神話の時代。人、精霊、神々すらも殺し、魔王と呼ばれた男がいた。
彼は終わりなき戦に飽き。自らの命と引き換えに世界を4つに分断することで、終わりなき戦を終わらせた。
暴虐の魔王と呼ばれた男は、二千年後に転生することだけを言い残し、世界から姿を消した。
しかし彼の根源は何の因果か異世界へ渡ることとなり、やがて三つ子の長男として産まれることとなった。
☆☆☆
そこは、かつて暴虐の魔王と呼ばれた彼にとって小さく、少しの力を出してしまえばすぐに壊れるような、それでいて愛に満ち溢れた素晴らしい世界だった。
しかし戦に飽き転生してきた彼にとっても、かつての世界は愛すべき対象だったのだ。
残してきた物、そして残してきた者たちも、たくさん居た。
生憎と家族のようなものは居なかったが、それでも命を賭して守ってきた魔族の民たち、右腕のシン・レグリアを筆頭とした配下たち、そして転生後、今度は友としての再会を約束した、かつての仇敵、勇者カノン。
彼らと再会する可能性は、もはや天文学的な数字であることは分かりきったことで、ならばいかに彼と言えども哀愁に浸るのはおかしくないことだ。
「――アノス?」
そしてそれを見逃しておくほど、今世における母は愚かな存在ではなかった。
両の瞳に一番星が宿る、完璧で究極のアイドル。
これほどに美しい存在は、かつての世界において長く生きた彼をしても知らず、神々すらも霞むほどの美貌に最初は驚いたものだ。
そんな彼女は、星野アイ。苺プロダクション、B小町の絶対不動のセンター。
しかし実態は三つ子の隠し子を持つシングルマザーで、アノスと呼ばれた、暴虐の魔王もその内の一人である。
「……母よ。そなたは未だ病み上がりの身。その2人にとっても、夜風が身に染みるだろう」
「うん。そう思って、アノスを部屋に連れ戻しに来たんだ。だって、君もまだ生後一ヶ月だからね」
アイは、両腕に今世における弟と妹を抱えていて、彼らに、そしてアノスにも慈愛の籠もる笑みを向けていた。
「俺を誰だと思っている?人も、精霊も、そして神々すらも殺した、暴虐の魔王だぞ。生後一ヶ月だからといって、今さら夜風が身に染みるようなたまでもあるまい」
それに今の肉体は、
その年齢ならば、早々に体調を崩すこともなかろう、というのがアノスの見解。
しかし――。
「ダメ。アノスがこっちに来るまで、私もここから動かないから」
「……ならば仕方があるまいな」
「そうそう。アノスがはやくこっちに来てくれないと、私もこの子たちも体調崩しちゃうんだから!」
いたずらな笑みを浮かべ笑う彼女の姿は、とても美しいものだとアノスは思うのだった。
暴虐の魔王スペックのアノシュ物語なのですが、唐突なスランプに陥ったので、とりあえずこんな展開もありかな?と妄想していたのを書いてみました。
前作も削除はせず、次話が文章に出来次第投稿していくので応援よろしくお願いします。