命の危険があるってわかっていても、それでもやろうとしてるならたとえ死んだって良い。骨は拾うし仇は取るから存分にやればいいさ。
なら、芸能界に関われるようにちょっとこっちも頑張ってみるかな?
集めた部下たちはスカウトしてきた。
屈強なマッチョ共は平日の昼間からジムに入り浸っているような無職の格闘家やボディビルダーに声をかけて集めた。手取り20万、自前のジム、住み込みの部屋、そしてプロテインを用意すれば軽々と釣れた。
特許を出しまくってる自分は結構危ない身だし、退役自衛官やSP何かを雇って訓練をつけてもらっている。複雑な複合コピー機や海外の特許を調べるのには全く役には絶たないがそれでも役に立ってくれている。
彼らも彼らで持て余した肉体を世の中をちょっと便利にする発明家のボディガードをするということでとんでもなくやる気である………まぁ刺されてしまったわけだけど一番危険な「建物への深夜の火付け」の方が危なかっただろうし、徹夜明けで判断力が鈍っていたのだろうと思う。
今後は海外の元軍人や傭兵を雇って翻訳を手助けしてもらいたいがやはり日本人の中で日本人は目立ちにくいし適材適所だ。
もう何人か、――――……特に音楽関係の人間が必要だ。
何百曲も今まで作ってきたが声は自分のクソ音痴だし、PCで作ったから楽曲の一部は記憶との違いがあって出来栄えはよろしくはない。曲を作り直す。
彼らが役に立った。マッチョの一人、なんでも同級生の家にベースボーカル兼作曲家のあんちゃんがいてライブハウスや路上で歌ったりして、CDもいくつか出しているが家庭環境がよろしく無いそうだ。
病弱な妹もいて……父親が借金を作って逃亡、母親が新興宗教に騙されているのだとか。
「仲は良いの?」
「いえ、合わないっていうかいけ好かない性格なんですが音楽は良かったですし社長の求める人材かなと」
「……よし、連絡とれる?」
「はい」
とりあえずさらってきた。
借金は彼らのものではないし、妹さんは変な宗教の謎治療を受けていてまともな治療を受けていないからどうにかしたかったお兄さんはバイトを5つ掛け持ちして病院代を必死に稼いでいるのだとか。
何という地獄か。
「ちゃんとした病院にいれるし、君には仕事をしてもらいたい」
「何でもします!妹を、妹を助けてください!!」
「助かるかは病院次第だけど……少なくとも聖水で清めた白樺で叩くような変なことはしないと誓おう」
別に力を持て余したマッチョと違ってちゃんとした人を雇っても良いんだけど曲を作り直すのにそれ持って逃げられたりするのが最悪である。納得できなさそうな条件もあるし、ある意味理想的な人材である。
「ところで君は音楽に精通していると聞いたのだが音感はあるのかね?」
「絶対音感と言われたことがあります!」
「よし採用!!」
絶対音感って聞くとなんか凄いし、CD聞いてみたけど良い声してるから採用!!
仕事の内容は自分の作った音楽をブラッシュアップすること。あくまで作曲者は白木とすることだ。
本当はこの彼にも作曲者として名前を並べてほしいところではあるのだがにーさんや瑠美衣ちゃん、自分のような転生者が他にもいるのなら作曲で後々凸してくる人もいるかも知れないし、いきなり刺されたりして問題になるかも知れない。
彼らは彼らで親や宗教から身を守る場所がほしいし、僕はそのスキルがほしい。win-winの関係である。
音楽スタジオは中古物件に、倒産したスタジオの機材を買い取っていれる。古くて使えないものもあるかも知れないが、それでも音楽の機材ってくっそ高い。ノートパソコンで作ってた自分の環境からすればビビるほど高い!
「まだ搬入途中だけど必要なものあったら遠慮なく言ってね」
「さいっこうですね!!!」
今後、もっと良い機材を買っていく予定だけど、このビル買うのが高かったんだ……。結構稼いでたんだけど東京の物価くっそ高い、東京の中でも田舎だけど!ビル!高い!!!
手広く事業を拡大してはいるけどすぐに成果が出ないものもあるし、むしろ赤字でポシャるものも多い。フィンガーライムとか日本で栽培難しかったし……。
にーさんトップスター化計画には音楽は使いやすいだろうし、既に原曲があればプロの音楽家はすぐに作り治せるだろうと思ったがそんなにうまく行かなかった。
「駄目ね」
「駄目ですか?」
「作曲家としてのネームバリューがない人間がいきなり無名の子役が歌っても誰も見ないでしょう?」
「………確かに!」
ミヤコさんに相談してよかった。しまったな。子供向けの音楽ばかり一緒に編集作業をしているがまずは誰でもわかる人気な曲をヒットさせたほうが良いと。
良いものであればいいということではなかった。売れるものは売れるように売らないといけないと……。
アクアに野菜の歌とか歌わせることは難しいそうだ。
「まずはコツコツ楽曲を作ることと、知名度を上げるのが大切だと思います」
「アイドルソングもあるんですが」
「んー……相当いい曲じゃないと新人の作曲家の曲って収益が見込めないんですよね」
「まぁいい出来のが出来たらまた聞いてもらえませんか?」
「いいですけど、毎度悪いですよこんなの」
特別美味しい個室付きのお店で食べている。一食でけっこうな諭吉さんが旅立ってしまう。
「いえいえ、いつも育児も頑張ってるミヤコさんには休む時間も必要ですよ」
苺プロの社長業ににーさん達の育児、倒れてもおかしくない。
酒が入ったらB小町や業界の愚痴が出てくるミヤコさんだがやはりチャーミングだ。未亡人のような触れてはいけなさそうな美貌がある。壱護、口封じとかで死んでたら完璧なんだが……。
「聞いてますかぁ~」
「うんうん、そこの社長のセクハラが酷いんですよね?」
「そうなんですよ!!ヒック!!この前なんかすれ違いざまに……
アイドルソングは率先して何曲かできているのだが次回に持ち越そう。
――――この人と飲むのは結構楽しい。
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