偽マフティー先生のブルーアーカイブ   作:切嗣

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作品をより良くするため追加・修正を加え、推敲しました。また、読みやすくするため分割しました。(2023年8月10日)


プロローグ
偽マフティー先生 キヴォトスに立つ(前編)


 

……我々は望む、七つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。 

 

接続パスワード承認。

 

「シッテムの箱」へようこそ、マフティー先生。

 

 

──???──

 

「……私のミスでした」

「私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況」

 

暗闇の世界。光のない世界で声だけが聞こえる。

その声は自分の犯したミスについて誠実に認めているように感じられた。

 

「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

そして、暗闇は消え、光が発生する。発光が終わり、視界があらわになる。

列車の中だろうか。ガタンゴトン、とどこかへ向かう音が聞こえる。

目の前には、少女が座席に座っていた。顔はなぜか良く見えないが、着ている服が学生服に見えることから学生なのだろう。

そして、彼女は左胸のあたりを怪我したのか出血しており、血で服が滲んでいる。そのうえ、頬にも血が付着している。

 

病院!救急車が必要だ。そう思いスマホを取り出して、救急車を呼ぼうとするが体はなぜか動かず、声も出せない。まるで金縛りにあったみたいだ。

 

少女は言葉を続ける。

 

「……今更厚かましいと思いますが、お願いします」

「マフティー先生」

 

彼女はこちらに懇願してきた。その姿が見ていられなくて、声をかけようとするが、声は出ないまま。そのことに、もどかしさを感じる。

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

「何も思い出せずとも、恐らくあなたは同じ状況、どんな状況でも同じ選択をされるでしょうから…」

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」

「あなたにだけしか出来ない選択の数々」

 

脳裏に少女達が楽しそうに談笑している情景が浮かぶ。そして、その情景は消え去り、荒廃した世界が浮かびあがる。そして、それも消えさっていく。

 

「自らの心に従って行動するという話をしたことがありましたね。

あの時の私にはわかりませんでしたが……。今なら理解できます。

大人としての、責任と義務、誇り。自分自身を信じ続けて為すべきことを為す。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心延えも」

「ですから、先生」

「私が信じられる大人──理不尽に抗い屈さずにいたあなたなら」

「この捻じれて歪んだ先の行き止まりではない…別の結果を……」

「そこへ繋がる選択肢は……きっと。いえ、必ず先生なら見つけるはずです」

「だから先生、どうか……」

 

その言葉を最後に、意識は霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

──  連邦生徒会室・ロビー  ──

 

「…さい」

「…きて…」

「先……くだ…」

 

誰かが呼んでいる。女の声?

母親か?

にしては若い女性の声に聞こえる。

それなら妹?

いや、妹の声でもなさそうだ。

どこかで聞き覚えのある声だ。

 

 

「先生、起きてください!!」

「マフティー先生!!」

 

 

鋭く響く声によって、目が覚める 。

体を起こして立ち上がり、辺りの様子を見る。

どうやら、自分は椅子に座って机に伏せて寝ていたらしい。

はて、自分の椅子や机はこんな形だったか。

そういえば、声をかけられてもいた。

寝起きではっきりとしない目を凝らし、確認する。

 

「は!?」

 

そして、驚愕した。

机や椅子が自分のではなかったことはもちろんだが、それは些事だ。驚いた理由はそうではない。

自分が驚いたわけは、目の前に眼鏡をかけた黒髪の少女──ブルーアーカイブに登場する|七神リンがいたことだからだ。

 

 

理解不能、なぜ、と頭が混乱する。

異世界転生、召喚、憑依といったワードが頭の中を駆け巡る。

自分は死んだこともなんてないし、さっきまで家にいたはずだ。

目が覚めたら、ゲームの世界?

それとも、夢を見ているのか?

だが、夢にしてはどこか現実感もあるし、ここが現実であると何故か自分は思えるのだ。感覚で分かるのだ。はっきりと。

現在の自分は大学生。そして、就職活動に取り組んでいたはず。

それがどうしてこんなことに。

 

「少々待っていて下さいと云いましたのに、お疲れだったみたいですね、中々起きない程に熟睡されるとは」

 

彼女の声によって、思考は中断される。

 

「……夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください」

「あ、ああ。すまないな、リン」

 

生返事しか返せない。幸いブルーアーカイブはプレイしていたので知識はある。おそらく、現在はゲームのプロローグの場面。そして、自分が先生の立場になったのだろう。混乱しつつも、空気をよんで対応する。

とりあえず、今はゲームの流れに従うしかない。

 

「はい、私は七神リン。学園都市キヴォトスの連邦生徒会所属の幹部です」

「あなたが、私たちがここに呼び出した先生……先生のようですが」

「ああ、その通りだ」

 

リンはこちらを見て、怪訝そうな顔を見せる。そして、「この人が本当に先生?」といった内容の独り言を呟きながら考え込む姿を見せる。

 

ゲームと違う反応を示すリン。

これはゲームが現実になった影響か。それとも現実がゲームになった影響なのか。

まあ、結局何でここにいるのはわからずじまいなのだが。

 

数十秒ほど手を顎にあててリンは考え込んでいた。やがて、納得したのであろう。

彼女は、「私についてきてください」と告げ、歩き出す。

彼女の言葉に従い、彼女の後ろをついてく。

エレベーターに乗り込み、ガラス越しにキヴォトスの街並みを眺める。

 

少し落ち着いてきたところで、不安と恐怖が襲う。

ここはブルーアーカイブの世界だ。透き通る世界の青春ストーリーRPGと謳われていたゲーム。一見明るそうな雰囲気があるが、それは違う。このゲームは選択を間違えたバットエンドが山程あることが示唆されているのだ。そのエンドのほとんどがキヴォトスの滅亡に繋がる。それを防げる存在が、プレイヤーである先生なのだが。

自分がその存在になってしまった。

自分の行動次第で世界が滅ぶ。

危険なことに、必然的に巻き込まれる。

怖くないわけがない。ここは現代日本と違って、銃弾が飛び交うのだ。

 

正直、勘弁してほしい。何で俺がというのが本音だ。

しかし生き残るためには、先生をやり遂げるしかないのだ。

やってやる!と決意する。

 

ふと、頭に違和感を覚える。先程まで混乱していたので、今気づいた。

頭に手を当てると、自分が被り物をしていることがわかった。

ガラスで、自分の姿を確認する。

 

は!?

 

そこには、かぼちゃのマスクを被った自分が映し出されていた。

自分は偽マフティーになっていた。

 

「キヴォトスへようこそ、先生」

 

リンは歓迎の言葉を告げると、先生が呼ばれた経緯について簡単な説明をする。

歓迎の言葉に礼を返し、その説明に対して相槌をうち反応する。

 

この際、自分が先生になったことはおいておく。

かぼちゃマスクにはマフティーのエンブレムが装飾されている。

何故偽マフティーなのか。

え、何クロスオーバー?

ガンダムとブルアカの?

いや、おかしいだろ。

先程までの状況を受け入れようとした頭が再び混乱に陥る。

思いかえせば、起こされた時にマフティー先生と呼ばれた気がする。リンにも怪訝そうな顔で見られていた。

マスクを被る必要はないので外そうとする。しかし、手を伸ばそうとするが、その行為は止まる。

 

マスクをみだりに外してはいけない。

 

目覚めた時にここが現実であると伝えてきた感覚が訴えてくる。

手をマスクから離し、マスクを外すのを諦める。

 

もう、ストーリーは進行している。

止まらない。止まれない。

腹をくくる覚悟をしたのだ。

こうなれば、やけっぱちでも、やぶれかぶれでもいい。

どうせ、止まれないのだ。

進み続けてやる!

逃げたら1つ、進めば2つだ!!

だが、その前にやるべきことがある。

これからは先生として、大人として生徒たちにふるまわなければいけない。

さて、どうふるまったものか。

そうだ! シャア。シャア・アズナブルが良いな。

だが、シャアだけを真似るのはあれだ。フル・フロンタルみたいで嫌だな。

アムロ・レイか。そうだな、アムロでもいいな。アムロとシャアを意識してふるまうことにする。

今から私は偽マフティー先生だ。

そして、今日から始めるのが偽マフティー先生のブルーアーカイブだ。

 

 

 

──レセプションルーム──

 

 

エレベーターのベルが目的地に着いたことを知らせる。

エレベーターから降りると、リンに少女達が殺到する。

 

早瀬(はやせ)ユウカ、羽川(はねかわ)ハスミ、火宮(ひのみや)チナツ,守月(もりづき)スズミの4人だ。

 

「ちょっと待ちなさい!代行! 見つけた、待っていたわよ! 今すぐ連邦生徒会長を呼んで来て!」

 

「主席行政官。お待ちしておりました」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました.風紀委員長が現在の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

リンは彼女たちの姿を見て、面倒くさい連中が来たと嫌な顔をする。

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」

「あなた達のような暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は良くわかっています」

「現在、学園都市で起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」

 

リンは皮肉たっぷりの挨拶をぶつける。彼女の顔は笑っているはずなのに、その目は笑ってはいなかった。

 

「あなたたち連邦生徒会でしょ! 分かっているなら何とかしなさいよ! 数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!? この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」

「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に多くなりました。治安維持が難化しています」

「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も20倍以上に増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの、今すぐに会わせて!」

 

ユウカたちは自分達の現状を説明し、不満をリンにぶつける。彼女が連邦生徒会の副会長的存在であり、今ここにいる中で一番立場のある人物だからだ。

さて、どう応対したものかとリンは目を伏せた。

 

「連邦生徒会長は現在行方不明だ」

 

その時だった。彼女たちの会話に割って入ってきたのは。その声は成人男性のものだった。

キヴォトスでは珍しい人間の大人から発された内容は彼女たちにとって衝撃的だった。彼女たちはその声の主に問いかけようと、声の出どころに視線を向ける。

 

「それはどういう……こと…なんです…か?」

 

そして、ユウカたちは戸惑う。

その人物がかぼちゃマスクを被っていたということに。

困惑する彼女たちを余所にリンが説明する。

 

「こちらの方が、連邦生徒会長が特別に指名された人──先生です。彼の身元は確かです。連邦生徒会が保証します」

 

気持ちはわからなくもないですが、と聞こえるか聞こえないくらいの声でリンは呟く。

彼女たちはかぼちゃを横目で見るが、連邦生徒会長の行方不明という件がより重大だと判断したのだろう。ユウカがリンに結論を尋ねた。

 

「はい、先生の言う通りです。結論から言うと、サンクトゥムタワーの最終管理者である生徒会長がいなくなった為、連邦生徒会の行政制御権が失われました」

「そして、この先生こそが事態を収束させるフィクサーになってくれるはずです」

 

「⁉」

「!」

「こ、この方が本当に?」

「先生?がですか?」

 

ユウカ、チナツ、ハスミ、スズミはかぼちゃを見て、懐疑的となっている。

この人が?という顔を隠せないでいる。

当然の反応といってもいいだろう。

いかにも怪しい仮面を被った人物が先生ですと言われても、はいそうですか、とはならないだろう。

 

「すまないな。こんななりだが先生だ。私はマフティー・ナビーユ・エリーンだ。よろしく頼む」

 

ユウカたちは戸惑いながらも挨拶とともに軽く自己紹介をした。

その様子を見たリンは説明を再開した。

リンの話の内容は先生が元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活──連邦捜査部、シャーレの担当顧問として、キヴォトスに来たこと、シャーレという組織が超法規的機関で、強大な権限を持っていること、シャーレの部室に先生を連れていく必要があるということだった。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリを手配して欲しいんだけど」

 

説明が終わると、リンは手元の端末を操作して後輩のモモカに連絡を入れる。

ホログラムが出現し、通話が始まる。会話が進んでいくたびにどんどんリンの顔つきが険しいものへと変わっていく。聞こえる内容から察するに、シャーレの部室が不良集団に占拠されそうになっているとのことだった。最終的にモモカはピザのデリバリーが来たということで通話を切った。通話が終了したことによりホログラムが消え、少し遅れてブツッと通信が切られた音がした。

額に青筋を立ててプルプルと小刻みに震えるリン。

それを見たかぼちゃはリンに大丈夫か、と声をかける。

 

「……だ、大丈夫です、少々問題が発生しましたが、大したことでは」

「──シャーレの部室の奪還だろう。ふむ、戦力は4人か。行けるな」

「えっ⁉」

 

かぼちゃの発言に、ユウカは困惑した。

彼女はすぐに彼の言葉の意味を理解することができなかった。

 

「…っ、流石は先生ですね。迅速な判断です。皆さん、では行きましょう」

 

リンは目を一瞬丸くするが、先生の言葉を汲み取ったのだろう。すぐに彼女は行動を開始する。

ハスミ、チナツ、スズミも状況を理解し、納得したのだろう。

彼女達はリンについていく。

 

「ど、どこに行くのよ⁉ ちょ、ちょっと待ちなさいよ⁉」

 

ユウカはリン達を慌てて追いかけた。

 

「決まっているだろう。私たちはこれから戦争をしに行くのさ」

 

 

 

 

 

 





作品における1話というのは大事で、読者に続きが気になると思わせなければいけません。以前の私はそれを理解しておらず、起承転結や原作からどう乖離したのかを書けていないとご指摘を受けました。修正前はそれが出来ていなかったため、指摘された通りに推敲した次第です。

元々プロローグの戦闘シーンやアロナとの邂逅を要約していたので、いつか改稿はしたいと思っていました。アンケートでもほとんどの方が原作のメインストーリーを軸に書いてほしいと声もあったのでちょうど良かったです。
改稿したことにより分量が多くなったので、読みやすいように1話を分割しました。後日改めて投稿します。

他の投稿したやつも推敲する可能性があります。ご了承ください。
何か意見などがあれば作者の活動報告に書き込みをお願いします。誤字報告もお願いします。また、感想や評価・投票してくださいますと嬉しいです。

私も以前は読む専だったのですが、作者側になると読者の反応が気になり、マイページを一日に何回も開いてしまいます。一言でもよろしいので感想をいただけると、作者は嬉しいです。作者もモチベーション維持につながるので、どうかよろしくお願いします。

読者層知りたいので、協力お願いします

  • ガンダムもブルアカ両方知っている
  • ガンダムだけ知っている
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  • 両方知らない
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