おいタルタル、追ってくるな   作:飲み会後の味噌汁

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天賦本


魔神任務第一章~蝶と爆竹~(璃月編)
変革


 

 

「どうしたんだいエレーナ。」

 

私の兄は、あの日を境に変わってしまった。

不自然な程に香る"狂者の雰囲気"が兄の周囲に漂っている。

以前には見られなかったような、余りある程の凶暴性を見せるようになった。

 

元の優しさが消えたわけではない。

彼は優しい実兄のままだ。

しかし、その事実が余計に奇妙さを引き立てた。

兄が行方不明となったあの日、きっと何かがあったのだろう。

 

「心配しないで、少し寝不足で疲れてるだけだから......。」

「......そうかい? エレーナはしっかりしてるけど、一人で抱え込む癖があるからね。何かあったら兄ちゃんに言うんだぞ?」

「うん。大丈夫。」

 

どの口が言うのか。今まさに最も大きく暗い秘密を持っているのは貴方の方だろう。

私は見たのだ、ファデュイの隊員たちを返り討ちにしながら笑う貴方の姿を。

この厳しい気候帯のスネージナヤで鍛錬を積み、女皇の目的の為に躊躇いや

罪悪感を捨て去った冷酷な戦士をも、貴方は足蹴に出来たのだ。

出来てしまったのだ。

 

ゆえに、私はこの国が恐ろしく思う。

 

兄という一人の人間を怪物のようにしてしまった深淵が恐い。

天理という存在に矛を向けんとする氷神が恐い。

いるはずのない"自分という不純物"が、いつ抹殺されるのか恐い。

 

もうこんな場所には居たくない。

出国予定を早めてしまおう。

元々、私はこの一家には居ないはずの人間......所謂イレギュラーなのだから。

 

この世界に生を受けて10年と少ししか経っていないが、むしろよく堪えた方だろう。

きっと、家族も私のことを疎ましく思っていたに違いない。幼い頃からあまり泣かずに不気味なほどに静かで、全く笑うこともなくただそこに佇んでいたような、そんな子供なのだから。

それに私は既に人を殺めている。

正当防衛だったが、それにしても殺しすぎた。

兄や妹たちを守るために仕方なかったとはいえ、男女関係なくいたぶるように殺してしまった。

 

 

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

何度も

 

 

......早くどこか遠くへ行こう。確か璃月辺りは商いが盛んで賑わっている商業都市だと耳にしたことがある。

気候も穏やかだろうし、住み心地の良い旅館もあるかもしれない。

岩神が天理に敵対しているという逸話や噂も聞かないし、きっと安心して余生を送れる筈だ。

ここよりもずっと......。

 

「そういう兄さんこそ、最近あまり眠れていないのではないですか?」

「まぁ確かにそうだけど...。」

 

だから最後に、この瞬間くらいは......。

 

「今日は私がテウセルたちの面倒を見ますから、兄さんはゆっくり休んでください。」

「ハハハッ !やっぱりエレーナには敵わないなぁ。じゃあお言葉に甘えて今日は早めに寝るとするよ。」

「はい...... おやすみなさい。」

 

この瞬間だけは兄妹らしくあろうと思う。




こんにちは
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