「何が本物の天才だよ……常識をぶち壊す化け物コンビじゃねぇか……」
俺、舐岡了は絶望していた。
俺は全国常連の青森駄々田高校のエースストライカーだし、5歳からサッカーを続けて来て毎日キツイ練習を辞めたことは無い。
全国でも自分と並ぶフィジカルの人間とは数える程しか会った事は無いし、チームメイトも当然全国レベルのメンバーだ。
「なんなんだよ……なんなんだよあいつら……。」
さっきの試合のあの二人があの二人が俺の頭から離れない。俺達を完膚なきまでに潰した二人。サッカー初心者の化け物御影 玲王と凪 誠士郎の二人が。
「俺は……アイツらにどうやって勝てば……」
なんだかアイツらを認めたら俺の今までのサッカー人生が崩壊する気がしてしまう。敗北を認めるとはこれ程までに怖い事なのだろうか。
「クソッ……。」
ブーッ!ブーッ!ブーッ!ブーッ!
なんだ?なんかうるさい音が近付いてくるような……。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が振り向くと恐ろしい速さでトラックが近付いて来ている。流石に俺は死んだだろう。
あぁ神様……願わくば……あの二人があの生き物達がなんなのかを最後に教えて欲しかったです……
そんな自分でもよく分からないお願いを神様にしながら、俺は意識を失った。
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「ん?ここは?」
俺は目が覚めると真っ白な部屋にいた。どうやらベットで寝ていたらしい。そういえば俺はトラックに跳ねられてそのまま意識を失ったんだったな。まだちょっと頭が痛い気がする。
「お、目覚めましたか舐岡さん。貴方トラックに跳ねられたんですよ。」
そうだ。俺は凪 誠士郎と御影玲王の二人にフルボッコにされたショックで散漫になっていてトラックに跳ねられたんだったな。まぁあの二人は青い監獄でもトップクラスに強いし仕方ない……いや待て、何で俺はそんな事を知っているんだ…?
なんだか俺の中で存在しない記憶が幾つもある。特におかしいのは俺じゃない人間としての人生の一生を事細かに覚えている事だ。言うならばまるで前世の記憶が戻ったみたいな感触を感じる。
「なので退院して貰っても大丈夫……舐岡さん、聞いてますか?」
院長先生がこちらを心配そうに見て言う。
「あぁ、すいません聞いてます。」
俺は、こんな礼儀正しい人間だっただろうか。なんだか事故の前後で性格も記憶も別の誰かとごちゃ混ぜになったみたいになっている気がする。まるで誰か別の人間と合わさったような……まぁそんな事あるはずも無いのだが。
「と、言う訳で舐岡さんの方が問題ないなら退院、という形を取りたいのですが。」
「ええ、それで大丈夫です。」
こんな症状を医者に相談したところで頭がおかしくなったとしか思われないだろう。バカな俺の頭ではいくら考えても無駄なのでこれ以上深く考えるのは辞める事にした。まぁ今の所得しかしてないしな。
取り敢えず俺の謎の記憶ではそう遠くない未来に強化指定選手なるものが来て、最強のストライカーを育成するデスゲームみたいな「ブルーロック」とかいう施設に送り付けられるらしいので、その時に備えて今のうちから練習をしておくべきだろう。
だが、今までのフィジカルに頼り切ったサッカーではダメだ。それは俺があの化け物二人に学んだ事でもある。とはいえ俺は凪のようなトラップも御影のような穴を通すようなパスも当然出来やしない。この短期間で身に付いて実践でも武器になる何かが必要だ。
でもその何かってなんだ……?前世の記憶は頭が痛いせいなのかまだブルーロックの事については全然思い出せない。思い出せるのはあの二人と、何故か同じチームにいる西岡の事だけだ。
俺は結局、2週間近くその「何か」を理解出来ないまま、いつものフィジカルトレーニングとシュート練習、部活の基礎メニューだけをやっていた。ドリブルやパス、ディフェンスなんかの練習もしたが全部これじゃない気がして一向に自分の中のモヤモヤは晴れなかった。
「最近色んな練習をしてるけど何かあったのか?舐岡。」
夜遅くまでシュート練習をしていた俺の後ろから声をかけてきたのは…西岡だった。そういえば西岡もこれから先ブルーロックに行く事になるんだったか。もしかしたら西岡と戦う事になるかもしれない訳だし今のうちに西岡の事をより知っておいた方がいいかもしれないな。
「西岡か。短期間で使えるフィジカル以外の武器が欲しくて色々試してるんだがどれもこれもコレじゃない感が強くてな。西岡はサッカーする時にどんな感じでやってるんだ?」
「ん?俺?どういう感じの話が聞きたいんだ?」
流石に色々端折りすぎてしまったようだ。そういえば同じチームメイトなのに俺はあんまり西岡のプレイを理解出来てない気がする。
「そうだなぁ……武器は何でその為にどんなこと考えて試合してる?とか練習どんな感じで何のためにやってるのか?とかかな。」
俺がそう聞くと西岡はとてつもなく驚いた顔をしていた。チームメイトなのに把握していなかったのがショックなのかもしれない。
「舐岡らしくないな……正直もっと脳筋って言っちゃ悪いかもしれないけど……フィジカルにモノを言わせてサッカーするタイプだと思ってたぜ。」
なるほどそういうことか。まぁたしかに元々そんな感じだったかもしれないがなんか事故にあってから性格も記憶も前とは違う状態になっていたが、どうやら思考回路も変わっているらしい。いよいよ訳が分からないが事故に遭う直前の願いを神様が叶えてくれたのかもしれないな。
「そうだなぁ……西岡は休んでいたから知らないだろうが、あの二人があまりにも化け物過ぎてな。今までのサッカースタイルじゃダメだって事を思い知らされたんだ。それで一からサッカーを作り直してるって訳だ。」
「そんな凄いのかその凪と玲王って奴ら。俺も戦ってみたかったな。今の舐岡まるで別人みたいだぞ?」
まぁ実際半分別人みたいなもんだしな。
「生まれ変わった気分だな。それで西岡の話を聞かせてくれ。」
「俺は感覚派だからあんまり参考になるアドバイスは出来ないと思うけどなぁ。でも舐岡が言ってる短期間で武器になる方法ってのにはちょっと心当たりあるぜ?」
「本当か?教えてくれよ!」
西岡のパスやドリブルは感覚でやっていたとは……。今思うと俺西岡の事本当に何も分からずにサッカーしてたんだな。
「いいぜ。舐岡さ、オフ・ザ・ボールって知ってるか?」
「確かボールを持ってない時も1対1だって言うあれだろ?」
まぁ事故に遭うまでそんな単語一切知らなかったのだが。
「そうそう。あれってさ、要は相手の目線とかボールとかゴールとか、まぁ他にも色んなのを意識しながらやってるらしいんだよ。舐岡もプレイしてる時にフィジカルでごり押すんじゃなくてそれを活かすためにオフ・ザ・ボールの考え方を入れて戦ってみればいいんじゃねぇの?」
確かに短時間で力を付けるならそう言ったサッカー理論的な所を狙うのが安牌なのかもしれないな。
「確かにそうかもしれないな。オフ・ザ・ボールか……意識してやってみるよ。」
後日、俺は自分のサッカーにオフ・ザ・ボールの話を取り入れた結果自分でも信じられない程に戦えるプレイスタイルを身につけて西岡に死ぬほど感謝する事になるのだが、それはまた別の話である。
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「あなたは強化指定選手に選ばれました」
あれから4ヶ月、ついに日本サッカー協会だったかフットボール連合だったかからの招待状が来た。どうやら俺も無事メンバーとして選ばれた様だ。
「おはよう舐岡、お前も強化指定選手に選ばれたのか?」
家の前で俺が招待状と睨めっこしていると西岡が話しかけて来た。
「お前もって事は西岡も選ばれたのか?」
「選ばれたぜ。でもこの招集の日の一週間後に大会だからなぁ……説明会の内容次第じゃ俺は辞退するかもな。そこら辺も含めて舐岡がどうするか聞きたかったんだよ。」
説明会ねぇ……この時期にデカイ全国区の大会を控えている以上何人かは西岡みたいに辞退を視野に入れているかもしれないな。
「だから珍しく俺の所に来たのか。俺は強化指定選手の方を優先するつもりだけどな。ここに行けばあの二人に会えるかもしれない。俺はアイツらにリベンジしたいんだ。」
最も、これだけ強くなってもまだコンビと俺という目線で見ると五分五分ぐらいな気はするけどな。とはいえ負けっぱなしで終わるのは癪だ。俺のエゴがそんな事許してくれそうにも無い。
「それじゃあ2人で説明会に行くか。それにしても今日渡されて明日説明会なんて随分と急だよなぁ。」
「まぁ青森って東京から死ぬほど遠いから仕方ないんじゃないか?しかもここ結構青森の中でも田舎の方だしな。」
「まぁそれもそうか。」
こうして俺達は青い監獄に足を踏み入れる事になる。その事を西岡はまだ知らない。何故か俺は知っている。
メタ的な都合で舐岡が前世のブルーロックの面々の事を思い出せるのは本人と会った時になっています。(最初から全員思い出せたら強すぎるため)
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