ラブライブ! -School life recorder- 作:Clown42
では、どうぞー
4月29日水曜日
日に日に熱を帯びて、日も長くなってきたこの頃。
毎年恒例のイベントが今日から始まる。
俺はこの日が楽しみで、休みにも関わらず早起きしてしまった。時計は午前7時半近くを指している。
「ついにこの時が来た......今まで頭の中のことでしかなかったこの時が......」
「お、お兄ちゃん?」
今までとは明らかに違う様子の俺を見て戸惑い気味の雪穂。だが俺は構わず喋り続ける。
「そうだ、待ちに待った時が来たのだ。俺の今まで考えてきた、やりたかったことが無駄でなかったことの......証のために......!」
「悠理くん?」
「GW満喫の為に!アキバよ俺は帰ってきたぁ!」
二人ともポカーンとしている。当たり前である。
「そんなわけで穂乃果、雪穂。今日からGWだ」
「それはわかるけど......そんなに嬉しい?」
「もっちろん!」
地元は欲しい物が置いてなかったり、移動に時間かかったりで。GWだからといって普段と違う日々を過ごすのは少し難しい部分があった。
だが今は違う。都会の力を頼りに色んなことができるし、穂乃果達との交遊関係から色んな体験もできるだろうと思っている。
因みに帰ってきたというのは、高2の修学旅行で一度秋葉原に来ているからである。
「とりあえず今日の予定の確認。穂乃果と雪穂はこれから絵里さんと亜里沙さんと一緒に買い物だっけ?」
「そうだよ。悠理くんは?」
「今日は花陽と図書館に行く」
「さっきまでの勢いはどこいったのお兄ちゃん......」
心配するな
「じゃあ、星空先輩とも一緒にいるってこと?」
「いや、花陽だけだけど」
「「..................」」
「じゃ、行ってくるわー」
きっと顔文字にしたら(゜Д゜)←こんな顔の高坂姉妹を置いて家を出る。とりあえず待ち合わせ場所に行こう、場所は学校だ。
「お姉ちゃん......」
「うん......」
「デートだよね......?」
「デートだね......」
二人がこんな風に思ってるとは露知らず、俺は目的の場所に向かう。
通い慣れたと言うには早すぎるが、見慣れた景色を見せるいつもの通学路を俺は私服で歩いてく。
地元でもこんなことはしなかった、ましてや女の子と図書館に行くなんて考えたこともない。
「図書館着いたら何読もうかな......」
そう、ついでに言うと図書館とも縁はなかった。本は好きだがあまり読むことはなかったし、読んでも古本屋の立ち読みで済ますことの方が多かった。
そういや、初めて花陽を見たときはあまり図書館に行くような子には見えなかったが以外なところは誰にでもあるものだろう。
そうこう考えているとあっという間に待ち合わせ場所に到着。ふと時計を見たら、約束の時間より20分も早かった。丁度いい、花陽が来るまで何読むか考えておこう。
「お待たせしました......!」
「おはよう、花陽」
「おはようございます、悠理先輩......あの......待ちました?」
「いや、さっきついたところだよ。行こうか」
「は、はい!」
約束の時間より少し早めに花陽も来た。いつもと違い、今日はメガネを掛けている。
「......悠理先輩?どうかしましたか?」
「ん?ああ、いや、メガネ掛けてるなぁーって思って」
「地味......ですか?」
「ううん、似合ってるよ」
裸眼と思ってたが、普段はコンタクトみたいだ。まぁ正直コンタクトはつけるの面倒だしな。俺も普段はコンタクトで、外に出ないときとかはメガネをしているがこっちに転入してきてからは一度も掛けてない。見えずらいが、家にいるときは裸眼である。
「あ、ありがとうございます......」
そう言って顔を下に向ける花陽。おそらく顔は赤くなっていることだろう、この前の誕生日会の時の真姫や海未も同じような反応をしていたし。
学校を出発した後、俺と花陽は秋葉原の昌平まちかど図書館に向かった。余談だが、秋葉原に図書館があるのは少し意外だった。やっぱり秋葉原といえば、電気街やオタク文化の聖地的なものだと思っていたので、こういった施設があることが珍しく思えたのだ。
「じゃあ、本選んでからまたこの席に戻ってこようか」
「はい、ではまた」
とは言ったものの、何読もうかね。
あらかじめ考えてたやつもあるかどうかはわからないし、正直持ってきてもドン引きされるのわかりきってるしな。
「......こんなもんか」
「多くなってしまいましたね......」
「ほぼ花陽のだけどな」
多いといっても五、六冊程度でその内俺のはたった二冊である。元々積極的に読書はしないし、読みたい本もジャンル的に絶対数は少ない。数が少なくなるのは必然と言えるだろう。
「先輩、何読んでるんですか?」
「ドストエフスキーの『罪と罰』花陽は?」
「え、わ、わたしは......その......」
花陽の持ってる本に書かれている題字は『かんたん手料理!お米編』なるほど、花陽らしい。
手料理と見て思ったが、皆は料理とかするんだろうか?穂乃果がしてるところはあんまり見たことないし、誰かが何か作ってくれたという話も、ことりがお菓子を作ってきたくらいしか聞かない。
「誰かに作ってあげるのか?」
「いえ、作れたらいいなぁーってだけで......」
「へぇー普段から料理ってする?」
「お弁当は自分で作ってます」
「おおう、すげぇ」
それほどでも、といった感じで花陽は微笑む。
俺は料理はできるけどしないって人間で、高校生活で弁当なんて数えるくらいしか持ったことはない。ほとんど購買だ。
「もう一冊は何なんですか?」
「『偉人名言集』面白いぞ?」
「............うわぁ、知らない人ばっかり......」
「有名な人も多いがそうでない人もいるからな」
「悠理先輩の好きな名言ってこの本にありますか?」
話題は移って俺の本に。
好きな名言と言われても、名言となっているものは大体好きになれるんだが、特別これが好きと言うのはあんまりない。強いてあげるなら......
「んー......『二つの良心は決して同じものではない』かな?バーナード・ショウの名言だよ」
「お互いの想いは同じとは限らないってことですか?」
「調べた訳じゃないからなんとも言えないけど、おそらくそうだと思うよ」
へぇーといった顔をする花陽。まぁ、こんなおおよそ話題に上がらなさそうなことばかり俺は覚えている。
俺自身はもちろん楽しいが、大抵の人はちんぷんかんぷんで、おそらく穂乃果達に話してもわかりはしないだろう。真姫はもしかしたらもしかするかもしれないが、望み薄である。
「............ん、昼か......花陽、昼御飯どうする?まだ読んでるか?」
「いえ、お昼食べに行きましょう。見たい本は見れたので」
「りょーかい。んじゃ、行こうか」
図書館を後にする俺達。
どことなく花陽の目が輝いてるように見えるのは気のせいだろうか、もしかして行きたい店とかあったりするのかね。
「そういや、飯食うにしても少し動かなきゃ行けないのか......」
「そうですね......」
無いことはないのだが、メイド喫茶ぐらいしか目に入ってこない。まぁ、秋葉原なのだからそりゃそうなのだが。
「あの......それなら学校の辺りまで戻ってみますか?ここよりはお店あると思うので」
「そうだな、そうするか」
花陽の提案で、学校周辺まで戻ることにした。
秋葉原よりは確かに何かありそうだ、決して賑やかではないが、昼御飯に困るほどなにもない訳じゃない。
「で、結局ファミレスになるわけだ」
「他のところは混んでましたからね、やっぱりGWだからでしょうか?」
「そうだろうな、ここはそんなに混んでなさそうだけど」
流石GWだ、どこにいっても人がいる。
初日でこれなら後半はもっとすごいことになってるだろう、人の多い首都圏なら尚更だ。
「にしても食べるなぁ......花陽」
「ごはん大好きなので!」
花陽の前には漫画飯見たいに山盛りのごはんが。
どっかのテニスプレイヤーがお米食べろと言ってるのを聞いたことがあるが、こんなに食べる女子がいるとは夢にも思うまい。俺には到底食べられそうにない量である。米だけならまだわからないが、おかず無しの米だけで食べたいとは思わない。
「それだけ食ってそのスタイルなんだもんなぁ......」
「私そんなにスタイルよくないですよ?むしろもうちょっと今より細くなりたいです......」
「その量を食っておいてよく言うよ......」
特に興味も無いので、詳しくは聞いてないし知らないのだが、本人曰く花陽はぽっちゃりしている方らしい。俺的には全くそうは見えないのだが......
............しかし、お米を食べてる花陽は幸せそうだなぁ......
「......なぁ、聞いてもいいか?」
「?はい、なんでしょう?」
「花陽って、何でスクールアイドルになったんだ?」
正直、聞くべきことではないと思う。知ったところで共学化の件には全く影響はないし、あまり彼女達に深入りしないようにと自分で決めている。
だが、それでも知りたいと思う自分がいる。つくづく思うのは、それが自分の首を絞めることになるとわかってやっているということだ。自分のことながら呆れずにはいられない。
「アイドルが好きで、あんな風に歌って踊ってみたい......って思ったのと、凛ちゃんと真姫ちゃんが背中を押してくれたから......ですね」
「そっか......あの時なりたかった自分になれてるって思う?」
「わかりません。でも、近づいていけてるかなって思ってます」
「近づいて......か......ありがとう。ごめんな、急にこんな話して」
「いえ、気にしないでください」
それからしばらく俺と花陽はお互いのことを色々話した。今の俺の状況や来年までにやってみたいこと。他の皆のことも少しだけ聞くことができた。
音ノ木坂に転入し始めの頃はこんなに他者との交流があるとは思っていなかった。もっと少なく、そして事務的な交流ばかりだと思っていたのが、今ではおかしく思えてくる。
また、自分が案外普通に女子と会話できるのが少し驚きだった。大分前に、去年までの自分はあまり女子と接する機会がなかった的なことを言ったかも知れないが、それだけでなく、話しかけることはもちろん話しかけられてもうまく会話できた記憶なんてほとんど無い。
そういう意味では『なりたい自分』とは少し違うが、小さな願いが一つ叶ったと言ってもいいだろう。大袈裟かもしれないが。
「そういや、初めて会ったときかなり息荒れてたけど何かあったのか?」
「あ......そ、それはですね......」
ふと思い出したので聞いてみた。
どうやら俺と部室で会う前に入部届などを受け取りに職員室にいたようで、そこで穂乃果と会い、俺のことを穂乃果から聞いてそのまま穂乃果に引っ張られて部室まで来たということらしい。らしいのだが、穂乃果が俺のことを言った後に......
(男子だよ!?男の子だよ!?しかも私と同い年の!花陽ちゃん、試しに『お兄ちゃん』とか言ってみたら?喜ぶかも知れないよ~?)
(ええ!?む、無理だよ~いきなり初対面で『お兄ちゃん』なんて......)
(大丈夫!引いたりしないから、きっと!さぁ、とりあえず部室にレッツゴー!)
(え、ま、待って穂乃果ちゃん......!ちょっと......!だ、誰か助けてー!)
と、いうことになり、部室にて俺とご対面となったわけらしい。まったく......穂乃果もなに言ってんだか......
「初対面で『お兄ちゃん』は言えないだろ......どう考えても......」
「ですよね......でも、頼れそうな人だなーとは思ってます」
「そりゃどうも、案外そうでもないかもしれないけどな」
実際、まだ穂乃果達に対して直接的に役に立てた事ってのは一度もない。何事も起こらないのが一番だが、これから先になにか起きたとしても、その時になってみないと役に立てるかどうかなんてわからないものだ。まぁ、頼られるの自体は悪い気はしない。
「それでは、悠理先輩。今日はありがとうございました」
「こちらこそ。また学校でな」
「はい、また学校で」
その後、俺達はファミレスを出て、バス停で別れた。
俺も特に寄り道せず家に戻り、部屋でくつろいでいる。穂乃果と雪穂はまだ帰ってきてないみたいだ。
「............そろそろ夏か......」
ふと部屋のカレンダーを見て呟く。
まだこれから5月が始まるところだが、GWが終われば夏なんて目と鼻の先である。
「それにしても、『二つの良心は決して同じものではない』か......我ながらなかなかのブーメランだな......」
俺が良かれと思っていることが、彼女達の。そして、学校の為になっているとは限らない。むしろ逆の可能性だってもちろんありえる。
俺は本当にこのままでいいのか、このまま卒業を迎えてもいいのか、それがわかるにはまだまだ時間がかかる。それに答えを出すためにはまだまだ時間が必要だ。
「少しずつ近づいて行くしかないか......」
俺は、見えない壁を見つけたと感じた。
今はそれだけでいいのだ。今はまだ越えられない、越え方もわからないのだから近づいて行くしかない。越えられるようになるその時まで。
というわけでGW突入です。
書く量を圧縮して頑張りますw