転生したグリードがスライムと相棒になった件 作:バンドリーマーV
1 転生
ゴーダ「俺は…力が欲しい…!映司の欲望に相応しい力を手に入れる…!」
ゴーダ「凄い…!凄いぞ!これが本当のオーズの力かッ!俺は…!最強の力を手に入れたぞぉおおッ!!」
映司「これが俺の、最後の戦いだ。一緒に戦ってくれるか?──頼むよ」
アンク「映司…分かった」
アンク「それが、お前の願いなら…!映司…行くぞ…!」
アンク「──変身ッ!」
ゴーダ「俺は…!最強の力を手に入れたはずなのにぃいいいいいいッ!!」
俺は、どこで間違えた…?
俺は映司の欲望から生まれた…だから映司の欲望を叶えることが、俺の欲望だったはずだ…
映司の欲望に、相応しい力を──
『俺が欲しかった力…どこまでも届く俺の腕…こうすれば、手に入ったんだ…』
…力…?
映司の欲望に、相応しい力…?
…分からない…
映司の記憶を見ただけで、どう考えてたかまで理解したわけじゃなかった…
理解できれば、分かるのか…?映司の欲望を叶える力が…
知りたい…もっと、映司を知りたい…もっと…
《──確認しました。ユニークスキル《探求者(テヲノバスモノ)》を獲得…成功しました》
──薄暗い洞窟に、3枚のコアメダルが現れる。金に彩られた、ムカデ、ハチ、アリのメダル。
周囲に漂うエネルギー…魔素を、セルメダルのように吸収したコアメダルは、光と共に実体を形成した。
「…ぅ…」
現れた青年は、目を開く。
「…ここは…どこだ…俺は…」
起き上がり、辺りを見回す。
「洞窟…?俺は…アンクと映司に負けたはず…」
ふと、近くの水溜まりに映った自分の姿に、青年は驚愕する。
「…映司…!?いや…」
自分の元となった火野映司とよく似た姿…一部が赤紫に染まる黒髪、金色の瞳。
「そもそも俺は消えたはず…どういうことだ…?」
彼の名はゴーダ。火野映司から生まれたグリードであり、メダルの力に飲まれて暴走した末、アンクと映司の前に敗れたはずの存在だ。
ゴーダ「とにかく…何が起こってやがるのか…ここがどこか…把握しないとな」
ゴーダは暗い洞窟を歩く。
ゴーダ「少なくとも、この体は映司のものじゃない…俺自身が実体化している…何故こうなった…ん?」
ぴょこぴょこという可愛い音に振り向くと、何やら動くものがあった。草やら鉱石やらを食べている。
ゴーダ「何だ…?…ん?」
プルプルとした、半透明な水色の体。
ゴーダ「…スライム?」
ゲームに出て来るスライムそのもの。
ゴーダ(映司の記憶にもある、ゲームによくいる弱小モンスター…にそっくりなよくわからん生き物…しかしなんだ?この妙な気配は…)
ゴーダ「あっ」
スライムは湖に落下した。
ゴーダ「ん?」
…と思ったら、しばらくすると浮き上がり、水をジェット噴射して湖の上を走り出した。
ゴーダ「いやシャウタかよ!?」
気になったゴーダは、湖の上に点在する岩などをぴょいぴょい飛び移り、スライムを追いかける。湖を飛び出したスライムは、壁のようなものに衝突した。
ゴーダ「…なんだありゃあ」
ゴーダとスライムの前に、巨大な光の壁がそびえ立っていた。
ゴーダ(壁の向こうに、バカデカい何かがいやがる…とんでもなく強そうなのは分かるが、ぼんやりしてよく分かんねぇな…)
『聞こえるか、小さき者達よ』
ゴーダ「ん?」
壁の向こうから、直接頭に響くような声がした。
ゴーダ「あん?お前誰だ?つか誰が小さき者だ、俺にはゴーダっつう名前がだな!」
『ふむ、名有り(ネームド)か。種族はよく分からんが、なかなかの力を持っていそうだ。しかし隣の小さき者よ!お前も返事をせんか!』
ゴーダ「ん?このぴょこぴょこしてるスライムか?」
『そうだ!おい、聞いてるのか!』
スライム『もう!うっさいハゲッ!』
ゴーダ「ん?」
スライムの方からも、頭に響く声がした。
『ほう、貴様死にたいらしいな…!』
スライム『はえっ!?すすすすいません!思ったことが伝わるとは思わず!自分目も見えず耳も聞こえない状態でして!』
さっきから念話だが、ゴーダにも聞けている。しかも…
ゴーダ(なんだ?こいつらの『怒り』だの『焦り』だのが…見た感じじゃなく、直接心を覗いたみてぇに分かる。どういうことだ…?)
その後、ゴーダとスライムは『魔力感知』という『スキル』を教わり、おかげで相手の姿がハッキリと見えるようになったわけだが…
スライム『ど、ドラゴン~ッ!?』
『我は暴風竜ヴェルドラ!この世に四体しか存在しない竜種が一柱である!クハハハハッ!』
ゴーダ(なんでもありかよ…)
相手は馬鹿でかいドラゴンだった。
ゴーダ「おいスライム、とりあえず落ち着け」
スライム『え、誰!?他に人いたの!?』
ゴーダ「おせぇよッ!」
ヴェルドラ「なんとお前達、異世界からの転生者か」
ゴーダ:こいつらとの会話で分かったのは、ここがパラレルワールド、異世界だってことだ。
俺もざっくりながら、異世界出身ということを話したが…
このスライム、どうやらこの世界とも俺がいた世界とも違う別世界に生きた元人間らしい。
オーズもグリードも存在しない平和な世界で、どこにでもいる平凡なサラリーマンだったこいつは、会社の部下を通り魔から庇った結果、自分が刺されて死んでしまい、気が付いたら異世界転生してスライムになってたんだとか。
ゴーダ「命張って他人を庇うとはな…どっかの誰がみてぇだな、ったく」
スライム「?」
ヴェルドラによれば、異世界からの転生者は非常に珍しいが、転移してきた異世界人はちょくちょく現れるらしい。
偶発的に界渡りしてしまった転移者に加えて、界渡りの際に獲得できる強力なスキルによる戦力を目当てに、魔法使い達の儀式で呼び出される『召喚者』がいるそうだ。
あくまで兵器として扱われ、召喚者に逆らえないよう、魂に呪いを刻まれるらしい。
スライム『ひどい話ですねッ!』
憤慨するスライムだが、この世界では弱肉強食が唯一不変のルールらしい。
ゴーダ:弱肉強食か…俺は好きな部類の言葉だったが、その考え方のせいで負けたようなものだからな…しかし…
ゴーダはスライムを横目で見る。
ゴーダ:映司とよく似た、お人好しの気配や正義感。
こいつと一緒にいれば、俺は映司のことをもっと理解できるかもしれない。
どうせ異世界じゃ行くあてもねぇし、しばらく行動を共にするのも悪くない。
そしてヴェルドラだが、300年前に勇者に封印されて以来、ずっとここにいるらしい。
ゴーダ「グリード連中も800年封印されたらしいが、お前もか。てか勇者とかいるんだな」
ヴェルドラ『うむ。ちょっとうっかり町を一つ灰にしちゃってな』
スライム『しちゃってなって』
ゴーダ「で、勇者がお前を退治しに来たと?」
ヴェルドラ『そうだ!』
勇者に敗れたヴェルドラは、勇者のスキル『無限牢獄』で封印されたそうだ。三人を隔てる光の壁が、その『無限牢獄』である。ちなみに勇者はかなりの美少女だったとか。
スライム/ゴーダ((こいつ、見蕩れて負けたんじゃねぇだろうな…))
二人に話しかけたのも、300年ヒマでヒマで、寂しさもあったかららしい。
スライム(俺は37年彼女がいなかっただけで、結構寂しかったぞ…それを300年一人きりって…)
スライム『だったら!俺達と友達にならないか!?』
ヴェルドラ『何!?』
ゴーダ「は!?俺達って俺もか!?」
スライム『そうだよ!ここに三人揃ったのも、何かの縁だしな!』
ゴーダ「ったく、お友達のお裾分けか!…まぁ、どうせ行くあてもないんだ。とりあえず一緒にいてやるよ」
ヴェルドラはよほど寂しかったのか、素直でないながら大層喜んで承諾した。そしてスライムとヴェルドラは、照れながらも握手する。
スライム『ほらゴーダ、お前も』
ゴーダ「……」
映司『俺が欲しかった力…どこまでも届く俺の腕…こうすれば、手に入ったんだ…』
ゴーダ「映司が欲しかった力…か…」
スライム『ん?』
ゴーダ「…チッ。まぁ、いいさ」
ゴーダはスライム、ヴェルドラと手を重ねた。それは、ゴーダが生まれて初めて『掴んだ手』だった。
その後、ヴェルドラの魔素が尽きて消滅してしまう前に『無限牢獄』を破るため、スライムのユニークスキル『捕食者』で、ヴェルドラを一時的にスライムの体内に取り込むことになった。
スライムのもう一つのスキル『大賢者』と、ヴェルドラ自身の力で、内側と外側から同時に解析するらしい。
いざ取り込もうとしていると…
ヴェルドラ『その前に、お前に名前をつけてやろう。ゴーダはともかく、スライムは名無しのままだからな。お前も我ら三人の共通の名前を考えよ。ファミリーネームみたいなものだ。同格ということを魂に刻むのだ』
ゴーダ「またもや俺もかよ…」
スライム『いいだろ?そうだな…』
ゴーダ:苗字か…そういや映司は、実家と色々あって、母親の苗字名乗ってたんだったな…。
スライム『暴風竜…暴風…嵐…テンペストとかどうだ?』
ヴェルドラ『素晴らしい響きだ!今日から我は《ヴェルドラ・テンペスト》だ!お前には『リムル』の名を授ける!
《リムル・テンペスト》と《ゴーダ・テンペスト》を名乗るがよい!』
「「…!」」
二人は、新たな名が魂に刻まれるのを感じた。
そして、ヴェルドラはリムルの体内に入り、リムルとゴーダは歩き出す。
天災級モンスター・ヴェルドラの消滅が確認され、世界に激震が走っているとも知らずに…。
《続く》
ED「Nameless Story」寺島拓篤