私にはかわいい妹が2人もいる。
居間の床に座ってちゃぶ台上の宿題と向き合っているのが義妹のウメ。大きなかわいいおめめが特徴的で、小動物のようにちびっこい。
抱きつくといい匂いがする。
居間と繋がっている台所でコーヒーを入れてるのが実妹のアキ。私より背が高くて、いつも私かウメを満足いくまで撫で回している。姉としての威厳がなくなるからやめて欲しいと頼んでも、小さい頃のお返しといってやめてくれない。少し悲しい。
ケド、満足いくまで撫でてるときの満面の笑顔はかわいいから許してしまう。
ふたりとも可愛くて私によく懐いてくれている。
それにふたりの仲もいい。仲良し三姉妹だ。
ただ最近、ウメに抱きついているとアキが割って入ってくるようになった。初めはアキもぎゅっとされたいのかと思ったが、どうも違うようなのだ。
その違和感に気づいてからは、色々早かった。
よく観察してみれば、少し前よりアキとウメの距離が近い気がするし、アキはすぐウメを抱きしめようとする。
ウメはウメでされるがままになんでも気を許しているようで、嫌そうな顔ひとつしていない。ああいや、されるがままなのは私に対してもかもしれない。
そして私は気づいてしまったのだ。
なんか仲間はずれになっていると。
別にふたりが特別仲が良くても悪いとは思わないがしかし、お姉ちゃんとしてどれほど仲がいいのか把握するべきではないだろうか。
そう思うのだ。
そうに決まっている。
だからアキとウメが居間にふたりきりな今、こっそり覗いていたとしても、なにひとつ悪い事はない。お姉ちゃんとして仕方のないことなのだ。
これはお姉ちゃんとしての義務であり特権だ。
だから扉の影から部屋を覗き込んでいる。
「コーヒーいれてるんだけど、飲む?」
「貰えるなら。……珍しいですね」
「なにがー?」
「アキちゃんが飲み物に手間をかけていることですよ」
「それ相応の理由があるからねぇ」
ウメの言う通り、アキが飲み物のために行動するのは珍しい。いつもならあの子の好みは手近にあるものといって差し支えないくらいには、選り好みしない。
だというのに、わざわざコーヒーをいれている。私たち姉妹には不自然でならない。
「はい、美味しいよ」
「自分で口をつけてもないのに、美味しいって言っちゃうんですね」
ウメがコップを傾けて、こくんと可愛らしく喉が動いたとき。
「だって媚薬入りだからね」
「ぶふっ……っ!? ……??」
…………???
ウメはコーヒーを吹き出した。
私は首を傾げて、その意味を理解するのに5秒かかった。
びや、媚薬??
「……げほ、ごほっ……な、ななな何言ってるんですかアキちゃん!」
「ん? いや、美味しいのは媚薬入りだからだって……」
「隠し味みたいな気分で入れないでください!」
ない。ないないないない。
媚薬なんてこの世に存在するはずがない。
私たち姉妹で1番テストの点がいいアキは、頭が良すぎてバカになっちゃったのかもしれない。だって、あんな真剣な顔で媚薬入りコーヒー(仮)をウメに差し出すなんて何を? どういうことなの??
「えーと、その」
ほら、ウメも顔を赤くしながらコーヒーの扱いに困ってるじゃないか。我が妹ながらなんということをしているのだ。
むしろこんなことを言われてもなお、コップを置くか否か悩んでるウメ優しすぎてかわいい。
「……これ、その」
「飲んでくれないの?」
「え?」
我が妹ながらわからない。私たちの中で1番頭がいいあの子の発想は普段から理解できないことも多いが今日は本当に理解できない。
今ならウメと声を揃えて何を言っているの? と聞ける気がする。
「ウメ、言ったよね。珍しいって」
「え、いや、まあ」
「そう、珍しく私がウメのために美味しいコーヒーを入れたんだよ。
……飲んでくれないの?」
ひえ。
鳥肌が立った。
ウメの優しさと良心を利用して媚薬を媚薬とわかりながら自ら飲ませようとしてるその……なんだろう。お姉ちゃんドン引きだよ。
「…………」
「美味しいよ?」
「……あーっ! わかりました。わかりましたから! 飲みますって!!」
「自分から媚薬飲んでくれるなんて嬉しいな」
「……あう」
お姉ちゃん、ウメの将来と貞操が心配です。
どうしよう、そろそろ割り込んで止めに入るべきかな姉妹として不健全だよね…………ん、もしかして最近アキが私とウメの間に割り込んでくるのって、私にウメを取られないようにしてたってことなの?
じっと見てくるのもしかして嫉妬の視線!?
じゃあここで邪魔したら嫌われちゃうかも……いやでもお姉ちゃんとしてあんな……あんな関係は……っ!!
「……ゆっくり飲んでるの、緊張してるから? 進んで飲んでるわけじゃないって
「ち、ちが」
「顔が赤いよ、ドキドキしてるでしょ」
あーーーっ! だめです!! いけません!!
それ以上は……というか人のこんな場面覗くの失礼なんじゃ……でもでもお姉ちゃんとして、あ、でもお姉ちゃんお姉ちゃんっていい加減しつこいとかふたりに嫌われたらどうしよう。どうすればいいの、私は、私は、私は!!
でもこれは姉妹として問題が……止めなきゃっ!!
扉に手をかけて押し放とう……そう思ったとき、事態が動いた。
アキが手を引いて、ウメをソファーに押し倒したのだ。
「ぴぁ」
「抵抗してもいいよ?」
「え、あ……えっ」
「まあここまでした努力の対価くらいもらうけどさ」
そして、いきなり。
アキはくちびるを、ウメの、くちびるにちかづけて……。
あわわわわわわわわ!!!
「ぴゃぁ──────っ!!!」
もう無理、見てられないっ!!
わたしおへやかえる!!!!
「
アキは部屋の外の、遠ざかっていく黄色い悲鳴を聞いて。
眼前の、顔を真っ赤にして意識を飛ばした義妹を見つめて。
くすと笑った。
「……ナツ姉さんに取られないうちにって思ったけど、あの調子じゃもうしばらく曖昧にしてても問題なさそうだね」
ウメにギリギリまで近づいた顔をそっと離し、そのくちびるに指を寄せた。
「初めてはお互い覚えてる方がいいしね」
続きはない