おいタルタル、追ってくるな   作:飲み会後の味噌汁

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めちゃくちゃ短いですわよ


閑話「人のいない場所」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Баю-баюшки-баю

お眠りなさい

 

Баю-баюшки-баю,

お眠りなさい

 

 

ベッドの端で眠ってはダメよ

 

 

さもないと小さい灰色の狼がやってきて

 

 

あなたの小さな脇腹を掴んでいってしまう。

 

 

狼はあなたを咥えていって

 

 

あなたを森の中に引きずり込んで

 

 

あなたを森の中に引きずり込んで

 

 

柳の根元に埋めてしまう。

 

 

狼よ私たちのところに来ないでおくれ

 

 

彼女を、起こさないでおくれ

 

 

 

 

 

 

 

そうだ

 

 

 

 

 

 

 

コリコリとした食感を、今でも鮮明に思い出せる。

 

あの丘で貪った青色の毛布は、たんぽぽの綿毛にこそ劣るがそこそこモコモコしていてとてもよかった。

 

湖の側にいた赤色の毛布は思ったよりも熱くなくて、むしろ心地いいくらいの暖かさを孕んでいた。

 

口にジャムが広がる、甘い

 

そこはまごうことなき楽園

 

食べ放題の小枝たち

 

この子たちは不幸にも天からの恵みを一心に受けてしまった

 

道を違えた

 

道を違えた枝を、ひとつひとつ丁寧に手折る

 

変わり映えのない枝でも、それぞれ変わった色の悲鳴を漏らす

 

ざわりと樺くさい香りが辺り一面を漂い始める

 

悦楽が地獄を香水づけにしてその悪臭に蓋をする

 

海豚に真珠は無駄だが真珠は綺麗

 

犬も歩けばご飯にあたるからたくさんたべる

 

ほら

 

また

 

いた

 

 

ああ

 

はあははは

 

 

 

 

 

きっと、もう戻れないのだろう

 

どうすればこの罪は洗い流せるのだろう

 

 

 

 

 

 

 

ね、教えてよ

 

 

 

 

淵上

 

 

 

 

「まったく、自殺願望でもあるのか?見てるこっちのキモが冷えるぞ。」

 

 

ただでさえ暑苦しいんですから、少しでも涼むことが出来て気持ちいいんじゃあない?ほら、ここって水浴びも碌に出来ないじゃん。水場は腐るほどあるけれど、決まってビシャップの群れがウロウロしてるし.....あってないようなものだよ。

 

 

「お前、バカなのか?そもそもヴィシャップがいる・いないに関わらずこんな場所で安寧を求める方がどうかしてるのさ。」

 

 

バカはどっちですか。こんな廃れた辺境の地で端役としての任務に当たる人生なんて、それまでよっぽど愚かで間抜けな功績しか残せなかったんでしょうね。かわいそうに。

 

 

「お前、バカなんだな。確信した。黒霧の毒性を見抜けずに苦しんでいったヴィシャップどもの方が幾分かマシだろうな。」

 

 

........私からすれば、どちらも大差ないよ。

 

 

「だろうな、所詮は他人事だ。その方が生き方としては賢いやり方だと言えるんだろう。」

 

 

でも、長いことここに潜ってると嫌でも感傷的になっちゃうね。かつての時代に生きた人たちの凄惨な状況と、哀れな子どもたちの運命.....哀れだよ、あまりにも。

 

 

「今日はやけに喋るな、()()。新しい印でも見つけたのか?」

 

 

あれ、見つけたところでかざす場所が見つからないんじゃただのガラクタでしょう?わざわざゴミを拾うほど偽善意識に塗れてない。あと、その呼び方やめて。

 

 

「.....さっきまで子どもが哀れだとか、人の悲惨な運命だとかほざいてた人間と同一人物とは思えんな。感心すら覚える。」

 

 

気持ちが悪い、吐き気がする。

 

 

「ひでぇ」

 

 

ここで吐く

 

 

「やめろ、手頃な水場なら他にある。さっき自分で言ってたろ、ヴィシャップが彷徨く水場が腐るほどあるって。」

 

 

今ここで吐けば焼いて悪臭ごと吐瀉物を処理してくれる便所があるらしい。名前を『深淵の詠唱者』って言うらしい。

 

 

「お前ごと焼くがいいか、いいな?」

 

 

よし、吐く

 

 

「やめろ」

 

 

今更だけど、よく私をそばに置けるね。仮にも()()()()()()()()()()()

 

 

「情緒めちゃくちゃだな。それに俺を見縊るなよ。俺ほどのタマになると、もはや実力差のある怪物を前にすると"如何にして勝つか"ではなく"如何にして媚を売り、生き残るか"を考えるのさ。」

 

 

そう

 

 

「それに、俺は端役だ。」

 

 

でも、人並みの人情くらいは持ち合わせては....いないだろうけど、その価値観を理解することは出来るでしょう?

 

 

「理解と同調は別だぜ。それに、『手を組むのに人種や生い立ちを問わない』ってことは、同時に『同郷や同族でも場合によっては切り捨てる』ってことだ。」

 

 

.....一理ある。

 

 

「確かにお前は恐ろしいが、自分の身を危険に晒してまで同胞の仇を取るなんてことはしねぇさ。するにしてももっと綿密にする。」

 

 

なら、一回くらい抱き枕になってよ。貴方細長いから割と抱き心地良さそう。

 

 

「化け物に締め上げられながら寝れるわけないだろ、死ぬぞ。俺が。」

 

 

一石二鳥

 

 

「なぁ、このヴィシャップの端肉で手を打とう。出ていってくれ頼むから。」

 

 

わかった、しばらくいるよ。

 

 

「いるな、怖いから。....それにしても、まだいるのか。もう随分とここで探し物をしているようだが....。」

 

 

今は、地上には戻れないから。

人間っていうのは思っていたよりもずっと聡くて思考力に富んでるから、私の行いの一片が露見した時点で面倒なことになるのは目に見えている。

 

 

「.....なんだ。もう事が起こったかのような言い方だな。」

 

 

まぁ、今朝のスチームバード新聞で取り上げられていたからね。

 

 

「じゃあ今すぐ帰るといいぞ。獄中で過ごす余生っていうのも悪くないだろう?」

 

 

......ここの方が、まだ落ち着く。

 

 

「左様か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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以下、とある日のスチームバード新聞の記事を一部抜粋したものとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『謎!?テイワット各地で発生する奇妙な静けさ!』

 

ここ数週間、テイワット全土にてヒルチャールをはじめとする魔物の目撃数が激減している。

 

これまで各地で目撃されていたヒルチャールなどの魔物がはたとその姿を現さなくなった。

 

フォンテーヌでも同様の現象が確認されており、原因は未だ不明とされている。専門家らによる分析チームによる解析にもある程度時間が必要とされ、問題の特定に関して課題が残るとして執律庭は警察隊の動員を増やして原因の解明に注力する意向を示した。

 

また、上記現象について専門家は....

 

 

 

 

 

 

 

 

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